「お、おかえりりゃひゃい!」

 仕事が終わり。俺は荷物を持ってロビーの方で待っていた。

 大野と内田が来て、肩を叩いてきた。

「お疲れさん」

「センパイ、乙でーす」

「……お疲れ」

 会社を出て。俺達は自分の最寄り駅まで乗っていく。

 この時間帯ぐらいと朝は、すし詰め状態だから苦しい……。


 駅に到着し、改札を出て。軽くストレッチを行う。

「やっぱりこの時間帯は人が多いな……」

 内田が俺の肩を掴んでぜーはぁー! と息を整えていた。

「センパイ早く行きましょう……」

「そうだな。姫にケーキ買いたいんだけど。コンビニ寄っても良いか?」

 二人とも頷いてくれた。

「いいな。ジャーキーとか欲しかったところだ」

「私も飲み物が欲しいです……」

 コンビニに寄り。チョコケーキを四個ほど買ってコンビニを出た。

 アパートに着き、扉を開ける。

「ただいま……」

 開けた先には姫が制服姿になっていて、顔を赤くしていた。

「あ……。お、おかえりりゃひゃい!」

 あ、噛んだ……。

「あぁ––––!」

 舌を出しながらしゃがみ込む。

「いひゃい……」

「大丈夫か姫?」

「うん……」

 姫が頷いていた。

 そうだよな、これから大人に合うってなったら緊張してしまうよな。

「それはそうと、なんで制服なんだ?」

「なんとなく……。なんかスーツを着てるから、普段着じゃ浮くかなって」

「浮かないと思うよ。大丈夫か」

「うん……」

 俺は手を差し出し、姫の手を握って一緒に立ちあがる。

 そして二人に対してお辞儀をした。

「えっと……。大輔の彼女の吉田 姫です」

「――っ!」

 同僚に対して彼女っていう単語で反応してしまう。

 先に挨拶したのは大野からだった。

「初めまして、吉田の仕事仲間の、大野 聖一せいいちです」

「やっほー。内田 すみれ、だよ。姫ちゃんよろしくね」

 姫が何度も頷いていた。

 緊張しすぎだな……。

 すると内田が姫に抱きつき、頬擦りをしてきた。

「はぁぁぁ! やっぱり姫ちゃんカワイィィィ!」

「うぎゅっ!」

 姫がこっちを見ると手をバタつかせて助けを求めていた。

「センパイ、それじゃあ私。姫ちゃんを連れて帰るので」

 そして姫を抱きかかえていた。

「待て! 連れて帰るって何だよ!」

 内田が首を傾げていた。

「え、可愛いからですけど?」

「まあ、それはわかる……」

 確かに姫は可愛いから持って帰りたくなるのはしょうがない。

「大輔!?」

 姫がまだバタバタとしていると、大野が手を叩いて注目をした。

「はい、自己紹介はこのぐらいにして中に入ろうか。内田は姫さんを離して」

「はーい」

 唇を尖らせながら姫を話し、やっと解放されたみたく息を吐いていた。

 そしてリビングに入り。俺と姫でカレーをよそってテーブルに置いた。

「いただきます」

 それぞれ、一口すくい食べ始めた。

 内田と大野が頷いている。

「うん! 凄く美味しい!」

「本当にウマいよ」

 姫は自分の胸の方に手を当てホッ、と安堵していた。

「良かった……」

「良かったな。本当に美味しいよ」

「そう言ってくれて嬉しいよ大輔」

 カレーを間食し終え、口直しに水を飲んでいると大野が聞いてきた。

「吉田、本当に彼女さん居たんだな」

「ですね~。こんなかわいい子なんて」

 そして内田はまたしても姫に抱きついていた。

「……まあ、そんな訳でその……女子高生と住んでるっていうことは内緒にして欲しんだ」

「言わないって。俺達を信じろって」

「……ありがとう」

 内田はもう人形状態で手をブランブラン遊んでいる姫に聞いてきた。

「それで姫ちゃんはセンパイのどこに惚れたの?」

 こっちの方を見てきてどんどんと顔を赤らめさせていた。

「その……。小さい頃からお兄ちゃん。頼れる存在だったからいつの間にか好きになっちゃって。四月に告白しました……」

「……」

 やっぱり好きになる理由を聞かされると嬉しいが、胸の鼓動がどんどんと叩いて恥ずかしさが出て。顔が熱くなっていくのがわかってくる。

 すると大野が俺の横腹をガシガシと突いてきた。

「女子から告白されるなんて羨ましいなこの!」

「イタいって!」

「この、この!」

 そんな二人して玩具にされたり、ケーキを食べて話してると時間だけが流れていった。

「んじゃあ、俺達帰るわ」

「またね。姫ちゃん」

 大野と内田を玄関まで見送り、去って行く。

「凄かったね……」

「あぁ……。今日はごめんないきなりご飯をご馳走する感じになっていって」

 姫は嬉しそうに笑顔で首を振っていた。

「楽しかったよ。ケーキも食べれたし、あの人たち、すっごい優しかった」

「……そうだな。途中で玩具にされたけど」

「そうだね。物凄いベタベタとしてきたね」

「姫も、あんな感じでベタベタだけどな……」

 すると姫の頬が膨れていた。

「いいもん! 膝枕してあげないから」

「すいませんでした。膝枕してください……」

 精一杯。頭を下げた。

「それなら、一緒に皿洗い手伝ってくれるってことで」

「もちろん手伝わせてください」

「よろしい……」

 悪い顔をして、リビングに戻って一緒に皿を片付けた。

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