第344話:魔王と魔人 34
――ズバッ!
手応えは間違いなくあった。
俺は着地した足に痺れがあるのも構わず、顔を上げて魔王を見る。
見た目には斬られた痕はどこにもなかったが、すぐに魔王の体が縦に切れ、ズルリと左右にズレていく。
ものすごくグロい映像で、昔の俺ならこの場で気持ち悪くなっていたことだろう。
……俺も、変わっちまったなぁ。
『……ま、まだ終わらんぞおおおおっ!』
そんな魔王だが、まだ死んではいなかった。
さすがは魔王というだけのことはある。
体が左右に分かれても、まだ命を繋ぎ止めているのだから。
普通なら驚愕し、隙を突かれて殺されていただろう。
だけど、俺は知っていた。
魔王がまだ、死んでいないことを。
『ビギイイイイッ!』
魔力を使い果たして気絶しそうになっていた俺を、サニーが急降下から救出してくれた。
だが、このまま逃げてしまうわけにはいかない。
誰かが魔王に止めを刺さなければならなかった。
「まったく、最後の最後までしまらないんだね、桃李君は」
「うるさい。分かっているなら、さっさと終わらせてくれ、森谷」
俺は魔王に止めを刺す役目を、森谷に任せた。
そしてここまでが、俺の鑑定士【神眼】が導き出した、魔王を倒すための行程だった。
「終わりにしよう、魔王」
『……ふざけるな! 我は終わらん! 我は魔王だ! 我は、この世で最強の――』
「君が魔王なら、僕と桃李君は【神】を冠した職業を持つ、君の天敵だよ」
『くそっ! くそくそっ! くそったれがああああぁぁああぁぁっ!!』
「最後は一瞬で終わらせるよ。四元素魔法、フォースター」
朦朧とする意識の中、俺は森谷の体から赤、青、緑、黄の光が顕現しているのを見た。
そして、全ての光がねじれながら一つの塊となり、魔王めがけて飛んでいく。
『止めろ! 止めろ止めろ! 止めてくれええええええええっ!!』
「さようなら、魔王。一〇〇年越しの魔王討伐ができて、僕は満足だよ」
『グアアアアベバボベベギギゲベギャヴァヴァアアアアァァアアベベゲガッ!?』
断末魔の叫びが聞こえたかと思えば、叫び声は一瞬にして消え失せた。
それはつまり、魔王が完全に消滅したことを意味している。
「……終わった、のか?」
「うん、終わったよ。本当にありがとう、桃李君」
「……それはこっちの……セリフだって……の……」
『ビギャ!? ビ、ビギャ~!!』
ヤバい、視界がぼやけてきた。
「大丈夫だよ、サニー。魔力枯渇による現象だから、また目を覚ますさ」
『ビギャ? ビギャギャ?』
「うんうん、大丈夫。だって、桃李君だよ?」
……森谷の言い方は、なんか引っ掛かるけど……まあ、こいつがいてくれたら……サニーも、安心、かな。
そんなことを考えながら、俺の意識はぷつんと途切れた。
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