17話 『勝ち申し……てない!』

(これならーーーー勝てる!)


 リアムは確かな勝利をイメージし、剣を構え、大きく息を吸って、グールに対してこう言った。


「魔法剣士・リアム・シュケルク、ここに参上!」


 リアムはグールの方に全速力で走っていき、思いっきりジャンプ。光属性となった剣を恐れてリアムに攻撃できないグール。それだけ光属性を使える魔法使いが少なく、それだけグールが光に弱いということなのだが、リアムはまだそのことに気づいていない。


『おうらっ』


 グールが見えないところからオノのような武器を出し、ブンブン振り回す。しかしそれは、奇跡的にリアムにあたらず、リアムはグールの頭上にジャンプしきった。


「えあっ!」


 グールの頭に剣を突き刺そうとするが、さすが剣に耐性があるグール。剣は物理攻撃のため、本来加護などで耐性が決まるため特定の武器への耐性というものはないのだが、グールは物理的に剣を防ぐ。獣のくせに、皮膚が鉄より硬いのだ。


「うそっ!?」


 リアムは衝撃的な硬さによろめき、想定外の事に戸惑いながらも、グールの背中をそるように剣を刺し床に降りたためグールは悲鳴を上げた。


『に……ニンゲンの分際デェッ! 調子に、乗るんじゃ、ねぇえええええ!』


 グールの反撃に、リアムはすぐさま剣を構え、グールをかわす準備をする。


『ああああ!』


 グールは腕を全力で振りリアムを仕留めようとするが、リアムは見事にかわし今度はリアムが反撃の態勢に入る。


「でも……剣じゃグールの体を貫けない……」


 これでは埒があかない。リアムはそれをよく理解していた。今でこそグールは想定外の事態に動揺し、リアムが優位に立っているが、長期戦となれば体力で優っているのは明かにグール。このままではまずい。


「何か……何か弱点はないか……」


 リアムはグールの動きに細心の注意を払いながら剣を構える。


『おのれ……調子に乗ってそんなところで眺めおって……今に見ていろ……」


 グールはそう言って立ち上がった。リアムは変わらず注意してグールを見つめていたが、次の瞬間、リアムはグールを見失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

のんびり冒険者暮らし 時雨 @shigure97

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る