第22話 おっぱい道はこれからだ!

 するとエンヴィールを倒したのを見計らってか、ユリィとバーストが駆けつけてきた。


「キョーブさん! 大丈夫ですか?」

「ああ! おっぱいパワーのおかげで倒せたよ! それに魔石も手に入ったしね!」

「流石ですキョーブさん! もう怖いモノなしですね!」

 ユリィは手を叩いて喜んでくれる。


「そうかなぁ? あっはっはっ!」

「私も倒したんだけどなぁ? ユリィちゃん?」

 ユリィはそっぽを向き、アリンのその言葉は無視された。


 するとユリィは顔を背けたついでに何かを見つけて、はっとした表情を見せた。


「監督? 監督っ!」

 ユリィは倒れている魔族の男に走って向かった。


 監督? 確かユリィの採掘場での話に出ていた上司だっけ? まかさあのエンヴィールの仲間が監督なのか?


 俺も駆け寄って見た。魔族の男は意識があるらしいが、木材の下敷きになってしまっていて動けないようだ。エンヴィールが全方位に魔法を撃ったせいで建物の一部が崩れせいだ。顔だけ動かしてユリィを見据えた。


「君は確か……一緒に働い事のある……」

 魔族の男は苦しそうに話している。どうやら魔族の男もユリィの事は知っていたようだ。


「ユリィです! あの時は逃げてすみません……」

「気にするな……仕方ないさ……」

「今、助けます!」

 ユリィが重なっている木材に手を掛けるがびくともしない。


「いや、いい……これでいい。エンヴィールがいなくなったから私はもうおしまいだ」

「そんな……」

 ユリィが悲しむように下を向いた。


 俺とアリンが力を合わせれば助けられるかもしれないが、アリンは後ろでユリィを見守るだけで助けそうな雰囲気はない。俺はユリィの知り合いとはいえエンヴィールを手伝った奴を助けるなんてしたくはない。

 するとユリィは再び魔族の男を見ながら話しを続けた。


「でも何故なんです? 過激派のエンヴィールの仲間になるなんて……」

「魔族の楽園を……エンヴィールが作ってくれると思ったからだ……いや、そう信じたかったからだ。俺の身近に転がり込んだ希望にすがっただけだ……」

「良い人の監督が……エンヴィールの仲間だなんて……」

「良い人じゃないさ……私は悪い人だ。最後にこの町が燃える姿を見て満足してるし、ざまぁ見ろって思っているよ。はははっ……」

「監督……」

 ユリィは泣きそうな顔で魔族の男を見つめている。


「だが君までこの町と一緒に消える必要はない。早く出て行くんだ……」

 炎は燃え広がり、このままいると危険なのは間違いない。


「で、でも……」

「行け……お願いだ……」

 魔族の男は真剣な表情でユリィを見つめた。


「……はい」

 ユリィは立ち上がり、魔族の男に背中を見せた。


「早くここから逃げるわよ。こっち!」

 アリンが率先して逃げてくれる。俺達はその背中を追った。


 炎が町を焼き尽くし、建物は倒壊を始める。激しい輝きだ、この町の最後の灯だろう。




 3人と1匹は町から離れ、遠くから町を見渡せる小さな丘にたどり着いた。

 あれから時間が経ち、日の出が出て来た。休憩をしている間にもう朝になっている。


 もう燃えてはいないが木造の家が多い町はその多くが炭になった。

 生きている町の人間がここからぽつぽつと見えているが、多くが茫然と町を見ているだけだった。


 この町の人間には悪いが俺は魔王になる人間だし、アリンは仕事で来ているだけであり、この町で何かすることはない。


 そしてアリンが一人で町の様子を見ている隙に少し離れた場所でユリィとバーストと俺で話始めた。


「ユリィ……大丈夫か?」

 ユリィは魔族の男の最後を見てからというもの落ち込んだ様子だったので聞いてみた。


「……はい。大丈夫です。心配してくれてありがとうございます。親切にしてくれた人が死んでしまうのは悲しいですが……あの人はあの人なりに魔族の事を想ってやったんだと思います。私は……監督の死を無駄にしないために、命を賭けて魔王復活を成し遂げようと思います。期待してますよキョーブさん!」

 ユリィは笑みを俺に見せる。もう落ち込んでいる様子はない。


「あ、ああ! 任せておけ! それで魔石は手に入った訳だけど……これだけじゃ足りない?」

 俺が魔石を見せるとバーストは鼻をクンクンさせながらそれを見つめた。


「ふむ……この魔石でも相当な魔力は感じるが……足らんな。魔人降臨の儀式はこれだけでは行えない」

「まだ集めろって言うんですか?」

「ああ……魔王になりたいならな……」

「くぅ……道のりはまだ長いな」

 爆乳楽園の夢は長く険しいな……もうちょっと簡単が良かったなぁ……


「でもキョーブさんなら出来ます! だってあのエンヴィールを倒したんですから!」

 ユリィが褒めてくれる。


「くっくっくっ……そうだな! よしっ! 頑張るぞ!」

 気合を入れて拳を振り上げた。


「何を頑張るの?」

 アリンが近寄って来た!

 首を傾げており、聞いていた様子はない。あぶねぇ……


「そ、それはこれから……金を稼がなきゃいけないからなぁ。ねぇユリィ?」

「そうですね。これから、誰かさんのせいでバーストさんがどこかに行ってしまった! から新しい稼ぎ口を見つけなきゃいけませんから」

 むすっとした表情で言ったユリィ。アリンの事本当に嫌いなんだな……

 その事を突かれると弱いアリンは冷や汗を垂らす。


「そ、それは……あっ! あの魔石売ればそこそこのお金になるはずよ! キョーブも魔石を売るためにエンヴィールと闘ったのよね? 売る相手を見つける苦労はあると思うけどそれでなんとか当面のお金に苦労はしないはず……あはは……」

 そういえば魔石を売るために欲しいとアリンには言っていたな。魔王予備軍である事を隠すためだったが。


 だが都合がいい事にアリンは俺が魔石を持っていても特に何も言ってこない。元は俺のじゃないが、バーストと俺達への懺悔の気持ちがあるのか魔石は見逃してくれるらしい。


 するとアリンがどこか言い難そうに俺に話しかけてきた。


「えっと……キョーブ。一応礼は言っておくわ。エンヴィール討伐に手を貸してくれて」

「えっ、ああ。気にするな。俺は魔石を売るために戦ったんだからな」

 まさか魔王になるために頑張っている俺が英雄の娘で魔王予備軍を倒しているアリンに礼を言われるなんて不思議な気分だ。


「正直男に礼なんて言いたくないけど……今回は特別」

 手を差し出して来た。そのまま俺と握手した。


「ま、最初はどうなるかと思ったけど、中々良い協力関係だったと俺は思う」

 エンヴィールを倒すのに二人のどっちかが欠けていたら負けていたかもしれない。そういう意味では協力して良かったと思う。


「そうね。私もエンヴィールとの闘いの中ではいい関係だったと思うわ……うっ」

 アリンが唐突に疲れたように膝をついた。


「忘れてたわ……あなたに触れると魔力が吸われるの……」

「あぁ……そういう事……」

 お互いに学習しないな……


「まぁ良いわ。もうキョーブとはこれでさようならだし」

 アリンは何とか立ち上がる。


「さようならか……寂しいな……」

 カップアッパーで育ったアリンのMカップ……あの美しいおっぱいがもう見れなくなるなんて悲しすぎる!


「……最後ぐらい目を見て話したらどうなのよ?」

 アリンにおっぱいに目を奪われているのがばれた。


「いや、最後に良いオッパイを目に焼き付けておこうと思って……」

「やっぱり男って……というか! 本当に私の胸を治す方法知らないんでしょうね!」

 アリンが怒りの表情をしながら詰め寄ってくる!


「知らない! 本当に! というか治すな! そのままでいてくれ!」

「はぁ……でも魔法の力でこうなっているなら魔法で治せるはず。それも探さないと……」

 何故元に戻そうとするんだ……あんなに美しいのに……


 まぁすぐには治れないだろう。レアな魔法らしいし。治す必要もないが。


 それはいいとして、これからアリンはどうするのだろうか? ふと疑問が浮かんだから聞いてみた。


「アリンはこれからどうするつもりだ? また魔王軍の手下を倒しに行くの?」

「そうよ。それが私の仕事だから。この町の二の舞にならないようにね。あなたはどうするの?」

「俺は……仲間と話し合って決めるよ」

 ユリィとバーストをちらりと見る。俺はこの世界の事はまったくと言っていいほど知らないし、他の魔石の場所は知らないからバーストから聞くしかない。だからこれから行く所は知らない。


「そう。私は近くの港に行くの。今度会うまでに私の胸! 治す方法見つけておいてよね! じゃ!」

 アリンは俺達に背中を見せると歩いて去って行った。


 アリン……男嫌いで、強情だったが悪い奴じゃなかったな。おっぱい大きくなったし。敵対関係じゃなかったら味方にしたかったな。強いし、おっぱい大きくなったし。


「バーストさん。俺達はこれからどこに向かうんですか?」

 バーストに聞いてみると一所懸命に顔をこちらに向けながら話を始めた。


「ふむ……これからここから一番近い港に向かう。そこに高純度の魔石があると聞いた」

「へ~港に……港? アリンと同じ場所って事ですか?」

 アリンは港に行くと言っていた。この世界の地理は知らないが多分同じ所じゃないか?


「おそらくな……だが別に構わないだろう? 敵視されている訳でもあるまい?」

「そうですね。またあのおっぱいと会えるのは歓迎です!」

 またあのおっぱいと出会えるのはいい事だ! また会ったら気まずいかも知れないけどな!


「わ、私は王国騎士とは会いたくないですが、キョーブさんのためなら行きます!」

 相変わらずアリンの事は嫌いなユリィだが一緒に来てくれるようだ。


「では旅立つか……ではあっちだな」

 バーストが顔をアリンが歩いて行った方向に向ける。


「よしっ! 魔王になるために出発だ! 爆乳楽園が待っている!」


 俺とユリィ、そしてバーストは眩しい朝日と心地の良い風を感じながら草原の道を歩んでいく。

 ある日突然死んだ俺。そして記憶も曖昧なまま、異世界に飛ばされ、魔王になる事を決意した。

 そして魔王になる理由はただ一つ! 俺の理想郷! 爆乳楽園創立だ! 

 この先……どんな困難が待ち受けようともその夢は叶えてやる!

 俺は決意を新たに前に進んで行った。

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おっぱい魔王! @suaku

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