第343話:魔王と魔人 33
『ギャルアアアアアアアアッ!!』
サニーの雄たけびと共に、強烈な光が体から放出される。
これが何かは俺には分からない……いや、不思議なものだ。
心の中へ、サニーの気持ちが伝わってくるのが分かる。
そして、その気持ちにこの光がなんなのかが乗ってきている。
「……ありがとう、サニー」
『ギャルア!』
魔王も元は魔族だということで、サニーは聖属性の光を放出されている。
俺は分からなかったが、魔族は聖属性が苦手らしい。
特にエンシェントクリスタルドラゴンが持つ聖属性は、魔獣の中で最も強力なものなのだとか。
つまり――魔王にも通用する!
『くっ! 面倒な奴が出てきたものだな!』
「逃がさないよ? 対魔王戦のために、サニーを守り、育てていたんだからね!」
どうやら森谷も魔王が聖属性を苦手だということを知っていたらしい。
というか、それを知っていたなら俺にも教えておいてほしいよな、うん。
『邪魔をするなああああっ!』
「森谷!」
『ギャルアアアアッ!』
魔王が放った闇の波動が森谷へ迫るのを見たサニーは、聖なる光を森谷へ降り注がせた。
――じゅううううぅぅぅぅ。
するとどうだろう、漆黒だった光が徐々に薄くなり、森谷へ到達する時には闇が明滅し、消えてしまったではないか。
『な、なんだ! この聖属性は!?』
どうやら魔王には予想外の威力だったみたいだな!
……って、なんで森谷まで驚いているんだよ! お前は驚くな、お前だけは!
「サニー! この光を魔王へ向けるんだ!」
『ギャルアアアアッ!』
「アースドーム!」
聖なる光が魔王へ向けられると同時に、森谷が土壁を作り出して魔王の進路を制限する。
もちろん、聖なる光が通る場所だけは開けての土壁だ。
『このようなもので、我の動きを止められると――』
「アイスフィールド!」
『何!? あ、足が!!』
「ナイスだ、森谷!」
進路を制限するだけではなく、動きまで阻害した森谷のおかげで、魔王に聖なる光が降り注ぐ。
『ぐがああああぁぁああぁぁっ!?』
苦悶の声が響き渡るものの、魔王の瞳はいまだに怒りを湛えており、俺たちのことを睨みつけている。
まだだ、まだ終わりじゃない!
『まずは貴様からだ、エンシェントクリスタルドラゴンめええええっ!!』
魔王のターゲットが、森谷からサニーへと変わった。
漆黒のオーラが周囲一帯へ広がり、その衝撃で氷が砕け、土壁が吹き飛ばされてしまう。
同時に魔王は飛び上がり、サニーめがけて闇の波動を放った。
『ギャルアアアアッ!』
『これは防げないぞ!』
魔王が放った闇の波動は、今まで見た中でも特別に太く、大きい。
聖なる光を使ったとしても、完全に消滅させることはできないと、魔王は確信しているかのようだ。
それだけの魔力を、この一撃の込めたということなのかもしれない。
「サニー! 聖なる光、最大出力!」
『ギャルアアアアアアアアッ!!』
俺がサニーへ指示を出すと同時に、ごそっと魔力が抜き取られていく感覚に襲われる。
魔力刀絶閃を使うために魔力は残しておくべきなのかもしれないが、ここでサニーを失うわけにはいかないのだ。
それに……よし、これなら間違いないだろう!
「ヴァナナ、ふぉじゅう!」
『き、貴様ああああっ! 我との戦いの最中に、食事などとおおおおっ!!』
えっ? うそ、怒らせちゃった?
でもまあ、こうしなきゃ大事な時に役に立たなくなるからな、仕方ない。
「ふぃけ、ファニー!」
『ギャルアアアアァァアアァァッ!!』
聖なる光がサニーの体から噴き出し、それが魔の森全体を包み込んでいく。
ひときわ大きかった闇の波動も、俺の魔力を大量に吸収して放たれた聖なる光には意味をなさなかった。
『……そ、そんな、バカな!』
「これで、終わりだ!」
呆気にとられた魔王を見た俺は、サニーの上から飛び降り、魔王めがけて落下していく。
その手に握るのはもちろん、魔力刀絶閃だ。
闇の波動が完全に消えたタイミングだ、俺に被害は一切ない。
残された俺の魔力を全て魔力刀絶閃へ注ぎ込み、一気に振り下ろした。
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