第338話:魔王と魔人 28

『ごふっ!?』


 常に余裕を振りまいていた魔王の胴体に穴が開き、傷口と口から大量の血を吐き出していく。

 どす黒い血は地面へ落ちると、触れたものを一瞬のうちに腐敗させていく。


「な、なんだよ、あれは?」


 俺がそう口にすると、鑑定スキルが自動的に発動し、魔王の血の異常性を教えてくれた。


「気をつけろ! 魔王の血は猛毒だ! 発生している煙にも毒が含まれているぞ!」

「それでは近づけんではないか!」


 傷を負わせた今がチャンスだと思ったのだろう、ヴィグル様が悔しそうに声を荒らげた。


「……いや、この身を犠牲にすれば魔王を倒せるか!」

「いけません、ヴィグル様!」


 死を覚悟して猛毒の煙へ特攻を仕掛けようとしたヴィグル様を止めたのは、ディートリヒ様だ。


「止めるな、ディートリヒ!」

「あなたはこの先の未来にも必要な人材です! ここで失うわけにはいかない!」

「ならばどうする! 魔王に逃げられてしまうぞ!」


 お互いに怒声を響かせている中、俺は次の鑑定結果を確認していた。


(……そうか。土門たちがこっちに来てくれているんだから、こいつも――!)


 バナナを頬張りながらそこまで考えたところで、魔の森の入口の方向から巨大な光の柱が突如現れた。


『くっ、今度はいったいなんなのだ!?』


 苦しそうにそう声を上げた魔王だが、その傷口はすでに治り始めている。

 時間を掛けていては、いずれこちらの体力が尽きてしまうだろう。

 ヴィグル様ではないが、今が魔王を倒す最初で最後のチャンスなのだ。


「あれは、セイントソードか!」


 自ら戦い、倒してきたからだろう、新は光の正体を一瞬で見極めていた。


「……はは、俺たちと戦った時よりも、明らかに強くなっているじゃないか――生徒会長!」


 生徒会長であり、勇者でもある、神貫光也の最大で最高の一撃が、魔王めがけて振り下ろされた。


(あれはマズいぞ! 本能が危険だと叫んでいる!)


 傷口はいまだ塞がり切っていないにも関わらず、魔王は慌てた様子でセイントソードを回避しようと動き出した。


「させるか! グラビティホール最大出力!」


 このタイミングに合わせて、俺は倍にした魔力を使いグラビティホールを発動させる。

 魔王にはどうってことない重力かもしれないが、今の状況であれば有効なはずだ。


『ぐぬっ!? ぐ、ぐぬぬ……邪魔を、するなああああっ!!』


 傷口から血が溢れるのも構わず、魔王は大咆哮を上げて周囲へ強烈な衝撃波を放出した。

 グラビティホールが一瞬で消滅させられるが、セイントソードを消滅させるには至らない。


「これで逃げられない――だああああっ!?」


 セイントソードの直撃を見届けようとしたのだが、衝撃波に耐えきれず俺は吹き飛ばされてしまった。


(ちょっと待て! このまま吹き飛ばされて死ぬ、なんてことはないよなあっ!?)


 そんな意味不明な結末だけは迎えたくない、そんなことを考えていると、視界に巨大な岩が迫ってきていることに気がついた。


「ヤバい、ぶつかる!!」


 どうにかして受け身を取ろうと試みたが、一気に魔力を使い過ぎたからか、体が思うように動かない。

 意識も朦朧として来ており、当たり所が悪ければ――そこまで考えた時だった。


「――まったく。世話が焼けるなぁ、桃李君は」


 そんな聞き慣れた声が耳に届いた直後、魔王のいた場所にセイントソードが振り下ろされると、魔王が発したものよりも強烈な衝撃波が周囲へ広がっていった。


※※※※

【コミカライズスタート!】

 近況ノートにてお知らせいたしました、コミカライズの宣伝になります!

 連載媒体はコミックグロウル(旧:コミックブシロードWeb)になっております!


▼漫画:コノモトケント先生


▼近況ノートURL:https://kakuyomu.jp/users/toguken/news/16818023212875765902


 近況ノートの方には、コミカライズの1話へ繋がるURLもございますので、ぜひご覧いただければ幸いです!

 更新が滞っており申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いいたします!!

※※※※

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る