第10主題 月曜日の逢瀬
僕が毎週月曜日、治療に来院することを、キューピッドは
「一緒に、おやつしようよ」
と、誘ってくれる。
もう安定剤は要らなかった。ミヨシくんの笑顔と言葉、差し出される菓子、ヒナコさんと過ごす真っ白な時間に、僕は
白い
「おとうさんが、連れて来てくれたの」
ピアノを愛しい人のように語るヒナコさんの指も、僕の指も、白百合の病のせいで万全ではない。だが、
「階名を教えたのは、ヒナコさん?」
「教えていないわ。
ヒナコさんは時として、自分の息子に興味が無い様子だった。何故だろう。ミヨシくんは、お利口さんで、毎日、
おそらく病気のせいだろう。僕を
「どうしました?
彼女の気持ちは、まったく読めない。
入院加療中のヒナコさんの個室に居たのは、クロード・ドビュッシーの肖像に似た品の良い紳士で、ミヨシくんは
「おとうさん」の姿は見えない。
「おとうさんは、仕事で忙しいんだよ。
小さいこどもが「養う」と云う表現を使ったことに驚く。ミヨシくんの父親は、
「家族を養ってやっている」
と
ただ父親と云う人が病室に現われないことは確かで、だから僕は安心して、
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