女賢者と聖女が絶対にできているからとパーティを抜けた剣聖な俺は何故か二人に追いかけられる 〜魔王討伐報酬で俺を女にするって何!?〜

角ウサギ

第1話 パーティ抜けます

 ダンジョンの最深部で魔王であるトロールと向き合う三人の冒険者。

 一人は小柄な少年のような、いや、服を脱ぐまでは少女な剣士。

 もう一人は紅いローブを纏った魔導士の女性。

 そして最後の一人は修道服を纏った女性。

 

「リーシアは俺に支援魔法を! フランはトロールに攻撃魔法を撃って足止めをしてくれ!」

「分かりました!」

「了解! ノエルは!?」

「俺は——決着を付ける」

 

 そう言って俺は限界まで息を吐き、魔力を集中させる。

 雑音が消え、雑念が消え、意識が深く深く沈んでいく。

 魔力が高まり、リーシアからの支援魔法によって能力値が一気に上昇する。

 さすが聖女の支援魔法。これ一つあるか無いかで能力値が文字通り段違いだ。

 集中力が最大限まで高まり、敵と仲間しか意識上に存在しなくなった世界で目に入ったのはフランの目の前に迫るトロールの姿。

 このままではフランがトロールの攻撃を受けてしまう。

 いくらフランが賢者といえど魔法使いは防御力が低い。受けてしまったら一溜まりもないだろう。

 だけどそこには焦りも恐怖も一切感じられなかった。それは、俺に対する信頼の証。

 フランが俺にアイコンタクトを送り俺が頷く。

 

「【エクスプロージョン】! やっちゃえ、ノエル!」

「ナイスアシスト! はああああっ!」

 

 俺の振るった剣は見事にトロールを切り裂き、トロールは光の粒子へと姿を変える。

 トロールの姿が消えると同時に豪華な宝飾がされた宝箱が出現した。

 宝箱が現れる、それ即ちダンジョンクリアの証。

 

「やりましたね!」

「いえーい!」

 

 全員でハイタッチをしてから宝箱の回収は二人に任せ、俺は一人で魔王が倒されたことによって開かれた奥の部屋へと進む。

 この先にあるこのダンジョンの核を壊すのだ。

 壊す理由は主に二つ。一つ目は壊さなければいつかダンジョンが復活してしまうから。

 ただでさえダンジョンの発生件数は増えているというのにわざわざ復活の余地を与える意味がない。

 二つ目の理由は——

 

『レベルⅤダンジョンの核の破壊が確認されました。ノエル、リーシア、フランに感謝を。古の契約に従い願いを何でも一つ叶えましょう』

 

 核を壊せば女神様が現れ、どんな願いでも叶えてくれるからだ。

 もちろん、何でもとは言うものの叶えてもらえる願いには限度がある。と言っても、破壊したダンジョンの核のレベルが上がれば上がる程叶えてもらえる願いの幅も広がるからその限度はダンジョン次第。

 叶えてもらえる範囲で最大限の願いを叶えたいと考えるのが当たり前だろう。

 今回破壊した核はレベルⅤ。

 今までで何度も攻略したことがあるレベルだけにどれほどの願いが叶えてもらえるのかは把握しているため、どのような願いにするかは既に決めていた。

 

「俺たち三人の能力値をそれぞれ職業に適した形で上げてください!」

『その願い、叶えましょう』

「ありがとうございます!」


 女神様が消えると同時に力が溢れてくる。

 冒険者はこうして力を得てより高難易度なダンジョンを攻略するという事を繰り返し、自らの願いが叶うレベルのダンジョンを攻略することを目指すのだ。

 目指すダンジョンはレベルⅩ。現れることすら滅多にないそのダンジョンの核を壊せばどんな願いでも叶えてもらえると言われている。

 目的も果たしたことだし、先ほどの部屋へ戻る。

 そして、俺はリーシアとフランに話しかけた。

 

「ねえ二人とも」


 こちらを振り向き首を傾げる二人。


「ノエルさん、どうしましたか?」

「どうしたの? ノエル」


 そんな二人に俺は——


「俺は今日でこのパーティを抜けようと思う」


 そう告げた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る