第2話 パーティ抜けます2

「急にどうしたのですか?」

「そうよ。何か気に入らないことでもあったの?」

 

 不思議そうな顔で二人が聞いてくる。

 それもそうだろう。

 これまで俺たちは必要道具の整備、購入から金銭の分配まで職業も年齢も性別も関係なく三等分してきた。

 連携や信頼関係も最高と言っていいほどだし、基本的には不満など生まれるはずもない。

 そう、基本的には。

 

「少し思うことがあってね。このダンジョンをクリアしたら抜けようって決めてたんだ」

「そんな急に言われても、次に入るパーティの当てはあるの?」

「いや、まぁそれはそのうち見つかると思うし……」

 

 あはは、と頬を掻きながら答えると、フランの視線が俺を上から下までゆっくりと観察するように動き、それから言った。

 

「ノエルの体格だと無理だと思う」

「うぐっ」

 

 フランがバッサリと切り捨てる。

 

「ノエルさんの速度重視の剣術についてこれるのは私達位だと思うのですが……」

「ぐふっ」

 

 リーシアがド正論をぶつけてきた。

 冒険者になってから今日までずっと組んできたパーティだ。これ以上の連携を取れるところなんて探しても見つからないのは分かり切っている。

 フランとリーシアは実力もあるし容姿もいい。もしもフリーにでもなればどこのパーティからも引っ張りだこだろう。

 だけど問題なのは俺。言ってしまえば俺の身体は小さくて剣術に向いていない。

 冒険者になりたての頃は平均より少しだけ足りない位だった身長が、四年経った今も一切変化なし。声も変わらず高いまま。

 少女だった二人は見事に女性として成長したのに俺の見た目は少年のまま。

 素行の悪い冒険者に絡まれるのも俺、高難易度ダンジョンの入り口で止められるのも俺、そして何故かナンパされるのも俺。

 いや、まぁ体格が少女に近いことは自覚しているけれど、ナンパはないだろナンパは。一人称は俺だし口もそこまでよくないしさ。

 

「でもほら、俺も結構有名になってきたしどこかから声がかかるかもしれないじゃん!?」


 可能性はゼロでは無いはず。

 そう思って発した言葉。

 

「無理ね」

「ノエルさんの戦闘を見たことがある人なら誰も誘わないと思います」

 

 辛辣な答えが返ってきた。

 自覚はあったけれど言われたら言われたでグサッとくる。

 

「そもそも思うところって何なの? 直せることなら直すよ」

「私も直しますよ。私もノエルさんとパーティを組んでいたいですし……」

 

 その提案はとても嬉しいけれど、無理なことは分かり切っている。

 正直に言えば、一つだけ不満があった。

 最初は気にしないようにしていたけれど、周りからも言われるようになり抜けようと決心した。

 だけど、そう言うならばと一応言ってみる。


「じゃあさ、いつもしてるそれ、辞めてくれる?」

「「え? 何を?」」

 

 俺が指さすと、二人は同時に後ろを振り向き、そして不思議そうな顔で首を傾げた。

 コントかよ。うん、知ってた。——じゃなくて。

 

「だから——隙あらば二人で抱き着いたりしていちゃいちゃするの辞めてもらえますか!?」

「「どこが?」」

 

 フランとリーシアは、二人で抱き合いながら同時に首を傾げた。

 え、何それ無意識なの?

 

「もしかしてお気づきでない?」

 

 仲間がバラバラになる原因はどこの時代でも、痴情の縺れが最も多い。

 例えそれが百合であっても。

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