「液タブはいいわよ。なんたって描きやすい」
「それに姫ちゃんも一緒なんてどうしたの?」
「俺たちは師匠に食べ物を頼まれて」
凛が首を傾げていた。
「えっと師匠というのは?」
「この人です」
「ちょっとダイ?」
俺は師匠に指をさした。
「梨花お姉ちゃんに――っ」
ふと凛の視線が師匠のジャンクフードを見た瞬間。冷たい眼差しに切り替わった。
「ねぇ梨花、お姉ちゃん……」
「――っ! な、なんでしょう」
「なんでジャンクフードなんか持っているの? 最近脂っこいものをばかり食べ過ぎるからダメだって言ったよね」
「これは……」
師匠の目が泳ぎまくっていた。
こうゆう目を泳いでいる時はなにかやましいことがあるときだな。
「えっと少し説明をしてくれるとありがたいんだけど、ねぇ師匠」
「――ひぃ!」
師匠は怯えていた。
「梨花お姉ちゃんはここジャンクフードとかピザとかの脂っこいもの食べていて運動もしないから食事制限をこっちがしていたんですが、それなのに……」
「それで、耐えられなくて俺にメッセージを寄越したと」
「多分……。で、どうなの梨花お姉ちゃん?」
師匠を次の見た瞬間。頭を床について土下座していた。
「すいませんでした。つい、従弟だから大丈夫だと思っていました」
凛が首を傾げていた。
「イトコ?」
「はい、ダイ……。大輔も私の従弟だから甘えてました。本当にごめんなさい」
そしてこっちを見た。
「えっ本当にですか?」
「うん。師匠が言うようには俺たち従兄妹関係に当たるらしい」
姫も頷いていた。
「え、はぁ……」
そして再び土下座をしている師匠を見つめていた。
「わかりました今回は彼氏さん……じゃなくて大輔さんと姫ちゃんに免じましょう」
「ホント凛!」
師匠が嬉しそうに顔を上げた。
「あげるかわりの残りの原稿を片づけたら食べても良いよ。それか本当に空腹でダメだったら食べてもいいよ。今、梨花お姉ちゃん一人で作業しないといけない状況なんだから」
「一人?」
「あ、はい。あのお茶を入れるので飲んでってください。説明とこの人がやらかしたお詫びをいたしたいんで」
「姫も大丈夫か」
「うん。いいよ」
師匠の家の中に入っていった。
凛は着替えると部屋の方へと向かった。
少し待ち凛の服装ががらりと変わって登場をしてきた。
「すいません今すぐにお茶の用意をしますので」
「私も手伝うよ」
「ううん大丈夫。姫ちゃんは席の方に座ってて」
カステラとお茶を出された。
「それでさっき言ってたことは」
「はい。アシスタントさんが一人いたんですがインフルエンザで体調を崩されてしまい。梨花お姉ちゃんが一人で作業をしている状況です」
「アシスタントさん大丈夫?」
「はい。寮に住んでいるから知り合いに看病してもらっていると言ってました」
「そっか」
大変だけど原稿はどのくらい進んでいるのだろうか。
「原稿、大丈夫なの師匠?」
「あと三枚ほどで完成」
「期限は?」
「今日を入れて2日かほど」
これは本当に間に合うのだろうか?
「俺も手伝おうか?」
「ダイっいいの⁉」
俺が聞いた瞬間すぐに師匠が食いついてきた。
「別にいいよ。それで原稿が間に合うなら、けど線とかそうゆうのは入れられないよ?」
「ええそれはガチで大丈夫よ! べた塗とかトーンを貼ってくれればいいから」
「ベタか……」
俺が昔師匠の姿を見てた時はアナログだったから上手く描けるだろうか……。
「じゃあなじみちゃん。ダイを借りてくわね」
「はい。わかりました」
「じゃあ行ってくる姫」
「うん」
姫は頷き俺と師匠は仕事部屋に向かった。
「じゃあ起動するから待っててダイ」
部屋に入った瞬間バリバリの機械が置いてあった。
デスクトップパソコンとパソコンモニターが二台置いてあった。
それともう一つ板タブが置いてあった。
「ん? いや違うな……」
近くで見てみると液タブだった。
「液タブ……」
名前だけは知っているが実物をみるのは初めてだった。
「どうしたのダイ?」
師匠が近づいてきた。
「いや、師匠の使ってるの液タブなんだと思って」
「ダイは液タブじゃないの?」
「俺、板タブなんだよ。なんかネットで初心者おすすめだって書いてあったから」
そう、ネットで初心者にはおすすめだって書いてあり参考に買った。
「そうなの? 液タブは買わないの?」
「性能とかどうゆう感じなのかよくわからなくて……」
「液タブはいいわよ。なんたって描きやすい」
師匠はなぜかドヤ顔だった。
「そうなの?」
「私は描きやすいわね。板タブ場合だとパソコンのスペックやタブレットによるけど。モニターと板で描こうとすると板タブ判定だと意外と範囲が小さい。あと手元が見えないからそれで思ったところに描けないのよね。ダイはそういったことはない?」
「あーあった」
初めて買った瞬間と同時にワクワクしながら絵を描いたら思ったように線が描けず手元も見えないから苦戦をした。
「液タブの場合だと世界が変わるわよ。液タブの中の範囲で描けるから重い通りに描ける!」
「マジで⁉」
「まあ、私の場合はね。中には液晶が近くて目が消耗するから居たタブが良いっていう知り合いの人がいるからまちまちだけど。もし液タブが苦戦するようなら居たタブにしてあげるわよ」
「わかった」
自由に描けるのか……。
その言葉を聞いて俺はワクワクしていた。
「起動、起動」
師匠が電源ボタンを入れ。画面が起動した。
「じゃあ試しになにか描いてみてダイ。慣れて良い感じだったら原稿を渡すから」
「わかった」
椅子に座り実物の液タブと睨めっこな状態だった。
手が震えている。
緊張しているっていうのがわかっていて楽しみだという好奇心があるからだ。
「やってみるか……よし」
俺はわくわくしながらペンを持ったのだった。
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