ボウフラについて

ボウフラ


棒を振ってるような姿だから、ボウフラというのだが、あまりにもこまい姿のせいで一本の棒に見えているけど、拡張すると地球を侵略しに来たエイリアンみたいに、グロい。


甥っ子の小さな指は、リノリウムに似たのっぺりした床に落ちたボウフラさえも、潰さずに摘むのだからすごい。

(倣って私も摘めるようになった。いるのかこの特技)


なんでこんなことを話してるのかと言うと、メダカの観察はボウフラありきの話しだからだ。


今まで話してきた中から省かれていたが、最初からずっとボウフラで餌付けをしていた。

そこが、だからつまり、メインなのだから。


エサを与えすぎるとボウフラを食べなくなる、という情報を早々にゲットしていたため、メダカがボウフラを確実に食べることを観察する必要があった。


美味しいものを食べると、それまでのドックフードに見向きもしなくなる犬のようになっては、困る。


とはいえ、エサをやらずに放置したとして、蓮の鉢の中に、毎日食べてもメダカの命をつないでくれるほどのボウフラが存在するのか、計測のしようがなかった。(切実に知りたい統計情報)


遭難した人間のように、配分して食を抑えるはずもない、野生の生き物は食える時にあるだけ食うが生存ルールだ。


ぜったい、毎日、根こそぎ食うに決まってる。


メダカ用の市販のエサはやらざるをえない。


空腹の状態でボウフラ、エサ、の順で食べさすしかない。


貯水用の火鉢や他の植木鉢にできた水たまりにいるボウフラを集めて、せっせと蓮の鉢に投入しつづけた。


そのうち、ステンレスのスプーンが水面を揺らすと食べ物がくる合図だと覚えるようになった。


なんで、ボウフラを殲滅しようとしている蓮の鉢にボウフラを投げ込んでるのか、妙な自己矛盾を感じる時もあるが、メダカが二匹になったところで、日に二回のエサやりでは足りないし、バランスも悪い気がしてきた。


それから、エサを主食にして、ボウフラはそっと鉢の中に仕込むことにした。


エサが切れる日中は、宝探しのようにボウフラを見つけ出して空腹を紛らわし時間を潰してもらう他ない。


現在、なんとなくメダカたちはエサよりもボウフラが好物だ。


吸い込むようなあの食べ方だと、味の区別とかないと思うんだけど。(食べ物じゃないものを吸い込んだ時は吐き出すか、でも)


水面にぶら下がったような蛹形態のボウフラも、棒を振るというより、8の字に水中を踊って移動する幼虫形態も、どちらも食べる。


……どっちがボウフラを指すのだろう。どっちもボウフラ(いずれ蚊になるモノたち)だと思うんだけど。


メダカは虫やエサの他にも、枯れた蓮の葉をつついて食べているようだ。

空腹なのかネコ草的なことなのかわからない。ストレス発散に八つ当たりしてるように見えなくもなく、やめろよー、とも思う。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る