第2話 教育ロボット対園児達
「ねえねえッ‼ これは、何でしょう!」
「ソレハ、カエデノキノエダ、デス」
「ぶっぶう~! 違うのッ! これは魔法の杖です!」
こ、今度は、ま、魔法の、杖ときたか。
博士はぼさぼさの頭を掻きむしり苛立ちをあらわにした。
博士は今、自身が運営するロボット研究所で、とある映像を確認していた。ロボットが幼稚園での活動を記録した映像である。博士は顔をしかめながら、映像の続きを見る。
「ソ、ソレハ、カエデノエダ、デス」
「違うのッ‼ ほらこう振ったら火が出ます」
「ソ、ソレハ、ショクブツ。ヒハ、デナイ」
「火が出るのッ‼‼ 出るったら出るの!」
「キノエダ、カラ、ヒ、ヒハ、デナイ―、ピー――ッ‼‼ ガガガッ⁉⁉」
フッと、ロウソクの火を吹き消すかのように、プロジェクターから映し出されていた映像が途切れた。
「あはははッ! またボンッ! てちっちゃい火が出た~! 煙吹いた~‼」「先生! ロボットまた壊れたよ!」「わあ~ん! 次は私がお話しようと思ってたのにッ‼」
音声から、園児達が楽しそうに騒ぎ立てたり、泣きだす声が流れ、博士の耳に痛いほど届く。
博士は項垂れながらもパソコンに向かい、教育ロボットのメモリーに新たな知識を書き加えた。
楓の木の枝は魔法の杖と言われる事もある。
幼稚園での試験運用が上手くいかず、気付けば1ヶ月。このような日々を過ごしていた。齢60の目元にはくまができている。博士の研究室には返品された故障ロボット達が列をなしていた。故障させられては、新たな知識をメモリーにインプットする、その繰り返し。子供達の戯言を蓄積させる日々に、博士は嫌気がさしていたが、実用化のためには仕方がなかった。あともう一息なのだ、ん?
パソコン画面に1通のメールが表示された。英国幼稚園協会からだった。
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