魚の世界
卵
オスが来た時、メスは無精卵を腹にぶら下げていたので、見分けるのに便利だから、卵をそのままにしておいた。(カビては困るのでいずれ除去しなければならない)
次の日、メスの腹の卵はなくなっていて、おっ、と思ったら、水底にぺいっと落ちている。
万が一受精していて、蓮の根本にくっつけることにしたのかと最初は考えたが、やがてくっついているのではなく、水流で転がることがわかり、その上、無精卵特有の白濁した卵になっていっていることに気づいた。
オスが先に産卵されていた卵をもぎとったのか、メスがオスを迎えて卵放棄を望んだのかそれはわからない。
いずれにしろオスが来たために、何かが変化しつつあった。
エサ係として私を認識しヒトに慣れて来ていたメスは、それから一枚のガラスで隔てられたように、本来の魚の世界に仲間を得て戻っていった気がする。
最初の卵
上から見ると体の下にある臀鰭が見えにくいメダカたちは、大きさと色で見分けがつくことがわかった。
メスの方が黒くてやや丸みがあり、オスは金茶色でシュッとしている。
調べたところ、メダカの繁殖は一夫多妻が好条件のようだ。
オス一匹に、メスが5、6匹とか。
申し訳ないがスペース的に一対一でお願いせざるを得ない。メス、ファイト!
無精卵が放置されて2日後、オスが来てから最初の産卵があった。
心なしか水が曇ってるようにも見える。
受精したのか? これからなのか?
来て以来、メスの泳ぐケツをひっきりなしに追いかけて、付き纏っているオスは、はたしてメスのストレスになっているのか。
傍目にはうっとうしいストーカーなのだが、メスはマイペースにエサを探して泳いでいるように見える。あまり気にしていないように見える。
産卵したのだから、カップリングがうまくいったと思いたい。
が、一匹でもぽぽんと卵を平気で産むようなメスだったという過去が頭から離れない。
むりだ、安心するには早すぎる。確証がもてん。
次の日、メスがぶら下げていた卵が消えていた。
くまなく探したけど、水中のどこを探しても見当たらない。
………………………………食った?
水底には無精卵がまだ転がっている。
仮定の話だが、
腹についた卵をメスが食べるのは、姿勢的に無理がある。
オスは無精卵を、産卵を促すために外したのではないか。次に生まれた卵も生殖には邪魔だから新鮮なそっちは美味しく食べちゃったんじゃないだろうか。
食べたと仮定すれば、犯人はオス。
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