『応援ならいくらでもしてあげる、挑戦するのは大事なのだから。 頑張りなさいダイ』

 土曜日になり出来ないんだよ!」、姫の友達と会う約束の日だ。 

 俺は姫と一緒に駅の方へと歩いていた。

「姫の友達か……」

 一体どんな人なんだろう。怖い人とかじゃなければいいけど……。

 姫の方を向くと無邪気に笑っていた。

「えへへ」

「ん、どうした?」

「だって大輔を彼氏として紹介できる日が来るなんてヤバい」

「……そうだよな」

 後藤達や大野たちみたく、恋人を誰かに紹介できるなんて嬉しかったな。

 すると女性二人組が近づいてきた。

「おぉ……本当にイチャイチャだよ凛」

「ヤバいね」

 姫が目をパチパチとしていた。

りんあや! え、どうして居るの?」

 髪の毛が金髪でファッションも派手な女子が頭をかいていた。

「いや〜ちょこっと先回りして、どんな人なのか見ようかなって、ねぇ」

 もう一人の黒髪でおかっぱの少女が頷いていた。

「ヤバいね彩ちゃん」

 姫が頷いていて、握っている手を握りしめて振りブンブンとふり回していた。

 本当に嬉しんだろうな。

「……で、この人達が姫の友達?」

「うん。友達の……」

 先に挨拶したのはギャルぽい見た目の方の子からだった。

「どーも川田かわだ 彩でーす」

 次に綾乃の隣の子がお辞儀をした。

「どうも……結城ゆうき 凛です」

「え、っと初めまして吉田 大輔です」

 二人に挨拶を済ませる。

「中に入って食べようぜ」

 店内の方でテラス席に案内し席に座った。

「可愛いい。このケーキ」

「ねぇ〜! 絶対に映えるわー」

 彩と凛がメニューを見ながら騒いでいた。

「姫っちはどれが美味しそうに見える?」

「うーん。このブルーベリーチーズケーキが美味しそう」

「本当に美味そう。あとで撮らせて」

 姫が頷いていた。

「良いよ。大輔は決まった?」

 メニューが種類が豊富でどれかわからない。

「……コーヒーで」

「はいよ。じゃあ決まった事だし注文すんね。すいません!」

 店員さんにそれぞれの品を言って店内に入って数分経つと品がテーブルの上に置かれていた。

「美味しそうだね大輔!」

「おお、本当に美味そうだ」

 このブルーベリーの色合いといい。見た目が美味しそうだった。

 これを絵にしたいな……。

「姫。俺にも写真を撮ったの送って」

 彩がニヤニヤしていた。

「良かったね姫。彼氏さん優しそうで」

「でしょ。えへへ」

 姫が嬉しそうに笑っていた。

「それで凛は大輔に相談したいことって何?」

「……相談?」

「うん。凛が大輔に聞きたい事があるから今度紹介して欲しいって言われたの」

「俺に?」

 凛の方を見ると頷いて手を何度も摩っていた。

「その彼氏さんって絵を投稿してるって姫に聞きました」

「……あぁ、まあ」

「彼氏さんって自分の投稿するのって怖くなかったんですか」

「怖い?」

 凛は頷いていた。

「はい……」

 彩が凛の肩を叩いてなだめていた。

「凛、前々から絵をネットに投稿したいって言ってたんよ」

「なるほど……。それで凛さんは投稿をしようにも怖いんですね?」

「はい……。怖いっていうか自分の作品を見てもらえるか不安で」

 確かにそうだよな。自分の作品が見ている人に響いているのか不安でどんどんと自信がどんどんなくなってしまって。これが正解なのか迷ってしまう。

「……でも、やりたいって気持ちはあるんですよね」

 彼女は頷いていた。

「……はい」

 彼女の声からは少し弱々いくかったがどこか信念見たいのを感じた。

 どこかその光景が昔の自分を見ているようだった。

 その時、ある人の顔が浮かんだ。

 少女の顔立ちで、黒髪で瞳が真剣で覚悟がある。俺に絵を教えてくれた師匠の顔が。

 ふと、声援をくれた声が蘇った。

『応援ならいくらでもしてあげる、挑戦するのは大事なのだから。頑張りなさいダイ』

 ……師匠。そうですよね今、挑戦しようとしている子がいるんだから応援してあげたいですよね。

「それなら投稿してみると良いんじゃないかな。不安や恐怖とかあるかもしれないが、挑戦してみるって大事だと思うよ。ガチで大切だからさ」

 彩が背中を叩いていた。

「大丈夫だよ凛。自信を持て!」

「うん。そうだよ凛ちゃん」

「……姫。彩。彼氏さん。……ありがとう。挑戦してみようと思ってます」

 彼女の瞳からは不安な顔つきがなくなっていた。

 彩がケーキの方に目を輝かせていた。

「姫、写真撮って」

「はいよ。……カシャ! うん。いい感じじゃない?」

「……うん。めちゃくちゃ綺麗」

 彩と凛はスマホを見てみると頷いていた。

「大輔にも」

 姫から画像を送られて写真を見てみると美味そうにケーキが収めていた。

「おぉ! 美味そうだ。ありがとうな姫」

「えへへ。じゃあ食べちゃおう」

 そのまま三人してケーキを美味しそうに食べていた。

  

 ◇


 ケーキを食べ終え彩と凛は二人して手を振っていた。

「じゃあ姫。また学校で」

「うん、月曜日ね。二人とも」

「彼氏さん。ありがとうございました」

「うん。絵の方頑張って」

「はい! 頑張っていい絵を描きます!」

 そのまま別の道に歩いていった。

「……大輔。たまには良い事言うんだね」

「まあ、師匠の言葉が頭に過ったからかな」

「師匠?」  

 姫が首を傾げていた。

「あぁ従姉いとこなんだけど。絵を教えてくれた人なんだ」

「へぇー。師匠か。じゃあ、大輔の一番弟子は私だね」

「あはは。そうだな」

 街中をぶらぶらとしていると一人の女性が立ち止まってこっちを凝視していた。

「……え、もしかしてガチでダイ?」

「ん?」

 彼女の方を見てみると黒髪で瞳からは自信が溢れていた。

 似ている……。どこか師匠の顔立ちに。

 ……それとさっきダイって呼んだのも気になった。

 そう呼ぶ知り合いは従姉とかだけど、もしかして……。

「――……師匠」


 

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