第29話 七福屋で換金!

フィリーミの金貨を売却する為に、駅前にある貴金属買取店へと向かった。


久しぶりに歩く地元は、3年前と全く変わっていなかった。


ただ夕方のこの時間に歩くのは、覚えていないほど昔の出来事でとても新鮮な気持ちだ。


会社員だった頃は今頃定時で帰る営業を恨めしく眺めて、後半戦を開始している頃だろう…


ああ、オレは自由だ!フィリーミにいる時以上の解放感を味わいながら、ぶらぶらと歩いていると目的の貴金属買取店へと到着した。


「ありゃ!?閉店してる…」


どうやらこの店は17時閉店だったみたいだ…


さてどうするか…そういや近くに質屋もあったな。

質屋でも買取価格は変わらないだろうと思い、近くの質屋へ足を運んだ。


質福屋。大手チェーンの質屋で、ブランド物の商品や、貴金属。ゲームやパソコン、楽器など何でも揃っている店だ。


買取コーナーの受付を見ると、若い女性店員さんが笑みを浮かべ椅子に座っていた。


「いらっしゃいませ。買取をご希望でしょうか?」


「はい。古い金貨なのですが、買取可能ですか?」


店員の笑みが更に増した様に感じる。


「もちろんでございます。ご家族の遺品などで古い金貨をお持ち頂くお客様は結構いるんですよ」


オレは店員さんの話に合わせる事にした。


「そうなんですね。実は仰る通りで、死んだ祖母が集めていた金貨なのですが…」


そう言うとオレはテーブルの上の四角い小箱に金貨を四枚を置いた。


「拝見させて頂きます…珍しい金貨ですね。かなり大きいですね」


店員さんは目につけるルーペの様な物で、細部を確認している。


「はい…僕も初めて見た時は驚きました。とても貴重な物のではないかと思いまして…」


「…少しお時間わ頂きますがよろしいでしょうか?こういった古い品物を得意とする専門家が当店にはおりますので。確認させて下さい」


「わかりました。よろしくお願いします!」


店員さんが金貨を持って、バックヤードに移動して小一時間が経過した所で、店員さんと、その上司であろう人物が戻った来た。


「お客様。お待たせして申し訳ございませんでした。当店の専門家が確認したのですが…」


上司は申し訳なさそうに話を続けた


「当店ではこの金貨の価値を確認する事が出来ませんでした…」


「そうですか…では買取は無理ですか?」


「買取自体は可能です。ただ付加価値が確認出来ない為、純粋に金としての買取価格になってしまいます」


そりゃあこの金貨の正体は分からないはずだ。


もしかして買取出来ないかもと内心ヒヤヒヤしていたが、買取してくれる事に安堵した。


「それで結構です!」


「かしこまりました。ではこちらの金貨4点の買取価格になりますが…」


オレは息を呑んだ。フィリーミでは1枚で日本円で10万円位の価値なのだが…


「200万円でいかがでしょうか?」


「に、に、ひゃくまん……」


何も言えずに放心状態だったオレ。しかし自然と両手が店員さんの手を握っていた。


「200万円でお買取でよろしいですか?」


オレは首をカクカク上下に振るのが精一杯だった。


「ありがとうございます!では手続きは彼女が担当致しますので、私はこちらで失礼致します。」


深々と頭を下げる上司さん。


「あ…こちらこそありがとうございました!」


上司はバックヤードに入る直前に再度礼をして中に入っていった…


「お待たせして申し訳ございませんでした。では買取手続きに入らせて頂きます。こちらの書類に記入をお願い致します。また身分証明書をご提示頂けますでしょうか?」


オレは財布から運転免許証を取り出して、店員さんに渡した。


店員さんは免許証を受け取ると、不思議な顔をして、オレの顔と身分証を交互に何度も確認している。


「あの…お客様…失礼ですが…」


「はい?何でしょうか?」


「お写真のお顔が…その…」


顔に何か付いているのかな?近くのガラスケースに薄っすらと写る自分の顔を確認した。


ヤバイ!若返ったままだった!


「あ!…その…実は先日…顔を弄りまして…」


苦しい言い訳だ…


「そうですか…」


店員さんは辺りを見回して、小さい声で


「あの…今度そのクリニック紹介して下さい!」


いや信じるんかい!


「は、はぁ…何かすいません…」


その後の手続きはスムーズに進み、オレの手元には、200万円が置かれていた。


「これで手続きは終わりです。ありがとうございました」


「こちらこそありがとうございます。まだ金貨はあるので、またお伺いしますね!」


足早に店を出たオレは、早速ヒデとマナブに連絡をした。


「ヒデ!マナブ!聞こえるか?」


『聞こえるぞ!どうだった?』


「いま金貨を換金してきたよ!聞いて驚くなよ…金貨4枚が200万になった!」


『『に、200万!?』』


「おうよ!予想以上に高く売れたよ!」


『やったね!大金持ちだ!』


『これで接待の資金は作れたな!』


「ああ。それに今後砂糖の取引が出来るようになったら……考えるだけでニヤけちゃうわ…」


『気持ちはわかるが、実際に取引出来てから喜ぼう。今は接待の事に集中してくれ』


「わかってるさ。オレはもう少し準備してから戻るからよろしく!明日から大変何だから戦いもほどほどにな」


『了解!』


通信を終えたオレは、長時間フィリーミでの資産を全て換金した場合の皮算用をしてニヤニヤしているのだった。

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