「ダメだよ。朝はしっかり食べないと元気でないから」
次の日の朝。姫が体を揺らしてきた。
「大輔。朝だよ起きて」
眠い……。
「あと、5分ほど眠かせてくれ」
「だーめ。今日は大事な話があるんでしょ」
そうだ今日はプレゼンがあるから早めに出社しようと思ったんだ……。
重たいまぶたを擦りながら大輔はベットから起き上がり洗面所に向かった。
水を何度も顔に擦りつけ、置いてある時計を見ると見ると6時50分。いつもなら寝ている。
「まさか人に起こされる日が来るなんてな……」
帰って部屋を付けて心細さはあったからまさか彼女が出来るなんて。この前の自分なら信じられない光景だ……。
洗面所から戻るとテーブルの所からなにやらいい香りがしてきた。
「……っ?」
振り向くと焼き魚がテーブルの上に置かれていた。
「さあ、座って朝ごはんにしよう」
朝ごはんか……。
普段から朝ごはんは食べるという習慣がないから。どう対処していいのか。
「俺、朝はいつも食わないからいいよ」
すると姫顔が膨らませていた。
「ダメだよ。朝はしっかり食べないと元気が出ないんだから」
「……」
そうだよな。こうして作ってくれたんだから。
大輔はテーブルに座り手を合わせた。
「いただきます」
魚の身を箸で掴み食べるとあったかい。
昨日はコンビニで済ましたが姫と買い物はしていないはず。
「いつの間に買ったんだ?」
「昨日。大輔が仕事があるとかでやってたじゃない。その後買ったんだよ。気づかなかった」
確かにコンビニで昼ご飯を買っている最中に上司から催促のメールが届き午後からは今日の会議で使う資料をまとめていたが分からなかった。
「……いや、全く。昨日の晩御飯は手料理は出てなかったけど」
姫は頷いた。
「うん。まだここ道具の置き場所や調味料を整理していたから。コンビニで済ませちゃったけど。どう、焼けている?」
「……うん。美味いよ」
姫がガッツポーズをして喜んでいた。
「やったー!」
本当にこんな朝ごはんなんて実家以来だ……。
「お昼もお弁当用意しておいたから食べてね!」
「お弁当?」
姫が指さし後ろに向くと袋に入った容器があった。
「台所にあるから持って行って」
「おぉ……」
ありだかとうと言えない所があったが本当に嬉しいという気持ちがあった。
急いで食べ大輔は立ち上がり弁当箱を持って鞄に詰めた。
「いってらっしゃい。大輔。お仕事頑張って」
姫が玄関まで来てくれて笑顔で言ってくれた。
「いってきます」
扉を閉め空を見つめると桜の花びらが飛んでいた。
いってきます。か……。本当にそう誰かに言える日が来たんだな。
姫のために今日の仕事は成功してみせないと。
「よし!」
顔を叩き気合を注入して会社に出社するのだった。
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