追いつけるために今、頑張れることをしよう。
「ふぇ?」
え、さっき会った凛さんがいとこ?
……ムギュッ!
姫が頬をつねって引っ張ってきた。
痛い。
ってことは夢じゃない……。
お返しに姫の頬を引っ張り返す。
「うぎゅ。いひゃい」
……柔らかい。
姫のぽっぺたがこんなにも柔らかいなんてなぜ、今まで気づかなかったんだ!
「……」
そんな余韻に浸っている場合じゃないかった。
「いつかダイにも紹介するわね」
師匠が首を傾げていた。
「あぁ……」
その凛さんって人と会ってるんだよな多分。
「……」
「……」
どうしようと姫の方をみると姫もこっちを見ていた。
「なによ急に2人して見つめ合っちゃって。キスするならホテルとか人気のない所でしなさいよね」
「――っ! ちょっと今はそうゆう流れじゃなかったでしょ!」
師匠が首を傾げていた。
「あら、そうなの? てっきりここでキスをして周りが引くような展開になったりする。エロ漫画みたいな展開じゃないの?」
「しないし。そういったのはフィクションだけの話だからね」
ツッコミが追い付かない……。
姫の方をみると顔を赤くしていて視線を下の方にむけてる。
「……それとこう言った話を姫の前でしないで」
「なぜ?」
「一般的にそう言った話を周りが聞いたら恥ずかしいって話だよ」
すると師匠が炭酸ジュースを飲み干して、「あぁ~」とため息を吐いていた。
「肝っ玉が小さい男ね。絵を描いても周りのことなんて気にしてたら、描きたい物も制限されるわよ」
「……うぅ」
たしかに周りのこととか評価を気にし過ぎたらどう、歩いて良いのか分からなくなってしまう。
多分凛さんも気に過ぎていたのかもしれない。
姫が手をあげた。
「……さっき言ってた凛さんって多分って私の友達かもしれないです」
「……へぇ? そうなの?」
「この子だと思うんですけど……」
自分のスマホを取り出し。凛さんの顔をアップさせた画像を師匠に見せていた。
「そうそう、この子よ。……え? なじみちゃんって凛とどんな関係なの?」
「高校の友達です。さっき凛ちゃんと会って話してました」
「そっか男じゃないか残念ね。漫画のネタとして参考になったのに……」
「大輔のお師匠さんって、なんの漫画を描いてるんですか?」
「そういえば聞いてなかったけど、どんなの?」
「だらだらと高校生の日常を描いた漫画よ」
「え、バトル漫画とかじゃないんだ? 昔はそっちの方面を描いてたけど……」
師匠が本格的に漫画を投稿したのは高校生からって本人から聞いていた。
「ネームを担当者に見せたときに物語の方向性がわからないからいっその事、日常系でダラッと描こうってことになって、今になってるわ」
「それでも凄いね。ね、大輔」
「……そうだね」
話していたらもう、師匠が食べ終えていた。
「ふう……じゃあ私、帰るわ。ダイ、絵の方仕上げたら見せてね」
「あ、うん。わかった」
「じゃあねダイ。なじみちゃん」
師匠がその場を立ち手を振って帰って行った。
「なんて言うか。凄い人だったね」
「……昔から師匠は真っすぐな人だっから。憧れでもありライバルのつもりだったんだけどな……。そう思ってたのは俺だけだったのかもしれないな」
「大輔……。大丈夫だよ。大輔も追いつけるよきっと」
そう言って姫が手を握ってきた。
姫が言ってくれた言葉が素直に嬉しかった。
「ありがとう……」
「それじゃあ帰ろ大輔」
「あぁ……」
追いつけるために今、頑張れることをしよう。
俺と姫は立ち上がってアパートに帰るのだった。
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