「センパイ。これから食事会ですよ?」

 旅館に連絡するとゴールデンウィークの日と重なり宿がなかなか予約が取れない。

「ダメだ……」

 次の店に連絡すると電話が繋がった。

『はい。もしもし』

「すいません。予約を取りたいんですが大丈夫ですか?」

『はい。少しお待ちください……』

 するとメロディーコールが数十秒後、流れるとすぐに声が切り替わった。

『はい。大丈夫』

 すぐに予約を取った。

「やった!」

 本当に嬉しかった。何度も断られて、もう諦めようとしていた所だった。

 姫が手を握ってきて一緒に喜んでくれた。

「良かったね大輔!」

「あぁ! それじゃあ取れたことだし買い出しとかは来週で良いか?」

 姫が頷いた。

「うん。あー楽しみ!」

「だな! じゃあ寝ようか」

「はーい」

 その日は嬉しくて子供用な気分で興奮して眠れなかった。


 次の日。会社に出社して仕事を素早くこなし定時の時間になっていた。

「もう6時か……」

 ウチの会社は18時が定時となっていて1時間残業もする人はいた。

 溜まっている疲労を取り除こうと背伸びをすると肩がピキッと鳴っている。

「あっあぁ!」

 姫が揉んでくれたとはいえやっぱり肩がこっている。

 温泉を予約して良かった。

「帰るか……」

 そしてロッカーに向かい鞄を掴むと忘れた書類を取りを自分の机に向かう。

「あったあった」

 鞄を整理していると一人の女性が近づいてきた。

「センパイ。乙で〜す」

「お疲れ様。内田」

「センパイ疲れたので一緒に食べに行きましょうよ」

 上目遣いで見てきてアピールを露骨にしているのが丸見えだった。

 全くこいつは……。

「今日は用がある」

 内田は頬を膨らませていた。

「最近センパイ冷たくないですか?」

 あまり女性とはご飯に行かないのと、いつも内田とは話題が同じだからだ。そんなに行きたくない。

「一緒に行っても彼女作らないかって話しかしないんだから。行かなくても良いんじゃないか?」

「えー? センパイ彼女作りましょうよ。どうせ二次元の彼女って言っても触れること出来ないんですから。現実の女の子を作った方が楽しいですよ」

 姫という彼女が出来てからは楽しいって共感するが、そうやってアニメの偏見を押しつける人がいるから困るんだよな。

「俺は帰るって」

「ちぇ。センパイ冷たいですよ」

 すると向かい合わせで座っていた男性が話しかけてきた。

「残念だったな内田。まあ、吉田の場合は三次元で彼女が出来たんだから、仕方がない」

「––––っ!」

 的確なことを言われて変な汗がダラダラと出てくる。

「ナニヲ言ッテイルノカナ。大野クン」

「何ってそうかなって予測だよ。それと片言はやめてくれ。笑えてくる! はっはは!」

 本当にどこかツボに入ったようで腹を抱えて笑っいる。

 こうして笑っている彼たが仕事とは真面目でコミニケーション能力が高い大野先輩。

 相手と同じ目線で並んで話してくるから先輩とは思えないが……。

 けど本当に仕事になるとスイッチが切り替えて働き。助けられたことが沢山ある。

 すると内田が突っかかってきた。

「ウソ! センパイ彼女作ったんですか!? なんで教えてくれないんですか?」

「いや、その……」

 助けてくれ大野。

ヘルプのサインを送ると、伝わったみたいで大野は爽やかにニコッと笑っていた。

 大野!

 大野が口を開く。

「吉田が彼女について話してくれるから。三人でご飯行こうだってよ。内田」

「大野!!」

 チクショウ……まさかの裏切りなんて……。

 こうなったら意地でも逃げなければ。未成年と同棲なんてバレる前に帰りたい!

 その場から去ろうとした瞬間。内田が肩を掴んできた。

「センパイ。これから食事会ですよ?」

「離すんだ内田!」

 大野も素早い動きでこっちに来て逃げられないよに掴んできた。

「それじゃあ行こうか内田」

 彼女は微笑んでいた。

「はい、大野センパイ。吉田センパイがどんな子なのか確認しないとですもんね」

 そのまま連行されてる。

「離せぇぇぇ!」

 三人で近くの店にあった中華屋に向かって行った。


  

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