「お腹大好き、人間に改造されたんだね」

 たい焼きを食べ終え、姫に新しい飲み物を買って渡した。

「はい、お茶で良かったんだよな?」

「うん。ありがとう大輔」

「じゃあ、銀閣寺に向かうか」

「おぉー!」

 タクシーを拾い、姫と一緒に後部座席に座った。

「すいません。銀閣寺までお願いします」

「はい、わかりました」

 数十分かけて銀閣寺に到着した。歩くと石橋の下に

「多分、この先が銀閣寺だと思うから歩いてみるか」

「ほーい」

 姫が先頭に歩きながら進むと木々の隙間から、和風な建物が現れた。

「うん、授業で習った通りだったね。金閣寺を観た後だと、銀色が塗られてるんじゃないかなって思っちゃった」

「だな。初めて見るが本当に和風の家なんだな……」

 修学旅行のとき。銀閣は工事中で入れなかったから、新鮮だ。

 中から庭を見てみると、小石で凹凸おうとつが出来て境目になっている。

「ねぇねぇ、大輔。あれ、絶対に宇宙人が描いた痕跡だよ!」

「確かに……。そのまま連れ去られたら。改造されるかもな」

「いやだ。大輔が変な生き物にされちゃう!」

「俺が何で、誘拐される立場なんだよ」

「だって大輔。ボーとしてるから、そのままキャトられて改造されても気付かなそうだし」

「いやいや、普通に気付くって……」

 姫がこっちをジッと見ていた。

「いや、大輔はキャトられたから。お腹大好き、人間に改造されたんだね」

「いやいや、改造されてないよ。それと良いか姫。お腹というのは人間、生物にとって大事な所なんだ。特に人間のお腹というのは形とツヤが輝ける場所なんだ。そう、普段から見えない肌だからこそ、神秘的な場所なんだ。特に––––」

「あ、うん。やっぱり改造じゃなくて、正常だね……」

 姫が無言まま、こっちを見ていた。

 そんな哀れるような目で見ないでください……。

「こ、こっちじゃなくて、周りを見てみ、景色が凄いぞ」

 姫が正面を向き、周りを見渡すと小鳥のさえずりが聞こえてくる。

「涼むね……」

 自然を心が落ち着く。

 姫もジッと風景を見つめて、こっちの方に振り向いた。

「ねえ、大輔。周りの風景ってどう描くの?」

「風景?」

 そっか、あんまり風景とか背景は教えてなかった。

「そうだな……。姫、遠近法って学校で習ったか?」

「うん……。でも、どうゆう事かわからなくって。こう、全部を描いてみてって言われても、何処を描いたら良いのか分からなくって」

「あー」

 どこを描いたら良いのか……。

「そうだな……。基本的には見て、空間を意識しながら描いてく」

「く、空間を意識して?」

「そう」

 この雲の形のことや、木がどうやって描くのかを説明したい所ではあるが、一気に難しいことを言っても混乱するだろうから簡単な物からにしよう。

「例えばスマホあるだろ」

「うん」

 姫が自分のスマホを取り出して見つめている。

「スマホを描くなら長方形の箱を意識して描いてみる」

「うん……長方形」

 スマホをジッと眺めていた。

「そう、基本的は箱と丸を何度も描いて感覚を覚えると良いよ。車の車体とかはカーブを描いたり。タイヤのホイルが丸いから役に立つから」

 他にもパースとか色々あるが、基本を出来るだけマスターしてからの方が次の段階に進める。

「なるほど……」

 姫が頷いている。

「ねぇ大輔。その練習方法をやりたいんだけど、他にも行きたい場所とかあったりする?」

「行きたい場所か……。今はないかな」

「じゃあホテルに戻って。大輔と一緒に絵の練習がしたい!」

「姫……」

 そうだな。興味があったら全力で進んでみたいよな。

 さっきまで真剣な眼差しをしていたが、今度は目を逸らしていた。

「ごめんね……勝手なこと言って」

「別に勝手だって思ってないよ。俺も姫に教えたいし」

 少しでも元気付けれるように肩を叩いて、やる気を出させる。

「うん。ありがとう……」

 姫が微笑み返してきた。

「その前に腹ごしらえするか」

「賛成」

 銀閣寺を出て、定食屋に寄ってお昼を済ませる。

「あー美味しかった」

「ね、お腹一杯……」

 姫が腹を摩っている。

「練習になりそうな描く物を買うか」

「了解」

 スケッチブックと小道具を買って、ホテルに戻った。

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