お婿さん

お婿さん問題


生まれた川に遡上し、産卵する鮭の群れなんかの映像で目にするように、魚類は基本的に体外受精だ。


交尾ではなく交接という。


メス一匹では、生まれた卵は無精卵ということになる。

無精卵はやがてカビて腐るらしい。

なんですと!? 花粉受粉用の小筆があったので拝借してメスのお腹にぶら下がりっぱなしの卵は取り去った。


さて。


メダカのメスはオスの刺激で卵を生むが、オスが不在の場合、産卵できない卵がお腹に溜まって過抱卵病になるようだ。ピンポン玉のように腹がパンパンに膨れ上がってしまう。


最初は、白い腹を見せた仲間の死骸ばかりが浮かぶ腐敗した水から助け出され、楽になった安心感から生んだだけで、まだ過抱卵になる危険性はあるのかもしれない。また少し太り始めたんじゃない、そのお腹! と注視しつづけた。


次の日、また卵を生んでいた。


どうやら、気にせずお腹が張って来たら卵を生むらしい。排泄物のようなマイペースぶり。


どうしたものか。


メダカブリーダーになるつもりはないし。いつもなら鉢の内壁にくっついている藻の塊は、ボウフラのミノムシ形態で、藻を纏ってその中に潜んでいるのだが、今や側壁に藻ミノはひとかけらもなく、つるんとしている。ボウフラたちがたった一匹のメダカのために一掃されている事実。


対ボウフラは問題ない、そうなると、感情論的な話になる。

メスとして無精卵を生み続けるのはむなしいだろうか。


彼女は腐った水の中でもマイペースだった。

今もマイペースだ。

他の植木鉢にできた水たまりの中にいるボウフラをスプーンで与えると、踊り食いする技を身につけた。

悠々自適にも見えるが、いちいち無精卵を取り除く作業は私としてもむなしいし、面倒だが水質を保つために欠かせないことでもある。


最大の問題は、すべからく動物たちの命の病になるストレスだ。

日が経ちすぎてしまった。今さら、他の個体が入ってくるという、環境の変化に耐えられるんだろうか。




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