おかんの朝のブルース

 朝から雨降り。


 小学生がゲーム返してほしい一心で朝から100マス計算に勤しみ、よしよしいい子いい子と思ったのも束の間、あと3問だけ残して投げ出し「なんでや」と思いながら3問終わらせるのに5分かかる。

 ただの1桁の引き算なのに。


 幼稚園児がトイレから出て来ず急かしても時間がギリギリ、仕方なく歯磨きを諦め制服だけ急いで着せて、傘だけ持って外に出たら、10歩進んで突然の土砂降り。

 慌てて家に引き返しふたりで長靴に履き直して、幼稚園児にレインコートを着せ、いつもの傘じゃいやだと愚図るので仕方なく予備の折りたたみ傘を渡してやる。


「その体操服袋貸して、引きずったら大変。母さんが持ってあげるから水筒も貸しな」


 時間ない時間ない。

 大急ぎで手を繋いでもう一度行ってきます。

 やべぇやべぇと騒ぎながら横断歩道を渡り、雨で大興奮の幼稚園児とおてて繋いで徒歩通園。

 レインコート着てる手と繋いでる右手が傘からはみ出して、わたしの右腕だけ見事にびしょ濡れ。

 でもそのびしょ濡れの右腕に、誇らしさなんかも感じたりしちゃって。


 ようやく幼稚園に到着。

 先生にご挨拶してさようなら。

 やれやれ大変だった。

 途中から雨が弱くなって本当に良かった。

 とぼとぼ帰宅。

 ひとりで歩く朝の空気はいい気持ち。

 手には自分の傘と、さっき脱がせたレインコートと折りたたみ傘、あと自分の小さなハンドバッグと体操服袋と水筒。

 えっ。


 体操服袋と水筒。


 渡すの忘れてる! あいつ弁当しか持ってねぇ!!

 半分以上帰ってきてたのに慌ててUターン。

 途中ですれ違うママさんたちにことごとく笑われ、仕舞いには

「どしたん、もしかして子どもだけ忘れとる?」

なんて言われる始末。

 んなわけあるかい。笑

「いや子どもはさっき連れてったんだけどさぁ、」

 見てこれわたし、全部持ってんのよ。


 急げ急げ時間ない。

 正門が閉まっちゃう。

 慌てて教室に戻ると先生が出てきてくれて

「あああおかあさんありがとう! ほら下の子くん、よかったねぇ、おかあさんにお礼言わなきゃ」

 そうして言われた言葉が

「おかあちゃんのばーか!!」

 ですよね〜! ごめんね!

 これでようやく今度こそ一安心。

 やれやれと思いながらもう一度帰途につく。

 もうへろへろなので朝の空気なんてもう本当どうでもいい。

 タイムロスにより旦那の行ってらっしゃいに間に合わず、それでもタイミングよく横断歩道のあっちとこっちでなんとか完了。

 はーやれやれと思いつつただいまー。

 鍵を開けようと思ったらハンドバッグの中身の鍵とスマホがびしょ濡れなんてこった。

 

 さーて働かなくては。まずは洗濯洗濯。

 そしたらまさかのワイドハイターが要詰め替え。


「……。くそう!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る