いっそのこと僕が

麻城すず

いっそのこと僕が

君が泣いているのを見ると、僕は少しの苛立ちを覚える。


小さく芽生えた感情は、気付くまでに相当の時間を要したから。


「どうしてあたしじゃ駄目なのかなぁ」


君は随分先に進んで。


僕を置きざりにしたくせに、こうして都合のいい時ばかり僕の横で涙を流す。


どうせなら、僕を思って涙を流して。


それを言葉にしたならば、きっともう君の隣りにはいられない。


だから何も言わないけれど。


「どうして僕じゃ駄目なのかな」


それを言葉にする時は、きっとこの関係が壊れる時に違いない。


他の奴に壊されるのなら、いっそのこと、僕のこの手で壊してしまえればいいのにね。

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いっそのこと僕が 麻城すず @suzuasa

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