第7話 リューマンでソロ冒険者始めました?2
平然とした様子で俺の名を呼び座って待つシリル。
思いっきりノリツッコミしてしまったが、これは俺が正しい。
シリルはウォルフで受付嬢をしているか、俺が別の街に行った責任を取って無職になっているかどっちかの可能性しかないのだ。
無職になったならそこの椅子に座った時点で摘まみだされてなければいけないはず。
そもそもここにいるという事はフラン達は一体どうしたというのか。
「シリル、どうして——」
ここにいるのか、と聞こうとして辞める。
そこで俺は思いとどまった。
……いや待て。よく考えたらおかしくないか?
ウォルフからリューマンまで最低でも一週間はかかるはず。
そして俺は護衛をした行商人の馬車に乗って最短の一週間でリューマンに辿り着いた。
もしもシリルがここにいるとしたらそれよりも速くこの街に辿り着く必要があり、更に受付嬢として俺の目の前にいるとしたら遅くとも昨日にはリューマンについていなければ不可能。
つまり、シリルがリューマンにいることは物理的に考えて不可能!
それ即ち、このシリル似の受付嬢は——
「もしかして、ウォルフにいる受付嬢のシリルさんのお姉さんですか?」
それしかありえない。
若干大人っぽく見えるし、よくよく見ればドジっ子のシリルとしっかり者にしか見えないこのお姉さんが同一人物のはずがなかったのだ。
きっと出来の良い姉であるこの人と出がらしとなったシリルの双子の姉妹に違いない。
「え? 何言ってるんですかノエルさん。シリルは私ですよ?」
「へ? ——いやいやいや。俺の知ってるシリルはもっとちょろそうでドジっぽくてアホっぽくてバカっぽい感じで、お姉さんのようにしっかりした雰囲気の人じゃないですって!」
「えへへ、しっかりしているように見えますか? ——って前半ほどんど悪口じゃないですか! あ、でもノエルさんに褒めてもらえるのは凄い嬉しいですね。えへへへっ」
にへら、と笑いながら照れた様子で頭を掻くシリル擬き。
いやでも、その様子に俺は見覚えがありすぎていた。
「おいまさか、本物のシリルなのか?」
「間違えるなんていやだなぁ、ノエルさん。私は貴方が今褒めたお姉さんのようにしっかりした雰囲気のシリルさんですよ」
ま、間違いない! このちょろさ加減……本物だ! 本物のシリルだ!
こんなに調子に乗りやすくて少しでも褒めると異常にウザいくねくね動きを披露して都合の悪いことは一切耳に入ってこないお花畑な人間が二人といるはずがない!
「で、でもどうしてここにいるんだよ! というかウォルフはどうしたんだよ! なんで俺より先にリューマンに付いてるんだよ! お前魔法も使えないしゴブリンにすら勝てないじゃねぇか! というか一番早く着く馬車の護衛って言ってたのにもっと早いやつもあったのかよ! そもそも――」
「ちょちょちょ、ちょっと落ち着いてください! 私がここにいるのは――」
「——私が連れてきたのよ」
俺たちの会話に割り込む声。
「こんにちは、ノエルさん」
聞きなれた、もはや聞きなれ過ぎたと言っても過言ではない声が後ろから聞こえてきた。
恐る恐る後ろを振り向くと、そこにいたのは予想通りの二人組。
「ななな、何でここにいるんだよ! ――フラン! リーシア!」
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