「ありがとうな姫。ご飯用意してくれて」

 海浦の手伝いをし、アパートに帰宅している最中だった。

「……頭が痛い」

 ドンドンと頭が鳴り響く。

 おまけに体が痛い……目の奥もズキズキとする。

「……ベットで寝っ転がろう」

 少し寝たら回復するかもしれない……。


 アパートに帰還しドアを開けた。

「ただいま……」

 姫が近づいてきた。

「お帰り大輔。お風呂と食事どっちにする?」

「うーん。今は寝たいです……」

「え、大丈夫?」

「……ちょっとダメかもしれない」

「大丈夫?」

「あぁ、少し寝たら必ず食べるから。先に食べていていいよ」

「え、うん。わかった……」

 ベットに向かいすぐさま横になる。

「あぁ……」

 目を瞑りボーとする。

 向こうの方からバタバタする音が聞こえる。

 姫の方を見てみると1人で食事をしていて。俺の分まであった。

 本当に用意してくれて、ありがとうな。起きたら食べるから……。

 姫が食べ終えてこっちをチラチラと見ている。

 そしておもむろに立ち上がってベットの横側を座り、手を出して握ってきた。

「どうした姫?」

 俺の手をギュッと握り締める。

「大輔が本当にお疲れだったから……。ごめんね辛いのに手を握って」

「嬉しいよ。ありがとう姫」

 こう、誰かに握ってくれるだけで嬉しかった。   

 姫の暖かく細い指先の感触のまま眠ってしまった。


「……んん」

 目を再び開けて。体を起こすと、姫がうつ伏せで寝ていた。

「少し良くなったな。食べようかな……」

 この手を握っていた手は離れていたが、うつ伏せになってる。

 姫を起こさないようにしたい。少しづつ体を動かせば大丈夫だと思う

「……よいしょっと」

「……んっ」

 姫を顔をあげ眠そうに目を擦っていた。

「悪い。起こしちゃって」

 姫がこっちを見て首を振っていた。

「え、ううん。こっちこそ疲れてるのに手を握たりしちゃって……」

 姫がしょんぼりとして、俺は頭を優しく撫でた。

「物凄く嬉しかったよ。ありがとう手を握ってくれて。おかげで元気が出たよ」

 姫の顔がパアッと明るくなった。

「じゃあ、ご飯、食べるから」

「大丈夫?」

「ああ。だいぶ軽くなったよ。ありがとな姫」

 姫が頬を赤くしながらクネクネとしていた。

「えへへ。よかった」

 俺は布団から降りてテーブルに座った。

「いただきます」

 肉じゃがをパクっと食べる。

「うん……美味い」

 この醤油の香りと塩の味付けが疲れた、体に効いてくる。

「ありがとうな姫。ご飯用意してくれて」

「うん」

 姫が微笑んでくれた。

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