第333話:魔王と魔人 23

 ここから魔王による苛烈な攻撃が始まった。

 俺たちはただ必死に、ひたすらに耐えることを選択、魔導具だけでなく一時的にステータスを上昇させる果物も食べながらの戦闘だった。


『……ふむ、なかなか面白い戦い方をするな』

「そりゃどうも」


 攻撃を捨てて耐えているだけなのだが、それでもあまりの苛烈さに表情が強張ってしまう。

 しかも魔王はまだまだ余裕の表情で、手加減をしている節すら見て取れた。


『増援でも待っているのか? だが、増援が来たところで我に勝てるとは思えないがな』


 魔王の強さは異常だ。それこそ、本当に増援が来たとしても勝てるかどうかは分からない。

 何せ、勝てる可能性があるとはいえ、その確率は一パーセント以下なのだから。


「くっ! 真広、いったい何を待っているんだ!」

「そうよ! 私たち、分からないんだけど!」


 新とユリアが声を荒らげているが、俺も説明している余裕はない。


「みんな、頑張ろう! 桃李君を信じよう!」


 そんな中でも円は俺を信じようと言ってくれた。

 苦しい状況の中で、この言葉は嬉しいものだ。


「今の俺たちにはこれしかないんだ! 頼む、信じてくれ! 新、ユリア!」

「そんなもの、言われなくても信じているさ!」

「分からないのが嫌だっただけよ! もう、あとでちゃんと説明しなさいよね!」

「頑張ろう、桃李君!」


 今はまだ魔王が遊んでくれているから耐えられている。

 いつまで遊んでくれるのか、それが問題だ。


『……ふむ、つまらんなぁ』


 ……ヤバい、そろそろ終わらせに来るつもりか?


『ビギャアアアアッ!』

『ガルアアアアッ!』

「サニー!」

「ハク!」


 魔王がつまらないと呟いた直後、サニーとハクが動き出した。

 サニーは翼を羽ばたかせ、ハク大木へと駆けのぼり魔王へ迫っていく。


『ほほう? 我に向かってくるか、魔獣どもよ』

「止めろ! 危険だ!」

『くく、その意気やよし! だが――愚かすぎるな!』


 こちらへの攻撃の手を一度止め、向かってくるサニーめがけて軽く腕を振る。


『ビギャッ!?』


 すると突風が吹き荒れてサニーが吹き飛ばされてしまう。


「サニー!」

『ガルアアアアッ!』

『邪魔だ』

『ギャインッ!?』

「ハク!」


 続けて飛び掛かっていったハクにはかかと落としをさく裂させ、勢いよく地面に叩きつけられた。


「……き、貴様ああああっ!!」

「冷静になれ、新!」

「無理だ、真広! あとのことは任せたぞ!」

「行くな、新!」


 俺の制止を聞かず、新が飛び出していく。


『勇気と無謀を掛け違えているようだな!』

「黙れ! 貴様だけは絶対に許さないぞ!」

「もう! 新のバカ!」


 新に続いてユリアまで! ちょっと待ってくれよ!


「くそっ! 円、新とユリアの援護を頼む!」

「わ、分かった!」


 やっぱり魔獣と違って人間は感情で動いちゃうよな!

 ……俺だって、サニーがやられて苛立っているってのによ!


「鑑定! サニーとハク!」


 ……よし、生きてる!

 気絶しているみたいだから、これ以上の無茶はできないはずだ。

 だが、今度は新とユリアがやられないように注意しなければならない。

 俺が前に出ても大丈夫か? 二人の邪魔にならないか?


「……んなこと考えている暇、ないよなあ!」


 くそっ! 鑑定をフル活用して、絶対に生き残ってやるからな!



※※※※

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