15話 『油断の代償』

「ええええええええええ」


「何驚いてんだよ。ほら、ボスだけは死なないだろうから、早くボス部屋行くぞ」


 今の指パッチンでモンスターを倒してしまうとは……恐ろしすぎる。


「どうやってやったの?」


「エンペラーっていう魔法でな、相手と術師に大幅な実力差がある場合にだけ効力がある。そうだな、並の人間が、そこら辺の微生物殺そうとしても、無理だろうな」


「それってつまり……」


「ここの魔物と俺の実力差は、大人と赤子レベルじゃねえってことだ。ただ、ボスは1秒くらい耐えられるほどの強敵だから、流石にこの魔法では倒せねえな」


 リアムはもう頭がクラクラしていた。

 こんな人とダンジョン攻略作業をしている恐ろしさだけではない。オスカーの逆鱗に触れれば、一瞬で塵になってしまうという、その事実が恐ろしかった。

だが、


「そんなに怖がらなくても、俺とお前の実力差は大人と10歳児くらいの差だ」


「よくわからないけど、めちゃめちゃ実力差があるってことはわかった」


 オスカーは首を傾げていた。実力差があるのには慣れているのだろう。

 そんなオスカーに恐怖を覚えながらボス部屋へ向かう。


「……ん? ボスが、いねぇな?」


「オスカー、なんとなくやばい気がする。ここは引いたほうがいい」


「何言ってんだよ、怖いのか? 大丈夫だよ」


 ヘラヘラしているオスカーに、リアムは多少の苛立ちを覚える。


「ーーだめだ、絶対にダメだ! ここは危険だ! わからないのか?」


「わからないよ、リアム。君がなぜそれほど苛立っているのかがわからない。心配しなくても、こんなとこにいるボスなんて大したことはーー」


『ボスが大したことなくても、そのボスを先回りして倒した奴が弱いとは限らネェよな?』


 低い、重い声が響いた。

 魔獣。魔獣というにはあまりにも迫力が違う。化け物だ。


『随分と油断していたようじゃねえカァオスカー。見損なったゾォ』


 邪悪な声が、ボス部屋全体にこだまする。オスカーは自分の名前を知っている怪物に一瞬動揺したが、すぐ噛み殺したようだった。

 リアムの悪い予感は、完全に的中していたのである。

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