第4話 博士のロボットが歩む道

 幼稚園での最終試験が合格となり、そこからちょうど1ヶ月。教育ロボットは、実用化の準備に向け大忙しであった。博士はパソコンにかじりつきの毎日。そんななか、博士は時々、息抜きを兼ねて、ある映像を見返す。それは、ロボットとお話が出来た、と喜ぶ園児達の映像だ。

 園児達の理不尽な答えに「ズルイ」「オモシロイ」「ツマラナイ」など、子供達と同じ簡単な言葉で応えさせ、新たに取り付けた小型モニターに、喜怒哀楽を描いた簡単なイラストを映し出す。


「ねえねえ! もっとお話しよ!」「次は僕が話す番だよ! 早く変わって!」「わあ~ん! 次は私がお話しようと思ってたのにッ‼」


 子供達が楽しそうに騒ぎ立てたり、泣きだす声が流れ、博士の耳に心地よく届く。  

 博士はつい笑ってしまう。ただ簡単な言葉と、感情表現をプログラミングしただけのもの。だが世間では、人の言葉を理解し感情を持ったロボットとして大騒ぎしている。

 これから先、博士の発明した教育ロボットは世界各国で有名になり、大きな活躍をする事となる。そしてロボットに新たな一面、パートナーというものを生み出した父として、讃えられるようになるのだが、それはまだまだ先の話。

今、ロボット実用化の準備に忙しい博士に知る由もない。


「ああッ! 落書きしてる!」「ずるい私も!」 


「ふっ」


 博士は口元を緩めながら、パソコンの映像をストップさせた。博士は、幼稚園から無事に帰還したロボット達のとある一体に、目を向ける。赤、黄、緑などカラフルな色のクレヨンで書かれた同じ名前。


「まったく、落書きなどしおって」


 博士は苦笑する。そして、自分と同じ名前を持つロボットを嬉しそうに見つめ、優しく呟いた。


「これからもよろしくな。アンドロイド」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ロボット @myosisann

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ