見守る猫

ツヨシ

第1話

私の家は田舎にあり、父と母は専業農家でした。

それ以外には祖父と祖母、そして妹と猫のクロがおりました。

その名のとおり真っ黒い猫でした。

私が九歳だったある日、学校から帰った私はクロが玄関奥の廊下に座り、じっと玄関のほうを見ているのを見ました。

なにを見ているのかはわかりませんが微動だにせず、一点を見つめているのです。

私は声をかけ少し触ったりもしましたが、クロは全く反応しませんでした。

活発で人の動きをすぐに感じ取るクロのそんな姿を、私は初めて見ました。

私にはクロが、外から家に向かってくるなにかを見ているように思えました。

やがて妹が帰ってきて、父と母が畑仕事から帰ってきても、クロはそのままでした。

そしてその夜、祖父が死にました。

確かに年齢的な問題で体は弱っていましたが、病院とか入院の必要もなかったくらいなので、誰も死ぬとは思っていませんでした。



祖父が死んで一年ほど過ぎたある日のこと。

私が学校から帰るとまたクロが玄関奥に座って外を、一点をじっと見つめていました。

手で軽く押しても、まるで私などいないかのようにそのままでした。

私にはやはり外から来るなにかを見ているように思えました。

その夜、祖母が亡くなりました。

死因は心の臓の急激な停止とのことでした。

「心臓が悪いなんて、息子の俺でも聞いたことがなかったのに」

父がそう言い、母も同意しました。

そのまま葬儀となり、全てが終わってすこし落ち着いたころ、父がクロを険しい目で見ていることに私は気付きました。

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