第13話洋服を買いに。
夏が終わり、秋がもうやって来ようとしていた。
昼間はまだ暑いが、朝と夜は少し冷え込むようになった。兄弟二人は今日も元気に食堂の準備を始めた。
「兄さん」
「なんだー?ローイ。」
「カレー以外の料理を何か出そうってずっと話してるけど結局何も出せずにいるよね笑。前にほうれん草のクリームシチューパイを考えてたけどメニューには加えなかったしね。食堂だからやっぱり定食とかかな?どう思う兄さん。」
「うーん。」
ローザーはタバコに火をつけながら答えた。
「定食かあ。なんか地味だな笑。もっとこうなんかガッツリ食べれるのがいいと思うんだよな。どんぶり物とか?うーん。悩むな。」
二人で話しているうちに開店時間を過ぎていた。
今日も食堂自慢のカレーを振る舞う。
カレーは甘口と辛口。具はシンプルな人参とじゃがいもと鶏もも肉と玉ねぎだ。
味付けはスパイスからこだわっており、兄弟オリジナルのレシピだ。
朝は9時から開店して夜は22時に閉店する。
もう昼過ぎだというのに、お客さんは全く来ない。
店内の掃除をしていたら、どこかからか結婚式場の鐘の音が鳴った。
「誰か結婚式あげたんだな。いいなあ。俺も早く結婚したいぜ。ローイは今彼女いるんだったよな。俺もいるけど、なかなかそういう話にならなくて、もう年齢的にも結婚適齢期だけど大丈夫かな笑。子供も欲しいしなあ。ローイは結婚したいとかそういう話は彼女とするのか?」
「僕は結婚はまだいいかな。彼女が仕事忙しくて、なかなかね。お互い結婚早く出来たら、食堂のお店もお嫁さんにお手伝いしてもらえるのにね。兄さんは煙草吸うのによく彼女出来たよね笑。煙草吸う男性を好む女性はあまりいないのにね。」
ローザーはタバコを吸いながらギクッとして
「お前なあ。別にそんなのいいだろうがよ。俺みたいに煙草を吸う男を好きな女もいるんだよ。人によるだろうが。てか、お客さん今日は全然来ねえな。もうすぐ雨が降りそうだからか?」
ローイは食堂の窓の外を見上げて、急いで洗濯物を取り込んだ。
「兄さん。雨が降りそうなら洗濯物取り込んでおいてよね。僕全然気づかなかったよ。そうだ。兄さん、今日は早めに食堂を閉めて、ちょっと買い物に行こうよ。買いたいものがあるんだ。」
「うん?買いたいもの?いいぜ。何買いたいんだ?」
「それはお店に行ってからのお楽しみ。」
ローザーは少し困った顔をして
「ちぇー。早く教えてくれてもいいじゃん。そんな勿体ぶるなよ。」
「よし、じゃあもうお店を閉めて着替えて買い物行こう。」
「そうだな。そんなに買いたいものがあるなら早く行こうぜ。でもそんなお金ないからな。高い物はあまり買うなよ。」
「うん。分かってるよ。」
二人は食堂を閉めて着替えて、外に出た。
雨が降りそうなので傘を持っていくことにした。
「なあ、ローイ。一体どこの店に行くんだよ。さっさと教えろよ。」
ローイはニコニコしながら
「そうだね。そろそろ教えるよ。正解は、洋服だよ。安い物なら買ってもいいでしょ?兄さんも洋服買えばいいよ。彼女と次会ってデートして行く洋服持ってないじゃん。」
ローザーは少し乗り気じゃなさそうにして
「えー。洋服かよ。そんなの今持ってるので十分だろ。そんなにオシャレしたいのか?別にそんな大切な記念日でもないのに。ま、気晴らしに1着かってもいいけどな。」
「うーん。そうなんだけど、僕洋服好きだからさ。今持ってるのが飽きちゃって笑。」
「そうなのか。どんな洋服欲しいんだ?」
ローイは少し考えて
「うーん。セーター欲しい。もうそろそろ衣替えの季節だし、もうお店にも売ってるはずだよ。
淡い青色のセーターが欲しいんだ。」
「それ着て彼女とデートするのか?セーターかあ。おれはあまりセーターは着ないな。どっちかというとパーカーとかが多いな。」
「パーカーもいいじゃん。兄さん今日はパーカー買ったら?」
「そうだな。新しいパーカー着てデートでも行こうかな。」
「よし、それで決まり。店はこの町で一番大きい洋服屋に行こうか。そこだと色んな種類のセーターやパーカー売ってるし。」
「そうだな。ここから近いしな。ささっと行って帰ってこようぜ。」
「うん。」
二人は早足で洋服屋へ行った。店には色んな今時の洋服が売られており高価な物から安価な物まで色々あった。
それぞれお目当ての洋服を買えたので家に帰った。
「兄さん、似合ってるよ。それいいじゃん。
そのデザインが兄さんらしくて良いね。彼女もきっと気に入ってくれるよ。」
「お?そうか?ありがとな。意外と安くても良いの沢山あったしな。選ぶの迷ったけど直感でこれにしたんだ。俺は黒が好きだから、よく黒の服を着るけど今日は俺もローイが欲しがってた色の青にしてみた。たまには青もいいな。」
「うん。黒ばかりは飽きるしね。僕は色んな色の服を着るのが好きだけど、特に好きなのは青だよ。このセーターもいい感じでしょ?これからの季節活躍しそう。」
「そうだな。よし、服も買えたことだし、もう寝るか。ご飯はさっき、ささっと洋服売り場の下の階で買って食べたしな。」
「そうだね、兄さん。もう寝ようか。雨、結局降らなかったね。明日このセーター着て仕事しようかな。」
「ばかっ、おまえ。カレーついたらどうすんだよ。着るのはデート行く時だけにしとけよ。」
「そうだね、兄さん。僕もう寝るね。おやすみ兄さん。」
「ああ、おやすみ。」
二人はベッドに入り横になった。電気を消して、静かに眠りについた。
今日はお客さん来なかったけど、明日は来るといいなと思いながら寝る2人であった。
町の片隅の食堂屋さん るる @yuimiki
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