第3話 デモンストレーションしました
俺が寮に帰ると寮の管理人が、入口で待っていた。
昨日までの部屋は、入試前の仮の部屋で仮のものだという。
彼は、俺の名前を尋ね、部屋割表を見る。
探し出した、俺の名前を指さし言った。
「自分で行けますか?」
「はい、大丈夫です」
学園の寮は、2人部屋だった。
俺が指定された部屋に着くと、すでに同室の者はそこに居た。
「やあ、君が同室のシルトバーム君かい」
「はい、シルトと呼んでください」
「僕は、トリガレオム・ラグアーク、トリムと呼んで」
同じBクラスなので一応名乗ったはずなのだが、憶えていなかった。
トリムは、モラード西諸国連合からきたという。
諸国連合の中央、シレミン湖の東にタマルという小国がある。
彼はそのタマルの首都リグラ出身らしい。
右足が悪いらしく、びっこを引いていた。
5歳のとき魔物に襲われ、膝から下を無くしたそうだ。
「もし足が悪くなければ、攻撃魔法で試験を受けていた」
と、彼は言った。
学園2日目の朝。
ホームルームが終わって、最初の授業は、「魔法原理学」だった。
このとき、俺は思い知ったのだった。
座学をすべて選択したのは、大きな間違いだったのだ。
まず、ほとんどが既知の事柄だった。
それは、まだいい。
俺に必要の無い内容は困る。
例えば、「魔法詠唱」に関するものなど。
試験に落第したくないので暗記するしかないか。
もっと、困るのが間違った内容が多いのだ。
これは、指摘しておかなければならない。
試験で、間違った内容を回答するなど言語道断だ。
何度も指摘して、教員に冷や汗をかかせることになった。
指摘するたびに、Aクラスの数名が俺をにらんでいた。
これへの対策は、すぐに打つことにした。
俺に喧嘩売るなど、馬鹿なことをさせないためだ。
その授業が終わった後、俺はAクラスの連中に言った。
「Aクラスの諸君、僕が攻撃魔法を使えないと思っているだろう。
それは、大きな間違いだ。
放課後、僕の実力を見せておく。
腕に自信のある者は、放課後、学校のグラウンドに集まってくれ」
放課後、Aクラスの生徒だけでなく、騎士科の生徒も集まっていた。
教員さえいる。
Aクラスの生徒達は、かなりの敵意を俺に向けている。
その中から魔力の強そうな5名を選び、俺を囲ませた。
「得意な魔法で僕を攻撃して。遠慮はいらないよ」
「ふん、後悔するなよ」
などと言う割に怖いのだろう、弱めの魔法で攻撃してきた。
打った魔法は、俺に当たってすべて消えた。
ように見えたはずだ。
実際は、俺が魔力に変換しただけなのだが。
仙術の応用で「出来るのでは」と練習しておいたのだ。
母の最大級魔法でも、可能なほどになっているのだ。
彼らの魔法などなんともない。
「おい、どうした。そんなんで最大出力か?」
煽ってやると、少しはまともな魔法が来るが、結果は同じ。
しばらく相手してやったら、皆魔力切れになってしまった。
へとへとになって、座り込んでしまった彼らにいう。
「さあ、次のイベントだ。魔法の修練場にゆくよ」
修練場には、練習用の標的が5本立てられていた。
みんなが集まったところで、中央の標的に向かって右手を差し出す。
「これが僕の最小出力の魔法だからね」
使った魔法は、同時に5種類。
「ファイヤーボール」
「サンダー」
「ウインドカッター」
「アイスニードル」
「ダークショット」
皆に見えるように「クイック」は付与していない。
当然無詠唱だ。
唖然としている、見物人に俺はいう。
「言っておくけど、僕は、剣も使えるからね。
それに、手加減が苦手なんだ。
死にたくなかったら、喧嘩なんか売らないでね」
ほとんどの者が、必死な顔で頷いている。
同郷の4人だけが、ニヤニヤ顔でこちらを見ていた。
勇者と魔王、同じ体に転生しました 飛個呂 @piccoro
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