第32変 Lets' 変!変!変!な!体育祭①

 いよいよ、ついに始まった体育祭。高校生活で初めての大きな行事なだけあって、クラスのみんなは大きな盛り上がりをみせている。そんな中、俺は……。


「応援団の演舞は、午後からですね。とても楽しみです」

「ああ、僕の胸の鼓動はまるで燃え上がる炎のようだ。きっと、素晴らしいステージになるはずさ!」

「……そうか」

「裕様、一回落ち着きましょう。顔が真っ青ですよ」


 めちゃくちゃ緊張していた。

 練習の際はプラスの気持ちが多かったが、いざ本番を迎えると緊張して堪らなくなった。大勢の前で演舞をするのも緊張するし、何より本当に上手くいくか分からない絶妙な緊張感が俺を押し潰そうとしてくる。

 それに、一つの応援団で二つのグループに別れて、演舞なんて見たことないし、絶対後で先生に怒られるはずだ。


「きっと大丈夫ですよ。自身を持ってください!」

「僕の勘が言っているよ。絶対成功する、ってね」

「二人とも……ありがとな」


 二人の励ましのおかげか少し落ち着いてきた。


「よし、それじゃあ行ってくる」

「打ち合わせですか? 頑張ってください」

「ああ」


 二人の応援の声を背に、打ち合わせ場所に向かう。

 シーンとした誰もいない校舎に入り、いつもの教室へと足を動かす。その間にまた緊張してきた。


「うっ、やばい」


 あまりの緊張感に吐きそうになってくる。


「そんな様子じゃ、成功するものも成功できないわね。『変なことは楽しいって思ってもらえるように、この体育祭でみんなを巻き込んでみせます』って意気込んでたのは、どこの誰かしら」

「お、小倉さん」

「大口叩いたならちゃんとしなさいよ。それとも何? 今更、やっぱ無理かも〜。なんて言わないわよね? やると言ったなら、ちゃんと責任を持った方がいいんじゃない」


 その言葉にはっとする。

 そうだ、一度『みんなを巻き込む』と言ったのは俺自身だ。俺が自信を持たなくてどうするんだ。


「ありがとうございます。余計なことを考えるのはやめて、今はこっちに集中します」

「そう。……ちょっとは緊張が解けたみたいね」

「え、もしかして、俺の緊張を解くために話しかけてくれたんですか」

「は、はあ!? 自意識過剰すぎ! あんたが緊張したままだと、充分なパフォーマンスができないかもしれないでしょ。それだと、気持ちよく勝負に勝てないじゃない」


 後半早口になる小倉さん。口ではそう言っているが、態度から小倉さんの思いが伝わってくる。


「ほ、ほら、ぼけっとしてないで早く行きなさいよ! 私ももう行くから」

「はい。その、お互い頑張りましょうね」

「……ええ」


 その言葉をきっかけに集合場所へと早足で向かう。


「あ、ブルー、やっと来たし」

「遅れてすみません!」

「いいよ、いいよ。じゃあ、みんな揃ったことだし、最後の作戦会議始めよっかー!」


 タピオカシオンは笑顔でそう言うと、作戦会議という名の最終確認が始まる。


「——ということで、みんなおけまる?」


 それぞれ頷く。

 その様子を見てタピオカシオンは話を続ける。


「うん、みんなだいじょぶそうだね。……こんなこと言うのもあれだけどさ、あーし、めーーーーっちゃ緊張してるんだよね」

「……遊佐も緊張……するんだな」

「もちのろんだよ! だってここまで頑張ったこと今までなかったんだよ。だから、失敗しちゃったらどうしよー、なんて考えたりしちゃってさ。でもさ、ここまで来ちゃったら、どんなことになっても最後まではっちゃける」

「うん。そうだね。彼女の言う通りだ。みんな、今まで以上にはっちゃけよう」

「よーし!! 杉野……じゃなくて、ジュースオレンジ、おでんイエロー、かぼちゃブラック、そしてアップブルー。頑張るぞー!」


「「「「「おー!」」」」」

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