第1話 俺の神様

 玄関先で少年はワンッと鳴いた。

「ほら!!!!!ワンって鳴いたよお姉ちゃん!」

 ワンと鳴く、それ即ち犬である。

 盲目の少女にとってはそれが常識であった。

「ワンって鳴いたら犬になれるなら世の中のM豚は全員犬だよ、犬になりたくてどうしようもないM豚はいなくなるよ」

「毛もフサフサだよ!!!!!」

 少女はワンと泣いた少年の枯れ木色の髪を撫でる。

「ワンワン!! クゥ~ン」

 スリスリと犬は少女の足に頭を擦り付けた。

 そして少女は、ほら! 尻尾もあるし! と少年の背中に束ねられた髪を強調する。

「ダメ! 元居た場所に戻してきなさい!!!!」

「じゃあ、僕は明日からどうやって歩けばいいの! 杖がないと歩けないよ!!!」

「だからってM豚連れてきちゃ駄目でしょ!」

「M豚じゃないよ!!!!!!」

 こんなに芸達者なのに! 反論する少女は犬にお座り、お手、伏せ、ちんちんを命じる。少女に命じられるがまま着流しの股間を捲ろうとした少年を確保。

 1秒も必要としない早業だった。

「確保―――――!!!!!! 変質者確保――――――!!!!!!!」

 M豚から変質者にランクアップした瞬間だった。


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