しんがりの影騎士のくせして異世界無双~偽者として召喚されたがどうやら俺は最強すぎのよう~
結城辰也
第一章
第1話 召喚された俺
「さすがは四賢者だ。もう……下がってもよいぞ」
急に召喚されたであろう俺はまだ落ち着きがなく立ち往生しながら見渡すばかりだった。
なにやら王座に腰を下ろし存在感を溢れ出させている王様が重たい低音で言っていた。
「は!」
本当に落ち着きがなく見渡した限りだと四賢者は俺を囲んでいた。だけど王様の命令を聴き入れ四賢者は下がっていった。
気付いた時には俺と護衛兵のみとなっていた。どうして分かったのかと言えばそれは細長い槍を持っていたからだ。
段々と落ち着いてきたがそれでもこの異世界に違和感を覚える。うーむ。とここで王様と目が合った。
「ごほん! おお! 似ておるな! もっと顔を見せるがよい」
は? 俺のどこがだれに似ているんだ? 分からないがどうやら俺は王様の知り合いと似ているらしい。
「ふむぅ。其方を急に召喚させて悪かった。実はの。其方を儂の孫――カールイスの影騎士となってほしいのだ」
え? なんだよ? それって? てっきり異世界召喚なら勇者とか。もしくは亡国の姫君を救うとかさ。ないの?
「カールイスは嫌がっておったが……それはそれだと儂は思う。儂は心配なのだ。暗殺でもされたらと思うと夜も眠れん。さて……其方の意見を聴こうかの」
俺の意見? というか。どうして俺は異世界の言語を知っているんだ? それにここに来る前に変な雷に打たれたし。
とまぁここは――
「カールイス様の影騎士ですか。……俺なんかに務まりますでしょうか」
てかそんなに似てるのか。逆にむしろ気になるな。俺と瓜二つだなんて――
「ふむぅ。なに。其方は今日からしんがり隊の長になってもらう。これは王である儂の命令だ。無視は出来まい」
断れないという訳か。ふむぅ。その為にはまず騎士の恰好になりたいな。ここは訊いてみるかな。
「どうにかしたいのは山々ですが……俺は鎧などを所持していません。これでは無理が生じます」
真顔で答えたら王様は大きな笑い声をあげはじめた。それもかなり独特な笑い方だった。まるで待ってましたと言わんばかりだ。
「フォフォ。そうだろうなぁ。ごほん! おい! この客人に例の物を装着してやれ」
うん? 例の物? なんだ? それ? 疑問に思っているといつのまにかいたメイドが鎧等を持ってきた。メイドを合計すると六人だった。
「その鎧はの。カールイスの鎧と同様の素材で出来ておる。しかも同じ型をしておる。今回は特別にそれをやろう」
実に用意がいいな。これは間違いなく計算尽くめだな。それにしてもここで着替えるのか。なんだか恥ずかしいな。
「安心せい。きちんとメイドたちは布で覆い隠す」
そうか。そもそも俺は夏の日にここに召喚された訳だから着替えなくても邪魔にはなり難い筈だ。
「では……そろそろ始めさせて頂きます」
一人のメイドが言うと四人のメイドは布を持ち俺と残りのメイドを囲んだ。中には二人のメイドがおり鎧等もあった。
どうやら持てない分の装備品は縦長の赤い絨毯の上に置いてあるようだった。とここで二人のメイドは装着し始めた。
あれ? 重たい筈の鎧等が重たくない? んん? どうなってるんだ? 分からない。で、でもなんだか強くなったような気分だ。
お? どうやら装着し終えたようだ。ああ。鏡で自分の姿を見てみたい。
「装着し終えました。では――」
一人のメイドが言うと布が開き目の前に王様が出現した。メイドたちは言われるまでもなくその場から去って行った。残された俺。
「おお! まるで瓜二つ――。これは……聖女にも感謝せねばだな」
うん? 聖女? この感じからして聖女が俺を見つけたのか。なんだか因縁が深そうだな。
「お? そう言えば……其方の名前を訊いてなかったな。其方の名はなんという?」
俺の名か。俺は
うーん。とりあえず――
「カズトと言います」
言語が通じている以上は大丈夫だよな。なんだか不安だけど仕方がない。ここで偽名を使えば後が怖そうだし。
「そうか。そうか。カズトはよさそうな名だの。さて……今日はこの辺にでもしとくかの。おい! カズトを客間まで案内しろ!」
相変わらず凄まじい威厳だな。威光があるとはこのことなのやら。それにしても――ようやくこの場から抜けれそうだ。
「は!」
護衛兵の一人が前に出ては言った。ふぅ。ただのモブだと安心する。なんだか今日はぐっすりと寝れそうだな。
こうして俺は無事に? 異世界に召喚されカールイスの影騎士をすることになった。ただ今はゆっくり休みたかったので王様の気配りに感謝しないといけない。
それにしても俺なんかに本当にしんがり隊も影騎士も務まるのだろうか。
しんがりの影騎士のくせして異世界無双~偽者として召喚されたがどうやら俺は最強すぎのよう~ 結城辰也 @kumagorou1gou
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