《レアル》(リアル)から降臨(ログイン)したゲイマー(ゲーマー)達が、ゲーム感覚で大暴れした結果、ヴァーチャリア(バーチャル)世界の人たちは滅亡の危機に陥る。
ゲイマーたちが世界を去り、ゲイマーたちの残した恩恵を享受しつつも、二度とゲイマーたちを暴れさせてはならないという認識を共有した世界に、そんなゲイマーたちが束になっても敵わなかったとされる主人公(暗黒騎士)が、長い年月を経て再度ヴァーチャリアに降臨した。
苦労人かつ常識人であり世界を荒らすつもりなんてさらさらない主人公と、ゲイマーたちの脅威を覚えていて、主人公の扱いに戦々恐々、四苦八苦しつつも、最大限利用しようとするヴァーチャリア世界の人々が織りなす、様々な思惑が渦巻く群像劇ファンタジーです。
現在舞台となっているのはレーマという古代ローマに準拠した国で、当時の政治のあり方、生活習慣にまで踏み込んだ生々しい描写は必見。
古代ローマと聞いてピンと来る方、群像劇が好きな方、政治物が好きな方には特におすすめしたい作品となっています。
個人的にこの作品で最も気に入っている点は、登場人物たち一人ひとりのキャラクターの圧倒的な濃さです。
群像劇だけあって、作中に登場する勢力や個人がどのような信念や思惑を持って行動するかが明確に示されているため、非常に丁寧にキャラクターに対して肉付けがなされています。
特に子供たちの可愛さは必見レベル。権謀術数渦巻く世界ですので、その純粋さが作中における癒やしとなっています。
逆に注意が必要な点は、非常に丁寧な描写がなされている影響で、1000話を突破した今でも作中ではほとんど進んでいない点が挙げられます。主人公が降臨してからまだ1ヶ月しか経っていません。
シナリオ冒頭から登場しているいけ好かない雑魚敵勢力も、未だに猛威を振るっているくらいですので、次から次へと起こるイベントをサクサクと楽しみたい方には向かないかもしれません。
また主人公はチートという言葉が生ぬるいくらいには強大な力を持ちますが、それを振るうことはありません。あくまでその主人公の周りで起こる群像劇を楽しむ作品です。
異世界の者は生きて生活している……。
この作品は「めでたしめでたし」では終わらなかった「あるサーガ」において、召喚された主人公がその後の世界を見つめる物語になっています。
世界の住人たちが、もう一方の主人公として描き出されることで、この世界の文化や習俗を浮き彫りにし厚みのある物語に仕上がっているところが魅力的です。
また、私は「塩野七生」先生の歴史小説のファンでもありまして、この異世界物語におけるレーマは塩野先生の描かれるローマに近いモノを有していると感じます。
主人公が力を振るわない事にイライラする方もいらっしゃるかもしれません。
しかしこの作品の絶妙なバランスは、世の中には努力しても叶わないこともあることを実感し、テンプレに飽きてきた頃に読むのに丁度良い作品だとそう思います。
本作は現実世界からの降臨者により文明が発展した異世界を舞台として、百年ぶりに現れた最強のゲイマーにより世界が揺れ動く様を描いた物語です。
降臨者の恩恵を多分に受けた異世界でしたが、近年はいたずらに戦火を広げるゲイマーたちは排除され、各国は安定した世界を築くために団結していました。
果たして、百年ぶりに現れたゲイマーがもたらすのは平和か、混沌か、それとも別の何かなのか…世界観の描写が細かく、また古代ローマを彷彿とさせる専門用語に溢れており、異世界転移ものが好きな方にも、戦記ものが好きな方にも、もちろんファンタジーが好きな方にもお薦めの作品です。