「肉っ!!」

 釣りを始めて数十分以上が経過していた。

「……釣れないね大輔」

「そうだな」

ずっと針の方を見ているけど全くもって魚が食いつく気配がない。

「……」

 大野の方を見るとどんどんと魚を釣っていた。

「よっしゃ、三匹目!」

 もう三匹目か凄いな。

 すると内田がこっちに近づいてきた。

「センパイ釣れましたか?」

「いや、これといっては。内田の方は」

「私も全く……」

 内田は首を振っていた。

「……でも、こうして自然の中にいるもの意外といいっすね」

「……あぁ」

 内田の言う通り。森が囲まれていて川のおかげで空気がヒンヤリとしていて、そよ風がコテージの方よりも涼しかった。

「こういったのんびりとするのも釣りの良いところなのかもしれないな……」

「そうっすね」

「……うん」

 姫と内田も頷いていた。

 こうして自然のところに来れたのも大野のおかげかもな。

 

 ――っ!


「なぁっ!」

 持っていた釣り竿が一気に川の方に引っ張ってきた。

「うぉぉぉ!」

 物凄い勢いで思わず川の方に体が持ってかれてしまうほどの物凄い勢いが釣り竿全体から伝わる。

「おぉぉぉぅっ!」

 足を踏ん張りながら耐えるがそれが精いっぱい……。

 大野はこんなのを軽々と釣っていたのか!

「えっ大輔」

「えっ!? センパイ魚来てるんですか!?」

 ようやく二人が気がついた。

「えっと、どうすればいいの? ……センパイ私、大野先輩を連れてくるんで待っててくださいっす!」

 あっという間に内田が消えてった。

「あっ! えっと……」

 姫がこっちの方をみてあたふたとしていた。

 やっぱり物凄く暴れまくって自分の方に寄せようとしてもうまくいかない。

「うぉ!」

「あっ! 大輔」

 川の方に引っ張られそうになった瞬間姫が後ろから抱き着いてきた。

「吉田大丈夫か⁉」

 大野がバケツと網を持って近づいてきた。

「どうすればいいんだ!?」

「まずは冷静になれ。自分が力を入れる分だけ魚も抵抗するからとりあえず冷静に」

「冷静に!?」

「そう」

 冷静……。

 とりあえず大野のいうとおり深呼吸をし、冷静になる。

「それで魚が動く通りにゆっくりと流れに沿って合わせろ」

「合わせる……?」

 合わせる……流れにそって。

 魚が左に行こうとし俺も左にゆっくりと合わせ、今度は右に行こうとしたら俺も合わせた。

「そうそう、そこで気がゆるんだら引っ張れ」

 気が緩んだから……。

 魚が一瞬だけ動きが止まった。

「そこっ!」

 俺は一気に竿を引くと魚が空中の方に飛んできて、こっちの方に近づいてきた。

「おぉ……おっ?」

 意外と小さい魚が釣れたけど。えっ? さっき暴れてたのがこの魚?

「おぉ、良いイワナ釣れたな」

「イワナ?」

「そうそうこの魚。食えるぞ一応」

「えっ!?」

 内田が声を上げた。

「これを、食べるんですか?」

「そう、これを調理して食べるけど……」

「――っ⁉」

 内田の顔が引いていて、姫も流石に無理なようで首を横に振って拒否していた。

「……まあこの魚より。このやる焼肉をやる方が美味しいから逃がすかな」

「肉っ‼︎」

「お肉!」

 内田と姫が食いついてきた。

「それじゃあこのままというのもしょうがないから逃すけど反対はないかな」

 二人して思い切り首を上下に振っていた。

「わかった。それじゃあ吉田、せっかく釣れたイワナだけど逃がして昼飯にするか」

「了解……」

 釣りはここで終わり。釣り道具やその他もろもろを持ってコテージの方に移動した。

 ……意外と釣りって楽しんだな。

 

 コテージの方に移動し手とかを洗って次はバーベキュー用のコンロを用意した。

「あぁ……」

「よいしょ」

 姫とか内田が先に調理してあった肉を持って来た。

「じゃあやるか」

 大野が軍手をしてダンボールから黒い塊。多分炭を持っていて数個コンロの中に入れ込んできた。

「ほい。これと火」

 紙をライターの火で着火しそれをコンロに入れて、トングで火を調節していた。

「慣れてますね大野先輩……」

「まあな、友達とかで焼肉したり一人でキャンプとかしているからな」

「……え!? 仕事大好き人間じゃなかったんですか大野先輩!」

「いや、いや。仕事は好きじゃないよ」

「お、そこは大野に失礼だろ」

 火の調節を終えると網目をコンロの上に置いた。

「さあ焼こう!」

 バーベキューの準備を終え肉をどんどんと焼き始めた。

 すると肉の香ばしい香りが漂ってくる。

「いい匂い……」

 匂いを嗅いでいるだけでヨダレが出てくる。

 さっき遊んだのが効いたみたいでお腹の虫が何度も鳴り響く。

「ほい出来たぞ。串のところ鉄だから熱くなってるから気をつけてな」

 そして焼けた肉をみんなの皿に乗っけて見ると肉汁が溢れている。

 見てるだがても美味そうだった。

「いただきます!」

 一つかぶりつくと熱々の肉汁が口の中に溢れ出してきた。

「んっ!」

 もう、塩加減といい焼き加減が絶妙過ぎる。

「美味っ!」

「うん! 美味しい!」

 姫の頷きながら口一杯に肉を頬張っていた。

「やばいっす大野先輩おかわり!!」

 あっという間に内田が食い終わっていた。

「早いな……ほらよ」

 焼き終えた肉を内田のところに置いていた。

「ありがとうっす大野先輩!」

「おう、二人もまだまだあるから皿をこっちに持ってこいよ」

「了解」

「はい!」

 そして次のを焼いている時に大野が空を見上げていた。

「……こんなに晴天だから流星観れるといいな」

「んっ? 流星っすか?」

 内田が首を傾げながら肉を食べていた。

「そう、今日は流星が流れるみたいだけど。まあ見れたらいいなって思っている」

「へー流星っすか……。見れると良いですね」

 内田が空を眺めていて、炊き上がった白米を肉と一緒に頬張っていた。

 そして満腹になるまで食べてしまい片付けの後にコテージの方へ入り各々休憩をしていた。

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