「……よく頑張ったわね」

 クリスタから新しい紙を作成し、線をひいてみた。

「おぉ……」

 見えやすく描いた線がそのままくっついてきた。

「紙みたいだな……」

 本当に紙みたいな感覚だった。

 板タブはいうならゲームのコントローラーみたいな感覚で描く感じだったが液タブは画面に直接に絵を描けることに新鮮さだった。

 四角を描いてみたり。丸を描いてみたりしてみたり渦巻みたいに描いてみたが、本当に師匠が言ったように自分の手元を見ながらだから描きやすかった。

「おぉ……」

 すごくワクワクする感じる。

 本当に最初の頃クリスタと板タブを買った日に一日中ひたすら描いていた感覚が蘇ってくる。

「おぉ……」

「ダイ。どう?」

 師匠が席から立ち上がりこっちに近づいてきた。

「めちゃくちゃ描きやすい!」

「気に入ったみたいね」

「俺も液タブ買おうかな……」

 こんだけ描きやすいと俺も欲しくなってしまう

「それはよかったわ……。ねえダイ」

「んっ?」

 師匠の方に振り向くと頬を掻いていた。

「その液タブがダイにあと一台余っているんだけどって言ったら欲しいかしら?」

「……ん?」

 なんて師匠いった?

「あの、師匠もう一回言ってもらっても構わないですか?」

「その液タブを3台目があるからダイは欲しいかなと聞いたのよ」

「もう1台あるの?」

 師匠が頷いた。

「そうなのよ。これを液タブを二個注文して、別の日に出版社から飲み会があったからと誘われてそれに行ってね。ビンゴの景品として当たっちゃのよ……」

「マジで?」

「えぇ。それで液タブを持ってても使い道がないからだからダイを呼んだのよ」

「……え? この液タブを呼ぶために電話をしてきたの?」

「そうねこれを渡したらと驚くでしょ。あとは本当にお腹が空いちゃって……。で、欲しいかしら。私は使い道がないからダイが貰ってくれると嬉しいのだけれど……」

 企んで呼んだ理由がこれだったとは……。

「んっ……本当にいいの?」

 師匠が頷く。

「もちのロン」

 この液タブが今描いている時点で興味はある。

 それに師匠がくれるなら欲しい。

「……持ち帰らせてください」

 俺は師匠に頭を下げた。

「ホント⁉ じゃあ帰りに用意してあげるわね」

「ありがとう」

「どういたしまして。話は変わるのだけれどべた塗とかって出来そう?」

「ちょっとわからないから教えてくれると助かる」

「ええいいわよ」

 師匠の手を借りながらべた塗の仕方とトーンを貼ってみた。

「どう?」

「いいわね」

「マジで?」

「あとは見た感じ手振れがあってない感じね……。直してもいいかしら?」

「お願いします」

 師匠が俺に近くによりパソコンの操作をしていた。

「えっとたしか……」

 

 ムニュ。


 肩のところに柔らかいものが……。師匠の胸が当たっていた。

「……ん? 確かこれよね」

 

 ムニュ。


 師匠は気づいていない様子。

「あの師匠……」

「ん? なにどうしたの」

「胸が当たっているんですが?」

「……そんだけ?」

 そんだけ!?

「いやいや、離れてくれるとありがたいのですが」

「えっなにダイ。私ので興奮してるの? お風呂でちんちんとかおっぱいとか見て触った仲なのに?」

「ちょっと! そう言った話をするのやめてもらえませんか⁉」

「何ムキになってるのよ。おっぱいを触ったぐらいで。お風呂なんて小さい頃に入っただけでしょ」

「それはそうでしょ……」

 そう小さい頃の話だ。お互いの両親が忙しく。師匠の家に泊まったりこっちがお世話になったりしただけ。それだけでなにもない。

「……よし、ダイ用に合わせたから描いてみて」

 師匠が離れてくれた。

「おぉ……軽い」

 流石としか言えなかった。

「ありがとうめちゃくちゃ描きやすい」

「そう良かったわ。わからないところがあったら遠慮なくいってね」

 師匠は自分の席に戻っていった。

「わかった」

 師匠に頼まれたところをベタやトーンを貼っていき作業を進めた。

「……」

「……」

 

 トントンッ。

 

 ドアがノックされ凛が覗いてきた。

「梨花お姉ちゃん。大輔さんお昼にしませんか?」

 時計を見てみると12時になっていた。

「……ここらで休憩にしようダイ」

「了解」

 リビングに向かうと姫が皿をテーブルの上に並べていた。

「カレーだけど食べれそうですか?」

 凛が聞いてきた。

「やったー! 私、凛のカレー好きよ!」

 師匠は凛に抱き着いた。

「ちょっと暑いよ……」

 こうしてみると本当の姉妹みたいだな。

「それじゃあ食べましょう」

 それぞれ先に座り「「いただきます」」といいご飯を食べ出した。

 一口食べると中辛のスパイスが効いていてコクのある味が口いっぱいに広がった。

「美味しい」

「本当ですか? お口に合ってよかったです」

 姫も頷いた。

「本当にチョコ入れるだけでこんなにも美味しくなるんだね」

「本当に⁉」

 チョコの味なんて一口も感じなかった。

「こんなに料理がおいしいなんて自慢の従妹でしょ~」

「梨花お姉ちゃんお客さんがいるから……」

 師匠が凛の方によりくっついていた。

「確かに自慢の従妹だ」

「ちょっと大輔さん!」

 姫が笑っていた。

「ふふっ凛がこんなにも甘えているなんて、レアね」

「なんで姫ちゃんまでもからかうの!」

「ふふっごめんごめん」

 そんな感じで雑談をしながらカレーを食べ終えまた作業に戻った。

 わからないことは師匠に聞き。時間は経過していく。

「……なんか腹に入れたい」

 師匠はジャンクフードを持ってきて食べてながら作業を続けようやく。 

「……終わった〜!」

「おっと」

 思いっきり抱き着いてき俺はなんなく受け止めた。

「ダイ。終わったよ~! ありがとう助かったわ」

「良かったね師匠」

「ええ、ありがとうダイ」

 コンコンとノックされが凛と姫がひょこっと顔を覗かせていた。

「出来上がったの?」

「凛~!」

 凛の方へダッシュしていき抱きしめていった。

「終わったわ」

「うん。おめでとう梨花お姉ちゃん……すごいね」

 あれ?

 結城さんって師匠と一緒に住んでいるから絵のコツとか教わっている機会とかあるはずだけど。なんで俺に絵を見せてきたんだろうか?

「そういえば結城さんって師匠に絵を見せてなの?」

「――っ!」

 師匠が首を傾げいた。

「え? 凛。絵を描いたの?」

「……うん。下手だけど」

 小さく頷いた。

「それを見せてくれない?」

「下手だよ?」

「私が見たいのよ。凛が描いた絵を。理由はそれだけじゃ駄目かしら」

「……わかった」

 凛はスマホを師匠に見せた。

「どう? 梨花お姉ちゃんはプロだからどんなことを言っても大丈夫……」

「……いいわ。凄く好きよ」

「本当に?」

「えぇ、よく頑張ったのね凛」

「うわぁぁぁぁ‼︎」

 凛が師匠に抱きついた。

「私、お姉ちゃんが漫画になったとき、嬉しかった……。ずっと、ずっと見てきてから。そんなお姉ちゃんみたいに夢を持って頑張りたかった……」

「そう、良かったわ凛がそう、言ってくれて嬉しかった」

 頭を優しく撫でていた。

 優しく髪をゆっくりと撫でていた。

「……よく頑張ったわね」

「――っ!! ……うん。うん!」

 数分間ずっと凛は師匠の胸元で泣いていた。

「じゃ帰るか」

「そうだね」

「じゃあ師匠俺たち帰るね」

「はい、ダイ。液タブ」

 紙袋に入った液タブを受け取った。

「ありがとう……ぉぉお!」

 意外にもガクッと重かった。

「おっと……。また忙しかったら連絡寄越して師匠。いつでも駆けつけるから」

「あら、頼もしい。その時はまた頼むわね」

「さよなら」

「バイバイ」

 二人に別れを告げてマンションを出た。

 帰り道二人でゆっくりと歩いていった。

「ねぇ大輔。今日の夕飯は何がいい?」

「ハンバーグが食べたいな」

「ふふっ。いいよとびっきり美味しいの期待してて」

 今にでもイタズラしそうな笑みを浮かべていた。

「楽しみにしているありがとう姫」

「うん」

 そのままは二人手を繋いで帰ってたのだった。

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