16話 『勝機』
『随分と油断していたようじゃねえカァオスカー。見損なったゾォ』
邪悪な声が、ボス部屋全体にこだまする。オスカーは自分の名前を知っている怪物に一瞬動揺したが、すぐ噛み殺したようだった。
リアムの悪い予感は、完全に的中していたのである。
「油断しているのはお前の方だ。俺のことを知っているなら、俺の力だってーーーぐぁっ!」
オスカーが後ろへ吹き飛ばされる。
何が起きたのかリアムはすぐ理解できなかった。
少し唖然として、状況を必死に理解しようとする。
ーーオスカーが吹き飛ばされた。彼は今気を失っている。リアムがこの怪物と闘ったところで、勝ち目などないだろう。
『お前、俺の闘気を浴びても平然としているとは、なかなかじゃあないか』
「そうかな」
リアムはなるべく平然を装う。
『名乗る価値くらいあるだろう。わしの名はーーーグールだ」
太古の魔獣、グール。その存在は1000年前から確認されており、数々の勇者を打ち破ってきた。もちろん、相性もある。グールは光属性攻撃にめっぽう弱いが、剣による物理攻撃はほとんど効かない。ようするに、リアムには勝ち目がない。
「しかも僕が持ってる魔石の剣は見るからに闇属性……」
闇属性は、光に弱いグールにとって、最も得意で、耐性のある魔法。ようするに、リアムには勝ち目がなーー。
「魔石だからと言って、闇とは限らないよな」
リアムは頷いて、剣に力を込めてみる。だが、そんな方法、具体的には知らない。感覚で、なんとなくこうだろうということをしているだけだ。
ーーしかし、それは成功した。
剣は先ほどの暗い色から、リアムがイメージした光属性の光を放っている。剣単体ならグールは強いが、光属性の魔法剣となればわからないだろう。
『何ッ!? 貴様、何をしたっ!?」
グールが予期せぬ事態に動揺している。
(これならーーーー勝てる!)
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