仕事もせずに引き篭もってゲームをしていたら、留守宅と勘違いされて泥棒に入られてしまった人のお話。
シンプルながら鋭い切れ味の、ホラーあるいは現代ドラマです。ジャンル通りミステリでもありますが、いわゆる謎解きや推理もの的な意味でのそれではありません。個人的にはホラー感が強いというか、ホラーだったらいいなと読後に思いました。終盤のこう、なんだかゾッとするような重たい怖さが印象的だったので。
ピンチから始まり、手に汗握る場面の続く前半から、一転して落ち着いた雰囲気の後半へ。動きの多かったはずの前半が溜めとして効いて、静かな後半の方がどうしてか怒涛の展開に見えるという、あるいはそう見えるほどのその『内容』が好きです。主人公の抱えているもの、文章越しに吐き出されるもの。お話そのものが浮き彫りにせんとする主題の部分がとても強く、かつ大胆に切り込んでくる感じがたまりません。一番大事な芯の部分を、真っ直ぐ叩きつけられるような感覚。「これは何の物語なのか」という問いがはっきりしているお話は、やはりそれだけで魅力的なものだと思います。