「そうそう。登校だよ。姫と出会ったの!」

 店の中で店員が他の客が入ってきて接客していた。

「いらっしゃいませー!」

 そんな中俺たちは店の端っこに座っている。

 姫には晩御飯外で食べてくるってメッサージを飛ばしてグットしているスタンプが送られてきて了承を得た。

 内田が周りの店をくまなく見渡していた。

「私、ここの店初めて入ったんですよね」

 大野が首を傾げる。

「そうなの? ここのオススメは麻婆豆腐が美味しいよ。辛いんだけどそれがまた癖なってさ。まあ、辛すぎて汗だくになるんだけどね」

 こっちは姫のことをどう説明しようかという。恐怖で汗が出まくりだよ……。

 コップに入った水を一気に飲み干す。

 こっちの心配は知らない内田は頷いていた。

「あぁ……辛いのですか。辛いのはちょっと……」

「もちろん他のを選んでも構わないよ」

「そうですか? チャーハンにしようかな」

「俺は麻婆豆腐にしようと。吉田は?」

「俺は大丈夫だ……」

「そんな身構えるなって。久しぶりに飯を一緒に食べれるんだからさ」

「早く帰りたいんだが……」

 大野が肩をトントンとしてきた。

「まあ一緒に食べたかったのは本当だから。ごめんな無理やり誘って」

 そう謝れると罪悪感がある。

「すまん。ありがとな」

「ああ。で、何か決まったか?」

 メニューを見ながら俺はエビチリと醤油ラーメンを決めて店員に注文した。

 数分後。それぞれが頼んだ食べ物がテーブルの上に並べられていた。

 食べている最中に内田が切り込んできた。

「それで先輩って彼女出来たんですか?」

「それは……。なんでそう思った?」

 大野が食べ物を飲み込んでから喋ってきた。

「まずは弁当かな。前まではコンビニ弁当とかパンが多かったろ」

「そうだな……」

 いつもは軽食な物とコーヒーで済ましていた。

「それで急に弁当に変わったからビックリしたよ」

 内田が驚いていた。

「え? 先輩っていつも弁当じゃないんですか?」

「最近だけどね。内田が入社して少し経った頃に変わってたな」

「なるほど……。それじゃあ弁当に変わったということは?」

 内田がこっちをワクワクしていて大野も見てくる。

 これ以上は話が逸れる気がしない。

「彼女がいるよ」

「「おお!」」

 すると二人して驚いていた。

「で、で。どんな子なんですか?」

「まあ一言で言えば子供っぽくて無邪気なんだけど。まあ一番って言ったら姫の笑顔かな」

 そう小さいころからずっと手を握っていていつも笑う。今もこうして笑顔で微笑んでくれる姫の笑顔が好きだ。

 すると内田がニヤニヤとしてきた。

「ほほう。センパイの彼女さん。姫ちゃんって言うんですか?」

「ん、あぁ……。そうです」

 もうこっちまで顔が赤くなっているのが分かる。

 大野が首を傾げていた。

「それでその子は今、何してるんだ?」

「あ、あぁ……えっと……」

 本当になんて答えたら良いもんか。

「なに、どうした? まさか女子高校生ってわけじゃ……」

「――っ!」

 その言葉を聞いたら背筋が凍った。

「え? 本当に女子高校生なのか?」

 手がどんどん震えていてもう逃げようとは出来なかった。

「えっと……はい」

「マジか……」

 大野が箸を置いて頭を抱えていた。

「そのことはどうやって知り合ったんだ?」

「ん? えっと……確か普通に近所で住んでいて言う感じかな。会ったの小学生ぐらいだった気がするな」

 一緒に学校まで登校したのが最初の出会いだったな。

「そうそう。登校だよ。姫と出会ったの!」

 大野がきょとんとしていた。

「え? 登校?」

「そう。玲さんが一緒に付いてて欲しいって言われたんだよな」

 内田が首を傾げていた。

「その彼女さんって。小さい頃から一緒なんですか?」

「そうだよ。まあ中学の時の親の転勤で、姫と離れ離れになってしまったんだけどな」

「じゃあセンパイはその子とはどうやって再開できたんですか?」

「姫が4月頃にアパートに来て掃除をしてくれたら一緒に同棲するって言ってきたんだよな」

 大野が首を傾げていた。

「あの部屋をか?」

 大野とも2回ほど店で飲んで酔った勢いで部屋に来て飲みに来たが、泊まった次の日。片づけを手伝ってくれた。 

 内田がなぜか頷いていた。

「吉田センパイのデスク。忙しいときとか散らかっていましたけど。家でもそんなに汚かったんですか」

「はい……。そうです」

「よく、好きになりましたね。その姫さん」

 内田がどんどんと引いていた。

「本当にな。ずっと好きだって言ってくれて。思ってくれてたから本当にありがたいよ」

「良かったじゃないですかセンパイ!」

 そう言うと内田がパチパチと小さな拍手を送ってくれてた。

「おお、おりがとう……」

 大野はなにか納得いってない様子で唸りながら聞く。

「親御さんにはなんて?」

「ん? 普通にお願いしますって」

 あれから付き合っているっていう報告はしてはいないが……。

「おぉ……」

 大野が呆然としていた。

「写真! 姫さんの写真ってあるんですかセンパイ!」

 内田が目を輝かせていた。

「まあ……」

 スマホを取り出し写真を選ぶ。

「どれが良いかな……」

 まだ写真が少ない。

 色々と見ながら手を耳のところに持ってきてウサギの真似をしているポーズの写真が目に入った。

 次の絵の参考にしようと思ってポーズを頼んだんだよな。

 その写真を二人に見せた。

 二人して「おぉ……」と頷いた。

「めちゃくちゃ可愛いじゃないですかセンパイ! いつか合わせてください」

「おぉ。いいぞ」

 大野が肩を掴んできた。

「羨ましすぎるぞこの野郎!」

「そうだ! そうだ!」

 二人にいじられながらも祝福っとしてくれたのかな?


 食事を終えて大野はこの近くの寮の方に歩いて行った。

「じゃあ、幸せにしろよ」

「ああ」

 大野は手を振ってその場を去って行った。

 電車に向かい内田が降りるホームで内田が降りていった。

「じゃあセンパイ。また。必ず合わせてくださいよ」

「ああ」

 彼女も手を振って俺は姫が待つアパートに向かうのだった。

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