応援団

増田朋美

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その日は、九州のほうで大雨が降ったようで、テレビのニュースでは、大雨の事ばかりやっていた。

もちろん、家にテレビがない杉ちゃんだけは、いつでもにこやかな顔をして、のんびりと過ごしているのであった。

その日も、杉ちゃんが水穂さんの世話をするため、いつも通り製鉄所にやってくると、応答したのはブッチャーだった。杉ちゃんが、おうブッチャー、久しぶりと挨拶すると、ブッチャーはえらく落ち込んだ様子で、大きなため息をついた。

「どうしたんだよ。何か落ち込むことでもあったか。」

杉ちゃんが聞くとブッチャーは、

「また食べなくなってしまった。」

といった。

「誰が?」

杉ちゃんがまた聞くと、

「水穂さんに決まっているじゃないか。食べてほしくて、アボカド買ってきたのに、食べる気がしないんだって。」

と、ブッチャーは答えを出した。

「そうか。まあ、単なる食わず嫌いというだけではなくて、水穂さんの場合、発作へのきっかけになっちまうからな。それで、食べたくないというんだろ。」

「しかし、杉ちゃん。このままだと、本当に何も食べなくなって、向こうの人になってしまうぞ。」

ブッチャーは、杉ちゃんの発言に、急いで訂正した。

「まあ、それはそうなんだけど、しょうがないだろ。だけど、できることなら、確かに餓死は避けたいよね。矛盾するようだけど、ブッチャーの気持ちもわかる。」

杉ちゃんがそういうと、小さな音であるが、弱弱しくせき込んでいる声がする。あ、まただなと杉ちゃんが言った。ブッチャーは、急いで、四畳半へすっ飛んでいった。やっぱり、水穂さんが、横向きに寝たまま、せき込んでいるのだった。ブッチャーは何も言わないで、水穂さんの背中をさすってやって、口元にタオルをあてがってやった。やっぱり白いタオルは、予想した通り、真っ赤に染まってしまう。

「あーあ、ダメだこりゃあ。もうしっかりせい。何にも食べないから、体力もつかなくて、そういうことになっちまうんだよ。」

ブッチャーが、水穂さんに吸い飲みで薬を飲ませていると、杉ちゃんがそういうことを言いながら、四畳半に入ってきた。薬を飲むと、やっとせき込むのは止まって、水穂さんは静かに眠りだしてしまう。

ブッチャーは、枕元にある、粉薬の山を見つめた。帝大さんが、一か月分と言って、処方した薬である。これを水で溶かして、咳が激しい時に飲むように、と言われているのであるけれど、本当にこれを飲ませるしか治療法はないのかなあとブッチャーは疑い始めてしまった。今の医療では、もうちょっと、水穂さんをよくしてあげることはできないのだろうか。

「何見てんだよ。」

と、杉ちゃんに言われて、ブッチャーは、先ほど頭の中で思っていることを言った。そして、

「本当になあ、水穂さんもいつまでも銘仙ばかり着ているから悪いんだ。もう今は一億総羽二重時代と言われているんだから、着物で生活しようにも、銘仙なんか着ないで、羽二重を着て、ごまかせないかなあ。」

といった。杉ちゃんは、カラカラと笑って、

「ま、それは無理だな。水穂さんが、羽二重を着るのは、遠い将来でないと着ないよ。それに、羽二重を着せるのに成功したとしても、すぐに破って脱いじゃうんじゃないの?」

と、言った。

「それなら、水穂さん、どうしたらいいのかな。俺、薬を飲まして眠らせるだけじゃなくて、もっといい治療法がないかと思うんだけど。あの、爺さん先生じゃなくてさあ、医療コーディネーターみたいな人に相談してさ、もっと大きな病院に連れ出してやることができたら、どんなにいいだろうと思うのに。」

ブッチャーがそういうと、

「いや、無理だね。まず初めに、医療コーディネーターなんて、同和地区の人間には、何もしてくれないっしょ。コーディネーターの事務所すら入らせてくれないかもしれないよ。」

と、杉ちゃんは言った。

「だからさあ、水穂さんに羽二重着せてさ、そうすれば、同和地区の出身者だと、ばれる確率は大幅に減るんじゃないか?」

「さあ、どうだかね。本人羽二重なんか着たら、絶対落ち着かないで、そわそわして、すぐに同和地区のやつだということがばれちまうよ。それをしたくないから、いつも銘仙の着物でいるんだろ。まあ、水穂さんにとっては、これしか適する治療法もないってわけだ。あきらめな。」

「杉ちゃん。文字が読めないからと言って、そういう事を平気で口にするのは、一寸すごいと思うぞ。」

ブッチャーは、杉ちゃんの話に、はあとため息をついた。

「ただいまあ。」

と、玄関先で声がする。声は女性の声だった。まだ若い女性二人で、それぞれ通っている学校も違うけれど、大親友のような関係になっていて、親しく付き合っている。

「ああ、お帰んなさい。」

ブッチャーは、玄関先に向かって、そういうことを言った。二人の女性たちは、何の迷いもなく、四畳半にやってきた。

「あら、水穂さん眠っちゃったの?せっかく、今日のことを報告しようと思ったのに。」

と、一人の女性がそういうことを言った。

「はあ、報告って何を報告するんだ?」

と、杉ちゃんが聞くと、

「ええ。水穂さんが、医療コーディネーターの方にアドバイスをもらった方がいいって言ってくれたから、私たち、その通りにしてみたのよ。」

と、もう一人の女性が言う。それを聞いてブッチャーは、なんで水穂さんは他人の事には優しすぎるほどやさしいのに、自分の体の治療には乗り気でないんだろう、と、思ってしまうのだった。

「コーディネーターって、どこにいるんだ?」

杉ちゃんが聞くと、

「ええ、水穂さんが調べてくれたんだけど、この製鉄所から、一キロもないところに事務所があったのよ。だから、あたしたち、勇気を出して行ってみたの。まあ、こんなガキに毛の生えた程度の高校生の話何て、信じてくれるかどうか、半信半疑だったけど、結構親切にしてくれたわよね。ねえ、みのりさん。」

と、二番目に発言した女性が言った。ということは、みのりさんと呼ばれた女性が、体調に何か問題があるというのだろうか。

「船山さん、一体どうしたの?どこか調子が悪いところでもあるのかい?」

とブッチャーが彼女に聞くと、

「ええ、先月から、ずっと頭痛がひどくて。まあ初めのころは、女性の現象のせいかなあと思ってたんだけど、一か月も頭痛が続いていて、それがだんだん強くなってきているので、これはやばいなと思って、水穂さんに相談したのよ。」

と、船山さんは答えた。なるほど、確かに、一か月も頭痛が続いているのは、確かに大問題である。しかもそれがだんだん強くなっているというのも、また問題だ。

「そうか、それで水穂さんが、医療コーディネーターの事務所を調べてくれたわけか。で、どっかいい病院でも見つけてもらえたの?」

と杉ちゃんが聞くと、

「ええ、とてもやさしい方で、一緒に病院に行こうと言ってくれて、何だかとても心強い応援団って感じのおばさんだった。頭痛がひどいって言ったら、脳腫瘍とか、何とか閉塞症かもしれないから、

一緒に頑張ろうって。」

と、船山さんは答えた。

「そうか、良かったな。じゃあ、そのコーディネーターとかいうおばさんと、一緒に病院へ行くというわけか。」

「ええ、明後日に脳神経外科で有名な、真田病院に連れて行ってもらうことになったの。それで見てもらえるようにしておくから大丈夫って。」

「真田先生だって?超有名病院じゃないか。あそこで、有名な芸能人が入院したことだってあるじゃないか。」

ブッチャーは、驚いてそういうことを言った。

「まあ、とりあえずよかったな。見通しがついたじゃないか。」

と、杉ちゃんはそういうことを言っているが、ブッチャーは、一寸悔しいなと思った。船山みのりさんは、医療コーディネーターと一緒に病院に連れて行ってもらえるのに、水穂さんは、医療コーディネーターにも毛嫌いされてしまうのだ。日本はなんて不平等なんだろう。

「だからブッチャーさ、それとこれとは話が別だ。そう思っておけ。」

ふいに杉ちゃんに言われて、ブッチャーはそうだねえと頭を垂れた。水穂さんはまだ薬が回っているのか、すやすやと眠っているだけである。

その翌々日。船山みのりさんは、付き添いの女性と一緒に、また医療コーディネーターのもとへ出かけていった。彼女も頭痛がひどいということはまんざら嘘でもないらしく、時々、あたまを抱えるしぐさをするので、そういう事なんだということがわかる。ブッチャーは、それを眺めながら、あーあ、水穂さんもこういう風になってくれたらいいのになと思う。でも、確かに銘仙の着物を着た水穂さんを医療コーディネーターのもとにつきだしたら、何だこんな汚い人、とでも怒鳴られるかもしれなかった。

「おい、ブッチャー。ちょっと手伝ってくれ。水穂さんにご飯食わすからな。」

と、四畳半から杉ちゃんの声がする。ブッチャーは、急いで、四畳半に戻った。そして、布団に寝たままでいる水穂さんの口元に、杉ちゃんから渡されたアボカドを、そっと持っていく。

「水穂さん、ご飯ですよ。今日こそたくさん食べてくださいね。そうしないと、体が弱って、力が付きませんよ。」

と、ブッチャーがそういっても、水穂さんは、顔を反対の方へ向けてしまうのだった。

「どうして食べないんですか。食べないと、治る病気もね、治らなくなってしまいます。病気から元気なるには、食べることが大事なんですよ。だから、食べてください。」

ブッチャーがいくら言っても、水穂さんには効果なし。いつまでも、食べようとしないのである。

「ほらあ、この間、水穂さんが相談に乗ってやった、あの若い女性ね、彼女も今、大きな病院で検査を受けているんです。だから、彼女に負けないように、水穂さんも元気にならなくちゃ。」

と、ブッチャーはそういうが、水穂さんはせき込んでしまった。あーあ、またこれかあ、とブッチャーがつぶやくと同時に杉ちゃんのスマートフォンがなる。

「えーと、この赤いボタンを押せば、電話に出れるようになるだっけな。あ、そうだ。はいはい、ああ、中原さん。ああ、船山みのりさんね。で、検査はもう終わったの?はあ、そう、はあ、わかったよ。じゃあ彼女の着替えなんかはどうするの?あ、病院で貸してくれるわけね。おうおう、わかった。そうか、食べ物一切ダメか。それはきついなあ。まあ、彼女のご両親にも連絡してやってさあ。了解了解。はいよ。まあ、彼女には、運が悪かったとだけ言っておけ。」

と、杉ちゃんは言って、電話を切った。こういう時に、余分なことを一切言わないのが杉ちゃんのやり方だ。それは、ある意味では、大助かりであるが、冷たすぎると批判されることも多いのである。

「杉ちゃん、どうしたんだ?彼女、大変な病気にでもなったかい?」

ブッチャーが聞くと、

「ああ、彼女、ウィリス脳動脈輪閉塞症なんだって。手術の必要があるんだって。ま、そこさえクリアすれば大丈夫だって。」

と、杉ちゃんは答えた。つまるところ、脳腫瘍より複雑なものだ。単に腫瘍を取ってしまえばいいというものではない。

「まあ、いいじゃないの、手術してもらって、新しい血管をつくってしまえば普通に生活できるっていうんだからなあ。其れさえやればいいんでしょ、それさえやれば。」

と、杉ちゃんはあかるい声でそんなことを言っているが、ブッチャーはそんな簡単に行かないだろうなと思った。ちなみにウィリス脳動脈輪閉塞症のことを少し説明すると、脳動脈が使えなくなり、代理で細い血管が勝手にできてしまうというもので、日本人によくある脳血管障害である。だから、治療は、代理の人工血管を代わりに入れ込んで代理の血管をつくってしまうという手術が主流である。

もちろん、脳の血管を手術するのだから、大変難しい手術であることは言うまでもないが。

「よし、じゃあ、とりあえず彼女の着替えとか取りに来るだろうからよ。支度しとくわ。水穂さんのこ戸をよろしく。」

と、杉ちゃんは、にこやかにそういって、四畳半を出て行ってしまった。この時は、咳の発作も比較的軽かった水穂さんが、

「よかったじゃないですか。とりあえず診断名がついて、手術ができれば、あとは大丈夫でしょう。」

と、ブッチャーに言うので、ブッチャーは、もうやるせない気持ちになって、

「水穂さん、悔しくないんですか。彼女はそうやって、脳の手術をしてもらえるのに、自分は、病院に行っても毛嫌いされるだけでしょう?そういうことを聞いて、本当は怒ってもいいのに、なんで怒らないで平気でいられるんですかね?」

と、水穂さんにいった。

「いえ、僕には関係ありません。そんな権威のある病院で手術してもらえるんですから、それで、僕はうれしいですよ。」

水穂さんは、そういうことを言っている。ブッチャーは、そんな答えを出している水穂さんに、うれしいなんてどこから出てくる言葉なのか、あきれたというか、困ってしまうというか、なんというか、不思議な気持ちになってしまった。

「うれしいだなんて、そんな成人君子みたいなことがよく言えますね。自分だって、十分苦しんでいるのに、誰かがいい医療を受けられて、喜ぶなんて、おかしなことだ。あーあ、喜ばないで、なんで自分はこうなんだとか、怒ればいいじゃないですかあ。」

ブッチャーはため息をついた。

「だって、怒ったって、何も意味がないですもの。それができるんだったら、日本の歴史を変えなくちゃいけませんよ。それに、」

そういう水穂さんは、そこまで言いかけて、激しくせき込んでしまう。ブッチャーは、水穂さんの背中をなでてやるなど、いつもの対処をするのだが、、、何とも言えないやるせなさを感じた。ブッチャーは、壁にかかっている日めくりカレンダーを見る。そこには、今月の予定がいくつか書き込まれていたが、翌日は、帝大さんが来訪する日となっていた。そうか、俺が医療コーディネーターの代わりになってやろうとブッチャーは思った。俺は医療コーディネーターのような専門的な知識があるわけじゃあないけど、水穂さんがもっといい医療を受けることができるようになるためには、少しあの爺さん先生の尻を叩くことが、必要なのかもしれないと思った。

翌日。

帝大さんこと、沖田眞穂先生は、朝の九時過ぎにやってきた。年を取るとやることなすことが早くなるというが、帝大さんの往診時間は、いつも朝九時すぎである。帝大さんとあだ名をつけたのはもちろん杉ちゃんであった。沖田先生の出身大学である東京大学が、沖田先生の若いころは、東京帝国大学と呼ばれていたからである。沖田先生は、そこに在学中に、大学が東京帝国大学から、東京大学に名前が変更になったとよく話していた。それくらい、老医師だった。

「どうもこんにちは、水穂さん。」

と、帝大さんは、水穂さんの顔をにこやかに笑ってみた。

「先生、こんにちは。」

と、水穂さんは、そういって、布団に座ろうと試みるが、帝大さんは、無理をするなといった。そのまま寝ていればいいからと優しく言う帝大さんを、ブッチャーはなぜか疑問の目で見た。

「具合はいかがですかな?」

と帝大さんが聞くと、

「時々、喀血の発作が。」

と水穂さんも答える。

「少なくとも、一日三度は起こしてますね。俺がご飯食べさせようとすると、そうなりますもんね。」

と、ブッチャーは、はあとため息をついた。

「そうですか。相変わらず危険な状態が続いているということですな。まあ、とりあえず薬を出しておきますから、発作を起こしたら、すぐに飲んでくださいね。」

という帝大さんにブッチャーは、ここで言ってしまおうと思った。

「ちょっと待ってくださいよ。この前と同様に薬を出すだけですか。ほかに水穂さんを何とかしてよくしてあげる方法というものは、ないのでしょうか!」

「あなたの気持ちもわかりますよ。須藤さん。」

と、帝大さんは、ブッチャーに言った。ブッチャーにとっては、唯一本名を覚えてくれる人物であるのだが、今回は、それをうれしいとも思わなかった。

「でもですね。この病気を何とかする方法は、これしかないんですよ。根本的に治すという方法は全くありません。もう一度かかった以上、この病気と付き合っていくしかないんです。それは仕方ありません。もう、あきらめてください。」

と、帝大さんはいう。ブッチャーは本気になって、水穂さんを気にして、

「でもですね、ここを利用している人で、何とか脳動脈輪閉塞症とかいう、変な名前の病気にかかった人が今してね!その人は、手術をすれば治るというんですよ!」

とでかい声で言った。

「ああ、ウィリス脳動脈輪閉塞症ですか。確かに、あれは術式もしっかりしていますし、一度手術を受ければ、安定した生活が得られることも確かですよ。」

と帝大さんは言う。ブッチャーは、それでますます水穂さんがかわいそうになって、

「だったら、なんで水穂さんのような人は助からないで、薬だけしか与えられないんですかね。其れなのに、なんであの彼女は、医療コーディネーターと一緒に、有名な脳神経外科の病院に行って、手術もしてもらえるんでしょうか?俺は、そのきっかけを作ってくれた水穂さんが、どうしてこんなひどい目に合わなきゃならないのか、不平等だと思います。なんで、水穂さんは、助からないのですか!」

といった。水穂さんが、ブッチャーに、弱弱しい口調で、

「もう言わなくても結構です。僕みたいな人は、生きてなんかいないほうがいいというのは、昔からある事ですからね。」

といった。何ともやるせなくて、涙をこぼしてしまうブッチャーに、帝大さんは、

「いえいえ、須藤さん、この病気の人は、銘仙の着物であってもなくても、こういう風になるものですよ。」

と、言って訂正した。それじゃあ、どういう人でも、そうなるのですかとブッチャーが聞くと、帝大さんは、そうですよ、とだけ答えた。ブッチャーは、本当にどうして日本の身分制度というものは、こういう歴史を残してしまうのだろうか、と、思ってしまうが、水穂さんの言う通り、日本の歴史を変えることは誰にもできないということを思い出した。

ふいに、ブッチャーのスマートフォンがなった。ブッチャーは急いで、それをもって中庭に出て、電話アプリを立ち上げる。

「はいはいもしもし、あ、杉ちゃん。」

電話の相手は杉ちゃんだった。

「おう、ブッチャー、今、真田病院の手術室の前だ。まったく親切な病院だよな。手術で待っている間に、おやつをくれたりするんだからな。」

杉ちゃんは、間延びした声でそういっている。

「そんなことはどうでもいいよ。おやつの話なんて。で、何の用で電話をよこした?」

ブッチャーがそういうと、

「ああ、船山みのりさん、無事に成功したぜ。特に拒絶反応のようなもんがなければ、これで、大丈夫だって。」

と、電話の奥でそんな言葉が聞こえてきた。ブッチャーは、水穂さんのことが気になったが、水穂さんも喜ばなければだめというだろうと思い、

「おう、良かったな。じゃあ、もうしばらくの辛抱だ。」

と、だけ言った。



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