第12話 大きな夏祭り

今年も夏が来た。肌に突き刺さるような太陽の日差しと、むわんとした熱気で毎日汗だくになりながら今日も兄弟二人は開店準備を始めた。

「兄さん、今日は待ちに待った夏祭りだね。今日限定の特別メニューを何か出そうよ!」

「そうだな。何がいいかな?うーん、夏だからやっぱりカキ氷か?」

「えー、それだと他の店と同じだよ。何か違うものを出してみようよ!」

ローザーはタバコを手に取り、火をつけた。

「こういう悩んでる時は、やっぱりタバコだな。吸いながら考えるとアイディアが浮かんでくるんだ。うーん、、、。」

「そう言いながらもアイディア浮かばないじゃん笑 カキ氷とかの冷たいデザートにしようよ。

何がいいかなあ?うーん、、、。」

やはり兄弟似たもの同士。なにもアイディアが浮かばない。考えていたら開店時間を少し過ぎていた。

いつもの定番メニューのカレーの辛口と甘口は

すでに準備していた。

「あ、兄さん。もう開店時間過ぎてる!」

「うわ、やべ。早くデザート考えなきゃな!」

「うん。でも、いつも通りの僕達のメニューでいいんじゃないかな。僕達自慢のカレーで。」

ローザーは一瞬考えたが

「そうだな。俺達自慢のカレーで今年の夏祭りはお客さんを喜ばせよう!夏祭りで人が多いから

呼び込めば、お客さんも来ると思うぜ!」

「そうだね!兄さん。あ、お客さん来た!」

お客さんがカップルでやって来た。

「この町にこんな食堂あったんだね。あ、カレー辛口2つお願いします。」

ローザーはカレーの準備をし始めた。ローイは接客に回る。

「僕達、最近この町に来て食堂をしています。前住んでた町で、ずっと食堂をしてきて、いつかは大きな町で食堂をしたいとずっと計画していました。それでやっと夢が叶ったんです。」

お客さんは、うんうんと頷きながら

「そうだったんだね君達。これからも頑張ってくれ。応援しているよ!」

「ありがとうございます!頑張ります!」

「おーい。ローイ。カレー出来てるぞ!ほら!持ってけ!」

「はーい!兄さん!」

ローイはカレーを運んで、お客さんに出した。

お客さんは、楽しそうに会話をしながらカレーを食べていた。

すると、他のお客さんも次々とやって来て

店は大繁盛となった。

「兄さん、今日は初めての大繁盛だね!とても嬉しいよ。いつも、こうだったらいいのにな。」

ローイが少ししょんぼりしているとローザーがローイの肩を叩いて

「ほら!そんなしょんぼりしてる暇ないぞ!さあ、カレーを持ってってくれ!」

ローイはニコッと笑ってカレーを受け取り

お客さんに出していった。


あっという間に夏祭りは終わり、店を閉めた。

カレーは全部売り切れた。カレーが売り切れたのは初めての事だったので、二人でとても喜んだ。

ローザーがタバコに火をつけると、ぽつりとこんな事を口にした。

「俺達さあ。いつまでこの食堂屋をやっていけるだろうか。死ぬまで出来るだろうか。不安は沢山あるんだ。でも、俺達は食堂屋をずっとしてきたから、これを辞めたら、俺達は食ってけないだろう。だから、」

とローザーが話をしている途中でローイが

「何言ってるの、兄さん。そんな弱気じゃ何も出来ないよ。僕達でずっと頑張るって決めたことじゃないか。死ぬまでやるよ。絶対に。」

ローザーがビックリして目をまん丸にしていた。

「お前がそんな、強気だなんてな。わりぃわりぃ。よし。そしたら俺達二人で死ぬまで頑張ろうぜ!」

ローイは笑顔になって

「うん!それでこそ、僕達だよ!これからもよろしくね兄さん。」

「ああ。よろしくな!」

二人は朝まで語り明かして、一睡もしなかった。

ローザーが開店準備を始めているとローイはフラフラしながらローザーに

「兄さん、眠くないの?僕めちゃくちゃ眠たくて死にそう笑」

するとローザーは大笑いして

「あはは。1日寝ないだけで、そんなフラフラになるのか笑俺は全然大丈夫だぜ。ローイは少し横になっとけよ。今日はお客さんも少ないだろうし、俺が店番しとくから。」

ローイは眠たい目を擦りながら

「ごめんね、兄さん。少しだけ横になったら

大丈夫だから、そしたら僕も店番するよ。」

「分かった。それじゃ、おやすみ。」

「うん。兄さん、あまり無理しないでね。少しは休んでね。おやすみなさい。」

ローイは横になって休んだ。ローザーは、たまに来るお客さんに接客し、少し雑談をしながら過ごしていた。

今日は夏祭りだったが、沢山のお客さんに自分達自慢のカレーを振る舞う事が出来て本当に幸せだったと思いながら過ごす二人であった。

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