第30話 常習犯

『…ウ!…きろ!…おい!』


騒がしい音で意識が戻ってきた…


「…ん?なんだにゃ?」


『何が「にゃ!」だよ!起きろこの!』


「あ…う…誰だ?」


『俺だよ!マナブ!起きろ!おい!』


「マナブ?…今何時?」


『もう朝の9時だよ!お前何やってるんだ?』


「ごめん…寝てた…」


『寝てたじゃないよ!俺達寝ないで前線地でずっと待ってるんだぞ!早く来い!フィルも待たせやがって!』


「フィル?…やばい!」


一瞬で目が覚め、心拍数がグンと上がった。

だが超回復スキルのおかげで冷静になれた


「す、すまん!すぐに向かう!」


オレは急いでフィリーミ用の装備に着替えて、マナブ達が待つ前線に転移した。


辺りを見回すと前方に大きな岩があり、その岩影と岩上にマナブとヒデが殺意の波動をまとった状態でこちらを見つめていた。


「ぐっすり眠れましたかな?」


「あの…すんません…」


「シュウ〜!遅すぎるよ〜!」


「あの…すんません…」


「全く…遅刻の癖は異世界に来ても相変わらずだったようだな…」


「3年じゃなおらないよ…」


「遅刻ってレベルじゃないけどな!」


「本当に申し訳!」


「…マジで反省してるのか?」


二人の殺意は更に増加していた…


「本当にごめん!お詫びって訳じゃないけどコレを…」


そう言うとオレは道具袋の中から、金色のエビ●ビールのロング缶を差し出した。


『許す!!!』


許すの早っ!二人はビールを受け取ると一気に腹に流し込んだ。


「くぅ〜!魔物退治の後のビールは格別だな!」


「本当だね!疲れが一気に吹っ飛んだよ!」


「全くだ!…ってステータス全回復してるぞ!?」


「ん?…あ!本当だ」


まさかと思ったが、念の為エビ●ビールを鑑定してみると…


「マジだ…効果はHP/MP・全ステータス回復だと…」


「…ラストエリクサーよりすごいじゃん!」


「地球の物を異世界で使うと追加効果があるって事か!?…エビ●ビールやばいな…」


「ああ…また調べる事が増えちまったな…それよりもシュウ!早くフィルの所に行かないと!」


「そうだった!二人とも急ごう!」


慌てたオレは二人を掴み、急いで城内の離れの入口へと転移した。


「おい!誰かに見つかったらヤバイぞ!」


「あ!忘れてた!」


オレは周囲を見回した。


人の気配はなかったが、念の為索敵スキルを使用して確認をした。幸い屋敷の中を除いて人のピンは立っていなかった。


「あぶねえ…」


「焦りすぎだ!バカ!」


「すまんすまん!」


謝りつつオレは屋敷のドアをノックした。


程なくしてマイルスがドアを開けて迎え入れてくれた。


「よう!待ってたぜ!早かったじゃないか!」


マナブは白い目でオレを見ながら、マイルスに話しかけた。


「マイルス遅くなってすまない…ひとつ聞くが…シュウはいつもこんなに遅れるのか?」


「ん?そうだな…3時間位は遅れるな!まぁ俺達も先を見越して予定を立てているから問題ないけどな!ハハハ!」


「そうか…よ〜く分かった…」


マナブがそう答えると、オレの頭上に衝撃が走った。


怒りの鉄拳だ


「あ痛っ!…悪かったって!」


「全くお前は…社会人なら5分前行動が当たり前だろ!だから彼女が出来ないんだよ!」


「な!大事なデートに遅刻してフラレて泣きついてきたお前には言われたくないわ!」


「おい!今言う事じゃないだろう!」


「うるせー!しかも1回じゃないだろ!?なんだっけか?サユリちゃんなしじゃ生きていけない〜だっけか?」


「や、やめろ!」


オレとマナブの浅はかな言い争いにヒデとマイルスは腹を抱えて笑っている。そして…


「あはは!二人とも仲が良いんだね〜!」


フィルがマイルスの後ろからひょっこりと顔を出してきた。


一向に部屋に入って来ないので、心配して見に来たようだ。


「よ、よぉ!遅くなってすまん!」


「大丈夫だよ!さ、話を続けて!」


フィルはニヤニヤしながら俺達を煽ってきた。


「あ、いや…もうやめよう…な?マナブ」


「俺は続けても大丈夫だぞ?勇者様!」


「わ…わかった!オレが悪かった!みんな!遅れてごめんなさい!」


フィルはニッコリ笑って


「気にしなくていいよ!さ!早いとこ用事を済まして出発しよう!」


「用事?」


「ああ!側近を集めた会議に出席してほしい。あれから考えたんだけど、ある程度は伝えることにした」


「日本へ行く事もか?」


「うん。やっぱり信頼してる皆に嘘はつきたくないしね…説得すればなんとかなるさ」


こう言う純粋な所が国民から愛されるのだろうな…


「こちらは問題ないよ!でももし頑なに反対されたら?」




「その時は…」



フィルはため息を吐いてこう答えた




「どんな嘘をついてでも行く!」




…前言撤回

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界コーディネーター〜貴方の理想の世界探します〜 タカミキュウタ @takamiq

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ