「お帰り大輔」
プレゼンでは上手く商談が成功して今日は定時で上れることになった。
「あぁ! ……定時で帰るのって久しぶりな気がする」
毎日、残業や泊まり込みがあって忙しかったんだよな。
アパートに着き扉を開けた。
「ただい、ま……」
やけに明るい。いつも暗く自分で付けているから変な感じだ。
するとキッチンの方から香ばしい匂いと足音が聞こえてきた。
「お帰り大輔」
姫の顔をみると人安心する。こうして迎えに来てくれることが本当に嬉しかった。
「ただいま……。明かりが付いてるってこんなにも違うんだな……」
姫は首を傾げていた。
「なにが?」
「あ、いや。お帰りって言ってくれるのが嬉しいなってことかな」
「それは言うよ。こうして毎日言うことになるんだもん」
……そうだな。こうして言ってくれることが毎日になっていくんだもんな。
安心したのかお腹の音が鳴り出した。
「ふふっ。ちょっと待ってて今すぐ用意するから」
席に座ると肉じゃががテーブルの上に置かれていた。
「はい。どうぞ」
香ばしい匂いの正体はこれだったんだな。
「いただきます!」
肉を掴んで食べると醤油のしょっぱさと豚の油が仕事終わりの体に染み渡る。
「美味い……。美味い……」
今朝もそうだがこうしてあったかいごはんを食べれて。目の前には好きな人が一緒の食卓に居ることがこんなにも幸せなんだなって初めての経験だ……。
「うれしいな……」
本当に一人でコンビニ弁当を食べているのと誰かと囲んで食べる食卓はこんなにも違うもんなんだな……。
「え!? なんで大輔泣いてるの。しょっぱかった?」
泣いている?
手元を拭うと確かに湿っていた。
「いや、大丈夫だ。ありがとな姫。とても美味しいよ」
そう。今は一人じゃないんだから……。
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