第55話 エピローグ
「ひゃあああ!? こんなとこにも敵が!」
みんくは、不審な動くマネキンに追われていた。
1体ではなく10体ほどに。
住宅街から出て、少し工場に近づいただけなのに。
こんなときにさくりがいれば、強制転送魔法でなんとかできたのにっ!
そう後悔しても遅い。
なぜなら、さくりを置いてきたのだから……。
自業自得だ。
「アノミー! なんとかして!」
「バグ作成能力はあまり使いたくありません……。
あれ、私の命を削るんですよ」
「そんなぁ……」
命を削ると言われてしまったら、返す言葉もない。
みんくのプログラミング能力で対処することもできるが、
わざわざタッチしないとプログラミングできないので、
いちいち10体の敵相手にタッチするのは骨が折れる。
「あ、そこに車があるよ。
そうだ。あの車をプログラミングして、
子どもでも運転できるようにしよう」
「なるほど……でも、そんな簡単にできますかね」
「できるよ! ……たぶん」
できなかった。
というより、車を子ども向けにカスタマイズしようとすると
かなり時間のかかる作業で、敵に追われてるときにできる作業ではなかった。
このあと、なんとか逃げおおせて、ことなきを得た。
だが安心はできない。
今は追われなくなっただけで、また追われるのは目に見えている。
アノミーを助けるためとはいえ、マネキンを大量に製造してしまったのだから……。
住宅街にも、工場にも、駅にも、公園にも、自分の家の付近にも。
いろんなところで見かけることになるだろう。ああ、ため息がとまらない。
みんくは自分の自業自得ぶりを呪うのだった。
でもあの判断を間違ったとは思わない。
だって、そのおかげで今もみんくの側にはアノミーがいるのだから。
アノミーの笑顔を見たら、苦労も吹っ飛んでしまう。
「とりあえず、これからどうしましょうか」
「そうだね。家に戻ろうかと思って。
夜になったら家に戻って寝ないとね」
「それはよろしいのですが……。
みんくさんの隣って、さくりさんが住んでましたよね。
鉢合わせになると思うのですが」
がーん。そうだった。
みんくは今さら、そんなことに気づくのだった。
もし鉢合わせになれば、また襲われるだろう。
工場のときは、なんとかマネキンを大量製造して、さくりを封じ込めたが、
今度こそ無理だろう。自分の家には、トラップも武器もない。
家に仕掛けるトラップくらいなら、プログラミングで作れるかもしれないが……。
また、それとは別に、
アノミーを傷つけようとしたから怒っただけだし、それ以外は良い親友なのだ。
「ああ、帰る場所を失った」
みんくは絶望する。きょうからテント生活?
テントってプログラミングで作れるのだろうか。
でもどうせならホテルがいいなぁ。
支配人のいないうさぎホテルに戻れないだろうか。
「あのホテルに戻りましょうか。
支配人はもういませんが、残った設備を使えば
生活くらいはできるでしょう」
アノミーも同じ考えだった。みんくはうれしくなった。
「そうだね。あのうさぎホテルで寝泊まりしよう」
うさぎホテルとは言っても、うさぎ支配人はもういないので
ただの無人ホテルと化していた。
「ああ、疲れた……とりあえずお風呂にしよ、お風呂に」
走りまくったせいで汗もびっしょり。
とりあえず、みんくとアノミーは風呂に入ることにした。
お風呂に入りながら、みんくは、ぼんやり考えた。
ああ、そういえば着替えがない、と。
「アノミー。これからこの世界をどうするか……の前に、
とりあえず、着替えのお洋服を手に入れたいね。
昨日からずっと同じ服だし」
「みんくさんがさっき来てたお洋服を、プログラミングすれば
まったく別の新しい服に直せるはずです。
デザインの知識があればですけど」
「お洋服のデザインの知識……。私には無いなぁ。
単純にプログラミングできるだけじゃダメなんだね……」
「大丈夫ですよ。お洋服の写真とかカタログがあれば、
プログラミングでそのまま取り込むこともできます。
レッツチャレンジです」
「そうだね、明日試してみよう。
自分でプログラミングしないでお洋服屋さんに行ってもいいけど、
お金もないし、ばいらす(VIRUS)に襲われちゃうかもだし」
「VIRUSはいたるところにいます。
VIRUSを倒すことも重要ですね」
「気になったんだけど、VIRUSもこの世界を壊そうとしてるんだよね。
アノミーと同じに見えるんだけど」
「そう見えますよね。実はちがいます。
VIRUSは、世界をひたすらバグで壊していくことでエネルギーを得ます。
いわば、なんでも食べる某黒い虫みたいなやつです。
ですが私は、ある程度平和になった世界を壊さないとエネルギーを得られないのです。人間にもいるでしょう。高級な料理じゃないとおいしく食べられない人が」
「あっ。そうなんだ……」
VIRUSはなんでも食べる。
アノミーはおいしい料理だけ食べる。
今さらながら、みんくはその違いを知るのだった。
「じゃあ、わたしは、アノミーの食べる料理を作るコックさんなんだね」
「そうですね。ふふっ。お願いしますよ、コックさん」
アノミーはにっこりとほほ笑んだ。
終わり
ぷろぐらみんく! alphaw @harappa14741
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます