「ねえ、子供の名前は何がいい!?」
眩しい日差しが差し込む朝。姫に体を揺すられた。
「大輔。朝だよ起きて」
まだ体が睡眠を欲している。
「あと五分だけ……」
すると耳元で囁かれた。
「それじゃあ今日の新婚旅行はこのホテルで過ごす?」
新婚旅行!?
昨日の婚約したのが脳内によぎっていて、恥ずかしいから出来るだけ言わないで欲しいと急いで起き上がる。
ゴツンッ!
思い切り姫のおでこに、クリーンヒットした。
「痛いよ大輔……」
「……あぁぁ」
こっちにも反動でデコが当たって痛い……。触っているうちに引いてきた。
「朝飯食べに行くか」
「うん、行こう……」
下に降り食堂に向かうとバイキング形式になっていて色んなおかずが並べてあった。
トレーを取り無難とも言える焼き鮭とご飯とみそ汁を取って席に座った。
「あ、大輔の方。和食だ」
「そうゆう姫は洋食ぽいが……」
パンとゆで卵、そして野菜炒めにゼリーまで付いていた。
「それだけで足りるのか?」
姫が頷いている。
「うん。これだけで足りるよ」
「わぉ……」
それだけで半日動けるんだからよく体が持つんだから感心してしまう。
「なんか食べたいのとかあったら言えよ」
「うん、ありがとう。それで今日はどこに行くの?」
「金閣寺と銀閣寺を見に行こうと思ってるがどうだ?」
「良いよ」
「よし、決まりだな」
ご飯を食べ終えて一度部屋に戻って着替えて鍵をロビーに返却して外に出た。
「じゃあ、行くか」
「……うん」
姫が小さく頷き。タクシーを呼んで先に金閣寺の方に向かう。
降りると人が沢山いて賑わっている。
「昨日の清水より人が沢山いるね」
「だな……」
流石は観光名所。
感心していると姫がすれ違いに誰かにぶつかってふらついてしまっていた。
「姫、こっちの方に」
手を握り自分のところに引き寄せる。
「大丈夫か?」
「う、うん……」
姫が両手を握りしめるとそのまま腕に絡んできた。
「うぉ! どうした」
「…………」
返事がなく下を向いたまんま数十秒ずっと抱きついてきた。
「……だ、大輔。このまま歩いてもいい? なんか大輔の顔を見たら何にも言えなくなっちゃう」
「大丈夫か?」
「うん。ダイジョウブ、ダイジョウブ……」
この大丈夫は本当に安心して良いのだろうか?
「とりあえず金閣寺を見に行くか」
「……うん」
中に入り一歩踏み出すと中は木々で見渡す限り自然の
「凄い自然だな」
「……」
あれ、静かだな。あ、姫もこの自然に感動したとか?
姫の方に視線を見てみると鼻から血が垂れていた。
「って! 姫、鼻血!」
「え……」
自分の手の甲で拭き取ってボーとしている。
「あれ、本当だ……」
「とりあえず休憩できるところ!」
ベンチの方に移動し座らせる。
「じゃあ大人しくしておけよ」
「うん……」
俺は自動販売機でミネラルウォーターを買っていた。
鼻血を出して飲み物は逆効果かもしれないが、一応渡しておいて損はないよな……。
姫のところに戻ると鼻にテッシュを小さく丸めて詰めていた。
「はい、飲み物。一応だが」
「ありがとう……」
飲み物を受け取ってくれて隣に座った。
「大丈夫か?」
「うん。ちょっと……大輔に抱きついていたら。興奮しちゃって」
「興奮って……」
「だって大輔の口から結婚て言われたんだよ! まだ頭の中で整理が出来てないよ! ねえ、子供の名前は何がいい!?」
「こ、子供の名前!?」
いきなりそんなことを言われても困る……。
姫が小さく何度もコクコクと赤べこみたく頷いていた。
「そう、私だったら男の子の名前はカッコ良そうな名前で竜也で、女の子だったら可愛く空って名前が良いなって。…………あれ、私はさっきから何言ってるの!?」
急に我に返り姫がテンパっていた。
「あわわっわぁぁ!」
これは見てもわかるように大丈夫ではないな……。
「落ち着け姫」
姫の肩を叩き出来るだけ落ち着かせる。
「う、うん……」
まさか姫が結婚の約束をしたらこんなに暴走するとは……。
さっき姫も言っていたけど頭の中で整理が出来てない。
まずは落ち着かせることが先決だ。
「姫、結婚の事は一旦置いておこう」
すると姫の顔がどんどん青ざめていく。
「……え? もしかして呆れて嫌いになった?」
あれ? まさか地雷を踏んでしまったか……。
「嫌いになる所なんてないよ。無邪気で笑顔が素敵なところが好きだから。その……婚約の約束をしたわけだし」
「だ、大輔!」
すると姫の表情が明るくなっていた。
「あ、ありがとう。私も大輔が頑張っている姿がカッコ良くて好きだよ」
「お、おぅ……」
自分の長所を言われるとやっぱり嬉しいが恥ずかしいな……。
けど、なんだかいつも通りみたいな雰囲気に戻っていったかな?
すると姫は自分に暗示をかけて何度も頷いていた。
「そうだよね。結婚は卒業してから……結婚は卒業してから……」
そしてこっちをじっと見つめてきた。
あ……可愛い……。
「ねぇ大輔。その……今、手とか繋いでもいい?」
「いいよ」
グッと掴まれ、そのまま少し木々が吹く音を聞きながら30分ぐらいして休んだ。
「じゃあ、行こう大輔」
姫が立ちあがり詰めていたテッシュをこっちには見えないようにしながら取っていた。
「大丈夫か?」
「うん。だいぶ楽になったよ。ありがとね大輔」
そう言っていつも通りの笑顔になっていた。
「じゃあ、行くか」
「レッツゴー」
姫がまた腕に引っ付いて歩いたが鼻血が出ることはなく金閣寺が見える場所まで向かっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます