「あぁ……。大輔の頬っぺた柔らかくって好き……」

 もう6月に入り丸山から頼まれた絵を休みの今日で仕上げることが出来た。

「あぁ……終わった」

「お疲れ大輔」

 姫が近づきパソコンの方をチラッと見ていた。

「……わぁ。 すごく可愛い!」

「そう?」

 まだまだ未熟だと思うけど……。姫は違うらしく何度も頷いていた。

「うん、すごく可愛い! 凄いね大輔」

 ……まあ、その実物というか参考になっている身近の人が居るおかげなんだけど。

「そう言ってくれると嬉しい……」

「じゃあ、飲み物取ってくるね。麦茶でいい?」

「うん。ありがとう」

 台所の方へと向かっていった。

「……師匠に確認してもらうかな」

 師匠。従姉のことで前に見せる約束をしていた。

 データを保存して添付ファイルで師匠宛てに送信した。

「師匠には送ったし。溜まっているアニメでも見るかな……」

 椅子から立ち上がり。テレビを付けて録画をしていたアニメを流す。

「はい大輔。麦茶だよ」

「ありがとう」

 姫から麦茶が入ったコップを受け取り飲んでいると隣に姫も座った。

「あ、大輔が好きな女の子が沢山出てくるアニメだ」

 今見ているのはラブコメ系の学園物だ。

 話は冴えない男の子がリア充になる話なのだが恋愛要素があって面白い。元はゲームらしいがそこからヒットしてアニメ化までされた。

「大輔って沢山女の子が出てくるのが好きだね」

「……まあ、はい。好きです」

 好きなのだが隣に姫がいると、なんというか申し訳ない感じがある。

「どうしたの大輔?」

「いや、こう二次元の女を見ていたら姫は嫌だったりするのかなって……。ネットでニ次元のキャラに嫉妬するって書いてあったから」

「へー。嫉妬か……」

 姫はこっちをじっと見つめてきた。

「じゃあ、大輔に嫉妬していることで頬っぺたを触ると権利を貰おう」

 俺の頬っぺたを指で突っついてきた。

「大輔の頬、柔らかい……」

 姫はニコッと微笑んでいた。

「大輔がそういった二次元の女の子が好きなのは知ってるよ。私も大輔のおかげでアニメとか好きになったし。それと大輔の横顔を見るとキラキラと目を輝かせて子供っぽくて好きだよ大輔のこと」

「おぉ……。ありがとう」

 さっきまで突っついていた。頬を今度は揉んできた。

「嫉妬するんだったら大輔の頬っぺたに嫉妬しちゃうな。物凄く柔らかくって羨ましい……」

「うぎゅ」

「あぁ……。大輔の頬っぺた柔らかくって好き……」

「じゃあ仕返しだ!」

 お返しとして俺も姫の頬を掴み揉むと柔らかい……。出来たてのおもちがついている感触で本当に柔らかい。

「……」

 ずっと触ってたい。

「姫の頬っぺたに好きだな……。ずっと触っていたい」

「あ、ありがとう……」

 CMが終了し本編の後半、Bパートが始まった。

「一旦離れる?」

「そうだね」

 お互い手を離しテレビを見ながらダラけている。

 すると黒髪でいかにも清楚な女の子が登場してきた。

『あ、こんにちは』

「シホちゃんだ!」

 姫の目から輝いていた。

「姫はシホちゃんが好きなの?」

「うん可愛いよね! 上品でお嬢様で憧れちゃう。大輔はどの子が好きなの?」

「俺はウズキちゃんかな」

 ウズキというのはこのアニメに出てくるキャラクターでいつも元気な女の子だ。

 少し子供っぽいところとか好きで俺の好きなキャラクターだ。

 姫は俺の頬をまた突っついてきた。

「そうなんだ。大輔はいつも元気な女の子好きだよね〜〜」

「まあ、そうだな」

 そういった姫と重なっていて好きな所はナイショということで……。

「面白いかった。夕飯の買い出しに行ってこようと」

「荷物持ちしようか」

「うん、お願い。それと今、何か食べたい物とかある?」

「食べたい物か……。唐揚げかな」

「今日の晩御飯は唐揚げか……あ、そうだ。から揚げから粉を試してみよ」

「ありがとう」

 

 トゥルルルル!


 スマホの方から電話が鳴り響き。画面を見ると師匠からだった。

「もしもし?」

『やっほーダイ。絵のやつ見たわよ。可愛く描けてるじゃない』

「マジで?」

『えぇ、ガチで良いわよ。弟子が頑張るのは師匠として嬉しいわね』

「師匠にはまだまだだけど……」

『それでも良いことよ。こうして一歩ずつ前に進むのは人として成長している証よ。だからダイ、頑張りなさい。凛もあなたに負けないように絵を描いてるわ』

「あ、凛さん。絵を描いてるの知ってるの?」

 前に姫の友達で絵を投稿したいと言ってた。

 そしてその凛さんと従姉妹というのを師匠から知った。

『まあね。凛が私に隠れて描いてたのを知ってたけど。絵を投稿するって言った時は嬉しかった。可愛い妹分が私に頼ってくれて、だから今はダイと同じように厳しく教えてあげてるわ』

 電話越しから師匠が本当に嬉しいというのが伝わってくるのがわかっていた。

『本当にあの子頑張ってるのよ。高校時代のダイと同じで本当に頑張り屋なの』

「そっか。凛さんも頑張っているようで嬉しいよ」

『じゃあ私は用事があるから切るわね。またねダイ』

「じゃあ、また……」

 通話を切ると姫が顔を覗かしてきた。

「どうだった?」

「オッケイを貰えたよ。凛さんも絵を投稿しているみたい」

「そっか……。凛に負けないように私も頑張らないと」

 姫はトートバックを取り、こっちを振り向いた。

「じゃあ夕飯の買い出しを終わったら絵の練習に付き合って欲しいんだけど良い大輔?」

「もちろん。頑張ろうな姫」

「うん、ありがとう。とびっきり美味しいの作ってあげるね」

 姫と一緒に玄関を出るのだった。

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