第6話 リューマンでソロ冒険者始めました?
行商人の馬車で移動すること一週間、俺はリューマンに来ていた。
ギルドで馬車の護衛任務を受けたのはかなり久しぶりだったのだが、何度かモンスターが襲って来たのみで特に大きな事件も起きることなくリューマンに辿り着いている。
「という事でここにサインを貰ってもいい?」
「ああ。こんなに格安で護衛助かったぜ。最初は仲間が偽物かって疑って悪かったな」
「俺もこの街に行きたかったから、むしろお金を貰っていいのかって感じだけどね。まぁ疑われるのは慣れてるから仕方ないよ。ほら、この体格だし二つ名負けしてるんだよね」
「あの戦闘見りゃ本物って分かるが、確かに見た目は神速の剣聖ではないな!」
ガハハハッと笑いながら肩を叩いてくる行商人達のリーダーである男。
ギルドカードに書いてある二つ名を見て他の行商人に偽装と疑われたところを説得してくれ、それがきっかけで仲良くなったのだ。
「悪いな、あいつはウォルフに行ったのが初めてだってもんだからよ。まだ若いし目が育ってないんだ。見た目で侮るなっては何回も言ってるんだが……今回の件で懲りただろう」
「そうだと良いね。俺だったから良かったけどもしも他のSランク冒険者だったりしたら大変なことになるから気を付けるように言っておいてね」
Sランク冒険者というものは国でも数少ない、魔王とダンジョンに対抗するための大切な戦力。
もしもその行商人のせいで街を出て行くなんて言い出した時にはもうその行商人はギルドに護衛などの依頼を受けてもらえなくなってしまう。
例え相手がSランク冒険者じゃなくても冒険者にそんな態度を取っていればその人の依頼なんて誰も受けなくなるけどね。
「おう! また暇な時にタートル商会の依頼を見つけたら是非引き受けてくれや! 俺とつながりがある商会にはノエルの特徴を広めておくからよ!」
「それは助かる。じゃあ俺はこのままギルドに向かうから何か依頼があったら指名依頼でも入れてくれ。お返しに、何回か格安で受けてやるよ」
そこで別れて冒険者ギルドへ向かうことにする。
冒険者は拠点を変える時は新たな拠点にする街のギルドで登録しなければいけない。
その申請をしなければ、指名依頼や配達物が前の拠点に届き続けてしまう。
Sランク冒険者の場合は指名依頼も頻繁に届くため、なるべく早くしなければ前の拠点にいる専属受付嬢の仕事を増やし続けることになる。
再送だったり転送だったりね。
「そういえばミリルには悪いことしたなぁ」
ミリルは俺たちの専属受付嬢のこと。
俺たち余り物パーティを担当してくれた少しドジな人で、俺たちが冒険者になった時に新人として受付嬢になっていた。
新人だからと俺たちの担当を押し付けられたのに一生懸命情報を集めたり色々してくれて、今ではSランクパーティの専属という事でかなり出世していたはず。
俺が街から出たせいで大目玉とか食らってなければ良いけど。
「まぁフランとリーシアも残るから大丈夫でしょ」
解散すると言っただけでも仰天されたのに他の街に行くと言った瞬間ミリルは卒倒しかけていた。
フランとリーシアが残ると言ったら何とか納得してくれたけれど、かなりの時間引き留められたのだ。
当然のことながら、Sランクパーティが複数同じ街にいるはずもなく、ウォルフの街には俺たちしかSランク冒険者は居なかったからね。
必死の形相からは街としても個人としても何としても引き止めたいという強い意志を感じた。
「それにしてもさすがダンジョン都市と言われるだけある。ギルドが大きいなぁ」
一度だけSランク冒険者になったことによる表彰式みたいなもので王都に行ったことがあるけれど、そこの冒険者ギルドと同じくらい大きい。
ここに来るまでにすれ違った冒険者も多かったし、冒険者の数自体はかなり多いのだろう。
レベルはピンからキリまでいるようだけど、それでもSランク冒険者がいるという話を聞いたことはない。
とりあえず拠点変更の手続きのために冒険者ギルドに入ることにした。
「あっ、おかえりなさい。ノエルさん」
「ミリルただいま――って何でここにいるんだよ!?」
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