146話 続スキル確認
思いがけず前世の古傷を抉られたものの、前向きに考える。
ゲーム的に考えれば、長所を伸ばすのはキャラビルドのセオリーだ。
短所に振っていたSPを効率的に使えるようになったと考えよう。
ひとまず新スキルを見ていこう。
<<デュラハナイズ>>
<<無生物一つを対象とする。対象を素材として自らの鎧を再構築する。素材によって術者のレベル、および耐性スキルレベルが変動する>>
「レベル耐性、スキルレベルが変動するのか。骨鎧状態のスキル、メモっとけばよかった」
「骨のときより1レベル上がってたよマスター」
レベル変動については、ゼノンがチラっと言っていた気がする。
耐性レベルも変わるなら火や聖に強い素材が見つかればありがたい。
目下のところ、もっとも検証が必要であり、デュラハンというモンスターの核になるスキルだと考える。
<<魔族の誓約>>
<<一度だけ実行可能。任意のスキルを永久に無効化し、そのスキルのレベルに応じて別のスキルを大幅に強化する>>
<<代償となるスキルは複数かつ、強化できるスキルは一つのみ>>
ややこしいスキルが出てきた。
ドクンちゃんに確認したところ、魔族が共通でもつスキルとのこと。
望む数のスキルを永久に手放す代わりに、望むスキルを一つだけ大幅に強化できると。
ただしユニークスキルは強化できない。
「長所を伸ばすのが無難かと思いきや、逆に聖耐性とか火耐性につぎ込んだら無敵にならない?」
「残念だけど弱点属性への耐性は絶望的に苦手だから、1レベル上がるのがやっとだと思うわよ」
残念。
このスキルもデュラハナイズと並んで重要なスキルだ。
”一度だけ実行可能”という文言が示すように、スキルの無効化は不可逆で、失敗したからといってやり直せない。
慎重に選ばなくては……ということで実行は保留。
<<武芸熟達>>
<<武術系および一部の体術スキルレベルは常にレベル2分の加算補正を受ける>>
ゲーム的にはよく見るやつ。
他スキルに下駄を履かせるタイプのスキルだな。
問題は”武術系および一部の体術スキル”とは何を指すかということだけど、それは直ぐにわかった。
『武芸熟達』に意識を集中すると、なんとなく対象スキルが感じ取れたのだ。
便利な世界である。
それによると対象は剣術や槍術など武器を使うものから、体術や格闘術、運搬術や登攀術、果ては舞踏術や裁縫術(針を使うから?)まで幅広い。
俺はすでに剣術と体術を持っており、これらのレベルは実質的にレベル2上がっている。
未取得のスキルについてもレベル2として扱えるらしい。
……今さらな疑問がある。
「ちなみにスキルレベル2ってどれくらいすごいの? あとスキルレベルの上限はいくつ?」
「んー……アタシの体感だと、スキルレベル1は見習い、レベル2は熟練、レベル3は専門家、レベル4は導師、レベル5で達人ってかんじ。レベル5が上限で、MASTERって表記になるよ」
なるほど。
となると、そのへんで拾った武器でも熟練レベルの動きができると考えると強いんじゃないか、武芸熟達。
更に素でレベル3の武術なら上限レベルに到達できると。
つまり俺の剣術レベルは達人級になったわけだ。
「待てよ、素でレベル4の武術が武芸熟達で加算されるとどうなるんだろ」
「スキルによってはMASTERレベルのまま、効果が強まるのもあるよ。武術に関してはアタシ詳しくないから知らないけど」
MASTERレベルの中でも差がある、か。
たしかに、今の俺とゼノンの剣術レベルが同等とは思えない。
アイツには根本的な何かで及ばない気がするのだ。
さて次はユニークじゃないスキル群を見ていく。
<<属性剣Lv3>>
<<一定時間、武具の作用部に任意の属性を付与する。付与される属性の強さは術者の属性的資質に準じる>>
マン爺戦で使ってみたスキルその1だな。
スキル名に剣がついているけれども、武芸熟達の対象じゃない。
「なじみがあるから氷属性を選んでみたけど、ひょっとして敵にあわせて使いわけるのが正しい使いかたなんかね」
「理想はそうなんじゃない? でも複数の属性的資質を持つ人は超レアだから、結局ひとつに特化することになると思うよ」
ドクンちゃん曰く”術者の属性的資質”は生まれや習慣によって変わるとのこと。
また魔族は聖と火の資質がないので、属性剣で纏うことはできない。
「俺の”属性的資質”はどうやったら分かるかな? 水見式?」
ワクワクする俺である。
なろう主人公的には……”無属性”かな。
『こいつ全然資質ないぜ!』『雑魚が』からの『失われたはずの無属性の使い手だと』『馬鹿な!?』『抱いて』みたいな流れね。
ふふ……
「残念だけどマスターは芸術家属性よ」
「チクショウ!」
芸術家への風評被害になるのでキチンと聞こう。
曰く、モンスターの属性的資質は種別で完全に決まる。
稀に生まれた場所の影響で、例外的に資質を獲得することもあるらしいけど……。
「っていうのは半分冗談。氷属性を選んだのは正解だと思うよ。ドラウグルを経験したり、その剣を使いこんだりで冷気が体に馴染んでるでしょ?」
「そう、なのかな」
闇魔法を補助的に撃っていただけだから、他の属性の使い心地はわからない。
属性剣の運用について《同士|デュラハン》から知見を共有してもらいたい次第である。
唯一の同士がデンジャーすぎて不可能なんだけども。
「そういえば、スキルのとりかたについても同じよ。例えば普通のゴブリンは生命力や狩猟能力を高めるスキルを率先して取るでしょうね。でも洞窟に住むゴブリンなら暗視や聴覚強化をとるかもしれない。水辺なら泳ぎ系とか水耐性とかね」
「適者生存ってやつだな。ちなみにホルンはどういうスキル取ってんの?」
「貴様を消す方法」
聖魔法のことでしょうね。
こちらを見ずに言い放った不機嫌聖獣が怖い。
俺のことを目障りなイルカかなんかだと思っているようだ。
脱線したけど次のスキルへ行こう。
<<対抗魔撃Lv3>>
<<武具の作用部に『魔術:対抗呪文』を付与する。効果強度は、付与される武具に対応する武術系スキルレベルに準じる>>
ディスペルストライク。
斬ると魔法を消せる剣技だ。
強力なだけあってタイミングがシビア。
要練習だ。
「”作用部”とはハンマーなら頭、ナイフなら刃、矢なら矢じりのことじゃな」
暇を持て余したギリムが入ってきた。
ギリムも同じ発動方法で火属性を付与するスキルを持っているらしい。
鍛冶で使うんだとか。
「俺の場合はアイスブランドに剣術レベル3の強さでかかる、と」
「ううん、先にユニークスキルが解決されるから、剣術レベル5の強さになるよ」
なるほど。
マン爺のテレキネシスを打ち消したとき、かなり危なかったのはスキルレベルが低かったんじゃなくて、俺が下手だっただけか。
ゼノンはスパスパ斬ってたもんな。
「新しく増えたのはこれくらいで、あとは耐性が概ね上昇ってかんじだな」
相変わらず火と聖には弱い。
聖に至っては逆MASTERである。
しかし状態異常は軒並みM=MASTER、つまり無敵!
「耐性高めて魔術事ぶった切りかあ……脳筋極まってきたな!」
「属性とか状態異常に特化したモンスターは、たまに耐性貫通スキル使ってくるから油断しちゃダメ」
「ちぇっ」
ようやくスキルの確認が終わったところで、俺とホルンは気がついた。
冷たい泥が、静かに震え始めたことに。
転生したのに死にました~アイテムボックスに追放された俺は最強アンデッドになって華麗に脱出したい~ 備前島 @BIZENJIMA
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