第334話:魔王と魔人 24

 俺は新たちが死なないこと、そして魔王を倒す方法、さらに表示された中から最善策を選んで行動するというマルチタスクをこなしながら動いていく。

 本当なら新とユリアに指示を出したいが、すでに魔王との戦闘の真っただ中にいて、俺が割って入るのは難しい。

 ならば戦闘の外から戦況をコントロールするしかなかった。


「……って、どうやってコントロールしたらいいんだよ、こんなもん!」


 俺が作った魔導具では魔王に効果を与えることは難しい。かといって何もしないと新とユリアが殺されてしまう可能性が非常に高い。

 鑑定結果では魔導具を撃ち続けろとしか出てこないし、どうしてこんな抽象的な結果しか出てこないんだよ、今回に限ってさ!


「いいよ、やってやろうじゃないか! 掻き回せってことでいいんだよな! フレアトルネード!」


 俺がフレアトルネードを放つと、巻き込まれないようにと新とユリアが魔王から離れた。


「おい、真広!」

「危ないじゃないのよ!」

「うるさい! 勝手に飛び込んでいきやがって! くらえ、アイスバーン!」


 今度はフレアトルネードを凍らせるべくアイスバーンを発動する。

 本来は地面を凍らせて敵をその場に縫い付ける役目を果たすが、今回は魔王を中心に発動していたフレアトルネードに纏わせるようにして発動させた。

 そうすることでフレアトルネードと魔王を同時に凍らせることができる……はず。


『くだらん』


 ――バキイイイインッ!


 ……まあ、そう上手くはいかないよな、分かってましたとも。


「グラビティホール!」


 だが、俺は諦めずにグラビティホールを発動、続けて今回初めて使う魔導具も発動させた。


「アースクエイク!」


 グラビティホールで重力が倍々化しているところへ、地面が捲れ上がり魔王を飲み込むアースクエイクを織り交ぜていく。

 総重量が何トンになるか分からないほど大量の土が魔王へ圧し掛かり、そこへ倍々化の効果が上乗せされる。

 そのまま圧死してしまえと心の中で願ったものの――


 ――ドゴオオオオンッ!


「くそっ! やっぱり無理なのかよ、俺の攻撃じゃ!」

『ふむ、多少は筋肉がほぐれてくれたか?』

「マッサージじゃねえっての!」

『貴様の攻撃はつまらんな。我には心地よい程度の攻撃しかできんとは』


 心地よいって、マジかよ。それなら断絶の刃を叩きこむしか方法が……って、無理だろ。だってこいつは、グラビティホールの中でも平然と立ったままなんだぞ? 動こうと思えば普段通りに動けるんじゃないのか? そんな相手に断絶の刃を当てられるか? ……俺が?


『……なんで、これで終わりか?』

「くっ!」

『終わりならば、今度は我が攻撃してやろう』


 そう口にした魔王がゆっくりと右腕をあげていき、人差し指を突き出した。そして――


『闇の波動』


 指先から漆黒の光が迸る。


「きゃああああっ!?」

「ユリア!?」


 ユリアが悲鳴と共に後方へ大きく吹き飛ばされてしまった。


「か、鑑定、ユリ――」

『ドンッ』

「ぐああああっ!?」

「御剣君!?」


 くそっ! こいつ、連続であんな強力な攻撃が出せるのかよ!

 ユリアに続いて新まで!


『次は貴様か、はたまた後ろで何やら魔法を使っている女にしようか?』


 魔王の攻撃が止まらない。このままだと、全滅――


「サンダースパイク!」

『むっ? 動けない?』


 そこへ響いてきたのは、聞き慣れた、そして俺が待ち望んでいた援軍だった。


「「せ、先生!」」


 振り返った俺と円が見たのは、完全武装した秋ヶ瀬先生の姿だった。


「うふふ、私だけじゃないわよ!」


 さらに後方からは、俺たちと一緒に異世界召喚されたクラスメイトたちが次々と駆けつけてくれていた。

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