第2話

その後数年間なにもなかったのですが、ある日学校から帰るとクロがあのときのように玄関奥に座って外をじっと見つめていました。

私に反応しないのも同じでした。

私は急いで父と母を呼びに畑に走りました。

畑仕事をしている両親に伝えると二人は顔を見合わせ、そして小走りで家に向かいました。

私も二人について行きました。

家に着くといました。

玄関奥にクロが。

でもクロは座って外を見つめているわけではなく、廊下にだらしなく寝転がっていました。

クロは私たちを見ると、にゃあと一声鳴きました。

そしてそのまま静かに息をひきとったのです。



その後、クロが死んでから今はもう十年にもなりますが、私たち家族四人は皆元気に過ごしています。

でも今でも時々思うのです。

もしあのときクロが死んでいなかったら、私たち家族のうちの誰かが死んでいたのではないかと。



       終

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見守る猫 ツヨシ @kunkunkonkon

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